美咲の日記 その10
美咲の日記 その10
7月13日(金) 天気・晴のち曇
今日は体育祭の準備とかで学校が早く終わった。真由は実行委員会を任されていたんで、あたしだけ先に家路についていた。
7月なのに額に汗が浮くほどの蒸し暑さ。北海道には梅雨はないといっているが、この蒸し暑さは一体何なんだろうか。スカートのポケットに手を突っこみ、ハンカチを取り出した。ハンカチも少しだけ湿った感じがした。
あたしは家の鍵をいつも持ち歩いているので、いつものように玄関ドアに鍵をさし、いつものようにドアを開け、いつものように靴を脱いだ。部屋に行こうと階段を目指したが、居間のドアの前を通った時に中からお母さんの声が聞こえてきたので、少しだけ耳を傾けてみた。
「そうですか、お気の毒に・・・」
声のトーンは低い。
「14日。明日ですか。それなら私たちも・・・いえ、気なんて遣っていませんわ。主人も休みですし・・・それじゃ申し訳が立ちませんので・・・そうですか。それじゃ主人にはそのように・・・ええ、はい。何か必要なものがありましたら遠慮せずに・・・ええ、はい。ごめんくださいませ」
受話器を置く音が聞こえた。
明日の14日に何かがある。あたしは足音をたてずに階段を昇った。そしてそおーっと、部屋のドアを閉めベッドに腰を降ろした。
(一体何があるんだろう)
仰向けになって倒れた。いつものあたしの部屋の天井だった。何も変わったことはないはずだった。最近までは。
(いつから変わったのか)
最近でないとしたら、昔のことなのか。あたしのずっと幼い頃とか、もっと昔の生まれる前のことだったりして。でもいくら考えても進まないあたしの憶測。圧倒的に情報量が足りていないのだ。
横になっていたら眠くなってきた。あたしは瞼をそっと降ろした。そしたら階段の下から声が聞こえた。「美咲、帰ったの」と「お帰りくらいいいなさいよ」と。
あたしは「う~ん」と喉を鳴らした。




