表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/28

魔族という存在

ディアナ視点に戻ります

 「ディアナ。貴様は今日から俺の所有物だ。勝手に離れることを許さない」

 (所有物……魔王様のおもちゃということでしょうか)

 すぐ殺さず、好きな時だけ発散に使うおもちゃ。

 それも悪くない。

 

 さっきまで頬に添えられた手がすっと離れた。


 「デビト、今日中にこいつの暮らす準備を整えろ」

 「かしこまりました」


 魔王様に呼ばれたデビトという男性、すぐに私を手招いた。

 「ディアナ様、私についてきてください。魔王城を紹介します」


 私はおとなしく彼について行って、この部屋から出た。

 

 案内される途中、デビトさんはいろいろ教えてくれた。

 「さっきディアナ様が謁見された方は、魔王デオボロス様。と言っても、魔族には人間のような複雑な行政系統は存在していませんので、魔王という称号は象徴的なものですが」

 「私はデビトと申します。魔王の補佐を務めています。人間のところでいう宰相のようなものです」

 「この城の中は自由に歩き回っていただいてもかまいません。後であなたにお世話役を遣わせますので、気軽に使ってやってください」


 ここまで聞いて、私は少し戸惑った。

 「あの……」

 「どうしましたか?」

 「ただのおもちゃに、こんな自由があっていいのですか?」

 「おもちゃ?」


 デビトさんが不可解そうな表情を見せる。

 「何か誤解されているようですが、あなたをおもちゃ扱いするつもりはありませんよ」

 「でも、魔王様、所有物って」

 デビトさんは少し考えた後、私の疑問に答えた。

 「あなたの思考回路がどうなっているのかわかりませんが、あなたはただ彼といるだけで充分です」


 疑問がさらに増えた。

 でもそれを口出す時間もなく、私達は1つの部屋の前にたどり着いた。

 中を見てみると、さっきまで私が使っていた部屋みたいだ。


 「ここをあなたの寝室にします。好きに使ってください。必要なものがあれば遠慮なくおっしゃってください」

 「え、こんな素敵な部屋を使っていいのですか?」

 「お気に召さなかったら、他の部屋も用意できますよ。ここには部屋が無駄に多いので」


 ますます分からない。

 魔族は人間を発散対象としてしか扱わないって聞いたけど、想像と全然違う。


 「さて、いつまでもその汚れたドレスを着ていたくないでしょう。何か新しい服を持ってきます。少し待ってください」

 デビトはすぐ部屋から出た。

 私は1人残されていた。

 今更ながら土まみれなドレスで、ベッドや椅子を汚したくなくて、部屋の中央でぽつりと立ち尽くす。


 しばらくしたら、扉が再び開かれた。

 「お待たせしま……なぜ真ん中に立っているんですか」

 デビトさんが私を見た瞬間、呆れたような表情を見せた。

 「あの、ベッド、汚したく、なくて」

 「今更でしょう……まあ、いいです。紹介します」

 

 デビトは扉から離れ、後ろにもう一人、小柄な男の子が出てきた。

 きっちり切り揃えた深い緑色の髪に、光が見えない漆黒な瞳。

 とても愛嬌ある顔立ちなのに、一切感情を見せない。


 「彼はセロです。今日からあなたの世話役兼護衛にします」

 セロと呼ばれる少年は、おもむろに手にしている服を差し出す。

 「セロ、です。あの、服、サイズ分からないから、フリーサイズのものを」

 「ありがとう、ございます」

 私はそっと、彼の手から服を受け取る。

 白と黒が入り混じる、可愛らしいワンピース。

 手触りも柔らかく、とても着心地が良さそうだ。


 2人は外で待機すると言って、部屋を出た。

 私はすぐ、このワンピースに着替える。

 鏡がないから、似合っているかどうか分からない。

 こんな素敵な服、私に着られて、勿体ない気がする。


 私は部屋から出た。

 そこにはデビトさんの姿しかなかった。

 「よく似合っていますよ。さあ、次は食事する場所に案内します。」


 そう言って、また別の場所に案内された。


 食堂、厨房、浴場、庭、魔王様の執務室……は入らなかったけど、位置だけは教えてもらった。

 「ちなみにディアナ様の寝室は魔王の隣ですので、彼に呼ばれたら、すぐ行くように」

 「あの……本当にいるだけでいいのですか?魔族は生物を痛めつけることで、嗜虐心を発散していると聞いたのですが……」

 「おや、いたぶられたかったのですか。見かけによらずマゾな方ですね」

 「えっ」


 デビトさんはクスクスと、手で口を隠しながら笑っていた。

 「冗談ですよ。おしゃった通り、魔族は嗜虐心を発散するために、生物を痛めつけ、いたぶってる。しかしそれは“必要”だからです。人間が空腹する時に食事するように、魔族は耐えきらない嗜虐心を抑えるために、暴力を振るう」

 ――ここまでは、人間もよく知る話。

 

 「つまり、“必要じゃない”時があるってことですか」

 「ええ。まさに、あなたが近くにいる時です」


 デビトさんは私の手を取った。

 「ああ、やはり。触れるとより強くわかります。あなたといると、イライラする気持ちが収まっていきます」


 デビトさんはうっとりした目で、私の手を眺める。

 彼は指で私の手の甲を軽く撫でる。

 少しくすぐったく、胸の奥がドキッと弾む。


 「あの……」

 我慢できず、デビトさんに声をかける。

 「失礼しました」

 彼はすぐ、手を離してくれた。

 「つまり、私がいるだけで、あなた方のお役に立てる……ということでしょうか」

 「ええ。力が強いほど、嗜虐心も強くなるので、あなたがいるだけでかなり助かります」

(よかった。それなら迷惑をかけることがなさそうだ)


 「でも、何で私でしょうか」

 疑問はかなり解消されたけど、これだけは実感が湧かない。

 「我々も初めて会ったので、上手く説明できませんが――」


 デビトさんは窓に近づき、空に浮かぶ月を眺める。

 「神の時代に、月は耐えきれない衝動に飲み込まれ、苦しむ魔のもの達を憐れみ、彼らを癒す存在を作り上げた。我々はその存在をこう呼んでいます――月の魔女、と」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ