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楓の日記 その十一
楓の日記 その11
七月十五日日曜日 天候 晴
ママが函館に移ってから、おばあちゃんの妹の昌枝おばさんが来てくれていた。昌枝おばさんは、つつがなくご飯支度して、帰っていった。
ひとりの食事。別に初めてのことではない。いつもはママが夜の仕事に行くのを待ってから食べていたのだから。でも、こんなことになるんだったら、できるだけママと一緒に食べればよかったと、後悔していた。
私しかいない家の中は、私の周り数センチしか空気が存在していないような、ふわふわとした無重力な感覚だった。心の支えを失ったような気持ちだった。そんな時に口にするものは、美味しくないに決まっている。
ママのことを思っていた。
「ママ、ご飯たべたかなあ」




