美咲の日記 その22
美咲の日記 その22
8月31日(金) 天気 雨
久し振りの日記になりました。
あの島にいた日から2週間あまりが過ぎていきましたが、あたしはどうしてもペンを持つ気力が湧かずにいました。あの島を眺めることすらも敬遠するほど。
真由もあたしに気を利かしてか、その話題に触れることはありません。以前と変わりなく今まで通りに付き合ってくれています。
うちの両親も、あの木村律子さんが亡くなってからは今まで通りの生活に戻ったようで、特に変わった様子も見せることなく暮らしています。
でも、ただでは済まされない事実がひとつだけあるのです。
この数カ月の異変、この数カ月間に起こった数々の謎を解決する糸口。真由が持ってきてしまったあの一冊。そう、「絹枝の日記」があたしの部屋の押入れの奥にあるのです。
はっきりいって悩んでいます。読むべきものなのか。読まずに返すべきなのか。洋上で渡された時、正直あたしは運命を感じていました。答えが出ないまま帰路についたので、結論が出ないことが結論なのだと自分を納得させていました。でもその日記があたしの手元にやってきたのです。ということは、それがあたしの選ぶべき道、進むべき宿命なんだなと痛感し、諦めにも近い溜息が胸に充満していました。
それから2週間。
何をするにもやる気が起きないあたしを真由は度々心配してくれました。日記を持ちだして来てしまった自分の責任だとも嘆いていたので、あたしは「真由のせいじゃないよ」と伝えました。人生、なるようにしかならないのであれば、こうなることも人生だから、別に真由の責任ではないわけだから。かえってあたしの元に日記が来るきっかけになってくれたんだから、真由には感謝さえもしていました。
今、あたしの日記の横にその日記があります。古びた紫色の日記は匂いもなんだか懐かしくて、あのおばあちゃんの目尻の皺を思い出させます。
「きぬえの・・・にっきか。おばあちゃんもつけてたんだね、日記」
あたしは薄く笑いながら、日に焼けた表紙をゆっくりと捲った。




