第2話
ヤス達3人は翌日ガンドリルの屋敷の前に居た。
「でかい屋敷だな」ヤスは呟いた。
「お兄ちゃんってば、屋敷は未だ見えないでしょー」チカがむっとした顔で言った。
門だけで50メートルはある。門の先には長い道が続き、途中でカーブしている為、チカの言うとおり屋敷は未だ見えていなかった。
「しっかりしてくれよお兄ちゃーん」
「キモイぞ、ガンドリル」
「妹の彼氏に対してキモイとか言うなよー、お兄ちゃーん」
「・・・・・・・・・」
「・・・そんな怒んなくてもいいじゃん、悪かったよヤス」
バカなやりとりしている間に迎えが到着した。
門が開き、黒塗りの空理車が到着した。
流石、ガンドリル家の保有している空理車だ、空理車特有のエアードライブが市販のものと比べ物にならない。
「あの、空理車って6代目が乗っているんだよな、6代目すごいな、あのエアードライブ操作出来るなんてな」ヤスはガンドリルに向けて言った。
「ああ、俺の親父が乗っているよ、まぁあのエアードライブなら俺も操作出来るけどね」
「お前が!? じゃあアレは相当昔に完成していたってことか、すごいな流石、科学技術大臣なだけある」
黒塗りの空理車から、ガンドリルが降りてきた。
「よく来たね、チカちゃん。おお今日はヤス君も一緒か?」
チカの隣のガンドリルは、空理車から降りてきたガンドリルに軽く会釈をした。
「で、今日はホモ・サピエンス保護施設の見学だったな」空理車から降りたガンドリルがヤス達3人を見回して言った。
「その前に、ガンドリルさんちょっといいですか?」
「なんだね、ヤス君?」
「なんて呼べばいいですかね? ほらあのガンドリルさんだとどっちかわからなくなると思いまして」
空理車から降りたガンドリルがニヤッと笑った。
「・・・・・・・・・」キモ。やはりガンドリルの親だと、ヤスは心底感じた。
「私のことを、ガンドリルと呼ぶのが筋だろう。息子の方を呼び方を変えてくれ。」
「ですよね、わかりました、そうさせて頂きます。7代目の方は、普段からガーと呼んでるのでそう呼ぶことで、お二人を呼び分けます」
「よし、呼び方も決まったことだし、保護施設にレッツゴー!!」ハイテンションでチカが叫んだ。よほど行きたいのだろう。ヤスは今回の保護施設行きが妹の提案だと気付いた。
「なんで保護施設に行きたいなんてガーに言ったんだ? チカ」
「だって絶滅危惧種なんだよ!! いつ死滅するかわからないじゃん!! それに早く観に行かないと冷凍保存されちゃうし、動いているホモ・サピエンスを私は観たいの!!」
「チカちゃんは元気ですな。」
「親父、一応俺の彼女、色目使うのやめてよね。」
「お前の彼女ならイコールで私の彼女だろう? お前がチカちゃんを見る目で、私もチカちゃんを見ているというだけだ、私の癖に細かいことを気にするのだなお前は。」
ガーは苦虫を噛み潰したような表情になった。それはそうだろう、誰だって自分の彼女に他人が色目を使うのは嫌だ。しかしそれは相手が他人の場合だけであり、6代目ガンドリルの言う様に、6代目ガンドリルのクローンである、ガーが嫌がるのはおかしい。しかしそれは理屈の話だ。実際本人が嫌なら嫌なのだ。
そのやり取りに耐えかねたチカがさらに、保護施設行きをアピールした。
空理車に乗って高速で手招きをしているのだ。ヤスはチカの行動を称えた。
「な、ガーお前にはもったいないだろ?」
「ふさわしい男になってみせるよ。」ガーはチカに視線を向けたまま、ヤス、6代目ガンドリルに聴こえるよう言った。