美咲の日記 その14
美咲の日記 その14
7月21日(土) 天気・曇のち晴
休みのたびに出掛ける両親。行き先は知っている。あれからあたしは部屋に籠ることが多くなった。心配する真由がひっきりなしに携帯を鳴らしてくれるが、あたしの心は一向に晴れなかった。
頭の中に浮かぶ、あのおばあちゃんの顔。何だろう、何か懐かしいような愛おしいような親近感を覚えていた。それ以来あたしは何度も自分の顔を鏡で眺めるようになっていた。目をつりあげてみたり、鼻をツンと上げてみたり、口をすぼめてみたりして。そしてあたしは眺めるたびに首を傾げる。何故ならあのおばあちゃんにあたしの顔がどこかしら似ているように思えてならないからだ。何ていうか他人と思えないような感じが。あの時、あの場所で初めて会ったはずなのに、どうしてこんな感情が生まれているのかが、疑問でならなかった。
そしてそのおばあちゃんがいた病室から出てきたというあたしの両親。そこに入院しているキムラリツコという女性。
ふと思ったことがあった。親友の真由にでも簡単にいえないような想像。でもそれを口にするのがとても怖くて堪らないあたし。それは、あのおばあちゃんがあたしのおばあちゃんなのではないか、ということだった。
あたしのお父さんの実家はここ函館にあり、そのおじいちゃんもおばあちゃんも健在なのは、今年のお正月も会っているし、確認する以前の問題だ。お母さんの実家は東北の岩手県というところで、実の孫のあたしでさえその顔は覚えていないくらい幼い頃に行ったきりだった。可能性があるとしたらお母さんの方だと思った。あの挙動不審なお母さんの態度は、それなら腑に落ちる気がする。
もう少しで夏休みがやって来る。あたしは眼を光らせた。
「その時しかない」と。




