第一夜:海のゆめにっきとチェス
※RPGツクールの「ゆめにっき」様とは関係ございませんが、楽しんで頂けると嬉しいです。
海―――。
わたしは海にいた。
一度も行った事のない、見渡す限りの水たまりのようで。
わたしはただただ漂っていた。
―――泳ぎは知らない。
わたしは水に浮くという経験がなかった。
わたしは、ただ空を見上げて水の上に漂っていた。
太陽は既に2時の方向を過ぎていて、空は桃色に染まっていた。
ふと、わたしは思った。
―――この水たまりの下には一体何があるのだろう。
今ここで、下をむくとどうなるのだろう。
新たな発見があるのだろうか。
だが、不思議と興奮は浮かばなかった。
ここで、寝返りをうつように転がれば下を見れる。
きっと、何かがいるんだ。
わたしはただ、無感情にそう思った。
強く風が吹く。
そしてわたしの体は転がり―――。
…
………
……………
お母さんはいつも五時に、わたしの寝室にやってくる。
お仕事が忙しいみたい。
新しいおうちに来てから、わたしはよく風邪を引くようになった。
わたしはいつもふかふかのベッドで眠っていた。
柔らかくて、優しい香り。
「お母さん。今日ね、海に行ったんだよ。でもね、海の中見れなかった。また行ったら、今度は海の中、見たいな」
お母さんは頭を撫でた。
「そう、よかったわね。私も仕事がなければ一緒に行きたかったのに、残念だなぁ。今度海にいったら、魚を探してごらん。海には、魚がいるのよ」
そう言うとお母さんはまた仕事に行った。
わたしは絵本を取った。
さっきの海は綺麗だった。
今度はどこに行こうかな。
「お嬢さん」
おじさんの声がした。
「お嬢さん、お嬢さん」
おじさんの声はテレビから聞こえてきた。
「お嬢さん、海が好きなのかな?」
おじさんは優しい声できいてきた。
―――もちろん、だいすき。
そう答えた。
「それはどうしてかな?お嬢さん」
―――どうしてだろう。
今まで、何と無しに好きだった。
色々な所に出かけて、そのたびにそこが好きになる。
―――ここじゃない、から?
「色々な場所を見たいかね、お嬢さん」
おじさんの声は、だんだん消え入りそうな小さな声になっていった。
―――うん。
「なら、このお話を聞いてみるといい。色々な場所にいけるよ」
わたしは興味津々だった。
―――どんなお話?
「それはね、お嬢さん―――」
おじさんは語りだした。
ゆっくり、ゆっくり。
いつしかわたしは眠っていた。
―――それは、あるひとりの女の子の話だ。
……………
………
…
目の前で木が燃えてる。
組み上げられた木は、パチパチと音を立てて燃えている。
男の子がいた。
こちらを見ている。
胸には赤いまだら模様。
血、なのかな。
男の子がこちらに来た。
わたしをどこかに連れて行ってくれるのかな。
男の子はわたしの手をひいて歩き出した。
ぐねぐねと細長い長い電球が、色んな色に輝いている。
魔法みたいに綺麗、だけど優しさを感じない。
それでも人を引きつける不思議な魅力があった。
歩いていくと、いつの間にか辺りはレンガの街になっていた。
優しさはあるけど、どこか人をはねのけるような感じがした。
霧が立ち、辺りは電灯の光だけになった。
だんだん電灯も消えて、その後霧もはれた。
男の子もどこかに消えていた。
白と黒のタイル。
わたしはそこに立っていた。
後ろに、レンガの展望台みたいなものがある。
わたしがそれに近づくと、意外とそれは小さかった。
わたしの身長位のそれに
手を伸ばし、抱きついた。
レンガのそれは砕けた。
立派なおひげのおじさんが私をにらんでいる。
私の前に、まだレンガの
展望台はいた。
多分、違うやつだ。
それは私の方に来て、私の前でレンガが開いた。
バタンと聞こえた時には、もう私はそいつの中にいた。
暗いな。
でも、怖さはなかった。
私は内側から開けようと
手を伸ばした。
扉はもうなかった。
振り返ると、小さな丸い穴がふたつあった。
右の穴を覗き込むと、うすい、黄緑のような、水色のような服を着て、マスクを付けた人がいた。
その人は、赤い箱をいじっていた。
さきっちょからひもの伸びた三日月、そのひもは下でホースのようにぐるぐるしていた。
三日月のとなりに、ハートがあった。
ハートは、少し明るいピンクだった。
だんだんその色は暗くなっていった。
ブザーがなった。
その人はどこかへ行った。
ハートはピンクになった。
もう片方を覗き込んだ。
電気のない部屋で、お母さんは寝ていた。
むくっと起きたお母さんは、白いカードをつかんだ。
―――お仕事、お仕事。夕方には会いにいけるかな。
そういって、お母さんはどこかに行った。
わたしのとなりで音がした。
…
………
……………
「どうだい、お嬢さん」
―――ごめんなさい、おじさん。話の途中で寝ちゃったの。
「いや、いいさ。楽しめたかな?」
―――不思議だった。
「そうか、君は不思議に感じたか。それでいいんだ。また明日見せてあげよう。では、失礼するよ。お嬢さん」
そう言うと、おじさんの声は聞こえなくなった。
じきに、お母さんも来るだろう。
わたしはいつの間にか用意されていたご飯に手をつけた。
結局、あのおじさんは誰なんだろう。
そう疑問に思った時、お母さんはやってきた。
その疑問は、うやむやになって消えてしまった。
また、あの場所に行きたいな。
そう思った。




