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ー欲ー

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 自然の木が絡まりあって出来あがった、鳥かごのような形をした空間の中に、それらはいた。少年と龍である。

 もう少年と龍の付き合いは一年近くになろうとしていた。

さっそうと生い茂る芝生の中に龍はどっしりと居座っている。龍の体長は十メートルを超えているだろう。翼は体の半分ほどある大きさだ。それを丁寧に畳んでおり、体を半円のように丸めていた。体はゴツゴツとしていて、色は濁った赤。だが、その体は痛くないようだ。証拠に、少年がその龍の首筋に背中を預けるように座っている。

 絡み合っている木々の間から、暖かな、眠気を誘う程良い暖かさの陽光が神秘的に降り注いでいた。

 龍は大きな息をしながら、目を瞑っている。それに比べ、少年は鼻歌を歌っていた。

 と、静かな、平穏な空気を乱すように少年は静かに口を動かした。

「ねえ、どうして君は人と付き合わないんだい?」

 目だけを動かし、龍の顔がある方に向けた。

 すると、龍は瞑っていた大きな目を少年に向ける。

「ふむ、なかなか難しい質問をするものだな、少年」

 ハスキーボイスで龍は聞く。

「質問なんて、分からないことを聞くんでしょ? だからだよ。別に、僕としては難しい質問をしたつもりはないんだ」

 優しく少年は答え返した。

「そうか。理由か、強いて言うのなら、人には欲があるからだな」

「欲・・・・・・?」

「そう、欲だ。あれが欲しい、これが欲しい。あれになりたいといったものだよ。ただ、別に欲事態は悪くはない」

 龍の目には鋭さが宿っている。

「じゃあどうして・・・・・・」

「ふむ、人間の持つ欲が悪意に満ちていることが多いからだ。欲というものは生者には必ずあるもの、というのが私の持論なのだ。だからだよ」

「じゃあ何で僕だけ?」

「お主のものは気分がいいのだ。まあ、お主の欲が悪意にみちると来たれば私もこの地を離れるだろうな」

「双・・・・・・。ところで、君にも欲はあるのかい?」

「私か?」

 すると、今まではすらすらと答えていた龍の口から言葉が途切れた。

「・・・・・・」

「どうかしたのかい?」

 少年が尋ねると、龍の顔が少しだけ赤くなったのが見られた。

「強いて言うのならな・・・・・・」

 返事が返ってくると、少年は龍の首筋から背中を離し、正面に立ち、目を輝かせて答えを待っていた。

「強いて言うのなら・・・・・・」

 その期待に、龍はたじろぐ。

 少年は「早く早く」と言わんばかりに目の輝きが増している。

「ごほん」

 龍の咳込みで少年は尻もちをついた。

「すまん。言っていいかな?」

 龍は真を置かずに言う。

「強いて言うのなら、お主とこれからも出来る限り一緒にいたいということかのう・・・・・・」


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