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表情
じゃあ、またね。
君は相変わらずの無表情で、別れの言葉を告げた。
「もう少し、表情を豊かにしてもバチは当たらないと思うよ」
僕は、笑う。
「そう?表情なんて、伝える言葉のおまけでしかない」
「言葉だけじゃ、伝わらないこともある」
君は少し驚き、首を傾げた。
「秋空?」
「じゃあ、千歳。それなら僕は」
何のために笑っているんだろう。
君のため?僕のため?
それとも、
「わかった。きっと、人間に表情があるのは、生きやすくするためだ」
「え?」
「無表情は相手に好印象は抱かれない。笑顔はその分世の中を渡りやすいんだよ。秋空の笑顔は自分のためだけど、人を愉快にさせるね、うん。表情とは、“人によって個人差があるが、使い方次第で人生が変わるもの。笑えば好印象を抱かせることができる”」
表情、定義完了。
そう言って君が、
世界の全ては喜びしかないような顔をして、
とても綺麗に笑うから。
僕は、また何も言えなくなる。
お題『ほらまたそうやって笑うから、何も言えなくなる』