楓の日記 その十二
楓の日記 その十二
七月十六日月曜日 天候 曇のち雨
今日も雨だ。最近天気があまり芳しくない。雨の日はなんか下を向きたくなってしまうから、私は嫌いだった。
せめてもの救いは、麻巳子との時間だった。でもいつもは一緒に放課後を過ごすのだが、前にも書いたように体育祭の実行委員を麻巳子がやっているので、ここしばらく遊んでいない。麻巳子と過ごすには学校だけじゃ全然時間が足りないのだ。
そういえば今日の夕方、おばあちゃんから電話があった。函館の病院からだった。今日から本格的に検査が始まったとのことだった。そんなことならこの土日だけでも、ママと一緒にいればよかったと思った。昨日の夜のフェリーで帰ってくればいいことだったから。
でも何か引っ掛かるんだよね。おばあちゃんの口調というか、いい方というか。「どこにいるの楓」なんて、大間の家の電話にかけてきておいて、何をいっているのか全然理解できなかった。何かあっちであったのかしら、変なおばあちゃん。きっと疲れが出てきているころなのかもね。倒れなければいいんだけれど。
ママは元気なのだろうか。少しでも早く元気なママの顔が見たいな。そんな時に限って天気が悪くて、あの島も見えないの。あの島にママがいるっていうのに。
早く会いたいな、ママ。




