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CROSS VARIANT   作者: キラセス
1章 混ぜるな危険
2/3

『彼女はあなたの何でしょうか?』I

「おっはー!」

「…おはようさん」

「あっれー? 元気ないぞね〜。」

「いや、ちとゲームで盛り上がりっていたんだよ。」

「そか、そんなに面白いゲームなら俺に貸してよくれ!」

「…相変わらずの変な喋り口調だな親友。」

「そりゃ、これがおいらのアイデンティティさ親友。」

 馬鹿話をしながら、俺『柴木しばき ゆう』と親友『小島こしま 鍔根つばね』は教室で二人、笑っていた。

 時刻は7時57分。ここ《栄林サカエバヤシ大学付属高等学校》のSHRショートホームルームは8時半のため、まだ駄弁っていられる。もっとも、何故早くから人のいない時間にいるのかというと、普通に朝練だったりする。だけど部活は別で、鍔根が剣道部、俺が古典部だ。何故古典部が朝練しているのかというと、これは口外禁止なので伏せさせてもらう。だが朝練は共通して7時に集まって8時前には終わる。だから今は普通に喋っている

「...ところでさ結、その腕なんだ?」

「ああこれか。」

 と俺は自分の切り傷のある腕を見ていう

「これには池よりも浅いお話があるのだよ。」

「深い話じゃないのかよ...。」



 それは数時間前のことだった。結は走っていた、学校まで。

 そんな通学路で、数メートル先で一人の女子生徒が全力で走っているのが見え、そこは十字路だけれど行き止まりのほうに走っているため、もし逃げているのならばそこは間違いだった。

 案の定、女子生徒が走ってきたほうからフードをかぶったローブの人が刃物を持って走っていたので......。



「...というわけで、すれ違いざまに後ろから蹴って女子を連れて走ったんだよ。でもすごかったのが、うしろから蹴ったのに振り返って切る反射神経かな。もし最初から警戒されていればインドア系の俺じゃあ確実に返り討ちでお陀仏だったわ~。」

 そう言い終えた後、鍔根はあきれてこめかみを押していた

「いやお前、それ警察沙汰じゃねえのか!!」

「あ、一応説明したし通報もしてもらったけど、結局あの日は何もなかったな」

「ちょっと待て! それ今日のことじゃねえのよか?」

「その喋りの徹底さには感心するよ。まあそん時の傷は手のひらだけどな。こっちはただRTを朝してみただけだよ」

「RT?リツイートでそんなことになるか?」

「いやツイッターしてないし。RTってのは『リストカット』だよ」

「おもっ!?さっきの話関係ないうえにおもっ!」

「まあ気にするな」

「気にするわ!」

 鍔根のツッコミは平常運転で安心した。確か一昨日に「ナンパするぜ!」と言って、昨日の深夜に「もう人は信じねー!」とメールがあったから多少は心配していたけど、それほど深い傷ではないようだ。

「そういや、その女子生徒とやらはどうなったんだ?」

「ああ、それが気づいたらどっかいってた。まあ教室で見つけたけど。」

「クラスメイトかよ!じゃあ名前でいいじゃんかよ!」

「いや、基本お前意外に話すやつの名前もうろ覚えなんだよな~。」

「覚えてやれ、奴らが泣く前に」

「まあお前の名前を覚えるのも高校入って三か月あとだしな」

「おいお前俺と同中の同クラスだろうが。しかも三年もな。おいらが泣かされてるぞよ」

 鍔根がおいおいと泣き真似をしているのを無視して、ちょうどドアから教室に入ってきた人を結は見る。その視線を追って鍔根もみる。

「おお、クラス委員長じゃねーか。やっぱり朝は早くから仕事をしててすごいよな~。ホントこのクラスに入れてうれしいぜ!」

 鍔根がガッツポーズで言うに、彼女『華鉄かがね 三波みなみ』は学年主席、文武両道、容姿端麗と色々そろっている同級生。明らかにアイドルにも女優にもなれる、と明らかにヒロインポジションな同級生。まあ俺も三日前にその知識が焼付かれたのだが...

「ああ、まあそうだな。」

「連れねーこと言うなよ。お前もわかるだろ?」

「ああ、わかるわかる。」

「棒読みかよ...。」

「だって興味ないからな、そういうのは。」

「じゃあ、タイプとかは?」

「ないな。」

「...まさかBえ」

「それは断じてない。」

「わかったから腕が粉砕しそうな握り方やめてくれ!」

 手が離された鍔根はひとまず話を戻す。

「だから、あの子はいわばマドンナ!」

「大声で言うな。もう十人はクラス内にいるんだぞ。」

 立ち上がっていた鍔根が周りを見てしぶしぶ座った。

「ほら、もうショート始まるから戻れよ。」

「...ちっ、昼あたりに女子のランキングを決めようぜ!」

「女子を敵に回したくないからパスな。」

「ま、そうだな。」

 そういって意気揚々と自分の席(結の後ろ)に座ったのを確認し、最後に一言告げた。

「ちなみに、その襲われてた女子生徒は華鉄だ。」

 ポカンとした顔の鍔根を尻目に前を向いた後、叫ぶまでに三十秒を要したのだった。まあ、隠す案件でもないし、第一に口封じされてないし。しかしそこから数秒後、「うるさい!」の一言とその教師が持ってたチョークがヒットし、鍔根は倒れて保健室送りとなった。


 ちょっとした未来系後日談。そのマッハ級で飛んできたチョークによってか、あるいは驚愕が上回ってか、俺の最後の一言を鍔根は忘れてしまったとさ。確か世界まで行ったはずの鍔根を倒すなんて、教師何者?



 放課後のことだった。俺はあることに気付いた。

「...あ、宿題教室のなかだ。」

 校門まで出たところで宿題を忘れたことに気付いた。朝の「チョーク事件」がすごくて忘れていた。さすが世界級。

 さすがに思い出してしまうと帰りにくくなる。だから何の気なしに教室へと戻っていく足。教室のドアまではほぼボケーッと歩いていた。やはり夕方だと急ぐ気力が減るのが人間、のはず。

 だから何の気なしにドアを開けた。

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