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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン


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勇者の怒り

人間視点です

《バルド目線》

 ディアナ様が兵士に連れていかれてしまった。

 すぐにでも追いかけたいが、倒れているステラ様をほっとくわけにはいかない。

 僕はすぐステラ様を抱き上げ、常駐医者のところに運んだ。


 医者の指示に従い、ステラ様をベッドに寝かせてから、僕は医者の診察を待たずに、謁見室に向かって飛び出した。

 本当はステラ様の体調が心配だが、ディアナ様の処遇がもっと心配だ。この国は、彼女に優しくない。


 (くそっ、なんでこの城は無駄に大きいんだ)


 10分歩いても、謁見室にたどり着けない。

 ただでさえ、診察室に遠回りして、時間をロスしているというのに。


 ようやく謁見室に着き、僕は力強く、扉を押し開く。

「王よ!ディアナ様はどこに?」


 跪き、挨拶する余裕もなく、僕は王に向かって言い放った。

 王座に座る国王は、ただ冷たく、僕を見下ろす。

「勇者バルドよ。あの忌子が気になるのか」

「ディアナ様は忌子ではありません!彼女は何もしておりません」


 王は激怒する僕を咎めることなく、質問に答えた。

「あれはすでに死刑に処した。今頃"壁"に向かっているんだろう」


 頭が一瞬、真っ白になった。

 そして次に沸いた感情は、怒りだった。


 手を強く握り、体が震える。

 心に湧き立つ衝動を必死に抑えて、声を低くしながら、王に問いかける。


「なぜです、なぜ自分と血が繋がった娘に、こんなに無情になれるのですか?彼女があなたに何をしたというのですか?」

「あれは吾の娘などではない。国に災いをもたらす忌子だ」

「ディアナ様は何もしておりません!誰も呪っておりませんし、誰も彼女のせいで不幸になっていません」


 王はため息をついた。

「バルドよ、この国の住民は全員、明るい髪色をしている。なぜだと思う」

「そんなの、今は関係ありません!」

「星の神に祝福されているからだ。特にお前とステラは、神から直接力を与えられている。しかしあの忌子は祝福されていない」

「それだけで、ディアナ様は嫌われ、蔑まれているというのですか」


 王は立ち上がり、僕に背を向けた。

「バルド。あれがいなくなった今だから言うか、王族では代々、暗い髪色の子は処刑すべきと言われている。彼らは神からの警告、いつか国に害を為す存在なのだ」

「そんなの、ただの言い伝えでしょう!ディアナ様はそんなことをしない」

「……これでも、あれを長く生かしている。一応あれにも王族の血が流れている。わけもなく処刑するわけにはいかない」


 何を言っても、王も僕も譲る気がない。

 これでは堂々巡りだ。


 「話になりません。僕はディアナ様を救いに行きます」

 「無駄なことを――」


 王の言葉に耳を貸さず、すぐ謁見室を離れた。


 一人ぼっちで王座の隣に佇む王は、ぽつりと憎しみを込めた言葉をこぼす。

 「愚かな勇者よ、お前はどうしてもあれを救いたいというのか。ステラも、吾も、あれのせいで最愛の人を失ったというのに」


 

 僕は馬を走らせ、急いで壁まで駆けつけた。 

 でもそこにはディアナ様の姿はなく、2人の兵士だけが扉を守るように佇む。


 「君たち、ディアナ様は?」

 僕は馬から降りて、兵士達に声をかけた。


 「ディアナ様なら、既に壁の向こうに行かれました」

 兵士の一人が、僕に向かって敬礼しながら、答えた。


 ――一足遅かった

 無力感に襲われていく。

 さっきまで馬を走らせて熱くなった体が、一気に冷めていく。


 「……そうか」

 絶望に侵されながら、僕は馬に乗って、城へ引き返した。



 重い脚を引きずって、僕はステラ様がいるであろう医療室に向かった。

 扉を開けると、ステラ様は既に目を覚まされた。

 

 「っ、ステラ様、体調はいかがですか」

 すぐベッドの傍まで近づき、彼女の顔色を伺う。

 「大丈夫よ。医者さんがすぐ薬を処方してくれたわ。そんなに強い毒ではないらしいわ」

 彼女の顔色はまだ微かに青白いが、なんてことがないように微笑んで見せた。

 

 「それよりディアナは?彼女は大丈夫なの?」

 そうか、ディアナ様が連れていかれる前に、ステラ様は既に意識を失っていた。

 ディアナ様のことをどう伝えればいいんだろうか。

 ステラ様は心の底からディアナ様を大事に思っている。

 きっと悲しませてしまう。


 言いよどむ僕を見て、ステラ様は何かを察してしまったのか、滞在している医者をしばらく部屋から出した。

 部屋の中には、僕とステラ様しかいない。

 「バルド。全部話して。全部受け入れるから」


 ステラ様の真剣な表情に、少し戸惑ったが、僕はすぐ話す覚悟を決めた。

 いずれ知ることになる、なら僕から話す方が、彼女のためになるのだろう。

 頭の中で整理しながら、ゆっくりと語り出す。

 ディアナ様が死刑に処されたこと、そして王との議論のこと。


 ステラ様は聞きながら、目の奥に少しずつ涙を募っていったのが見える。

 だが、僕の話が終わるまで、彼女は泣きださなかった。

 やがてすべてを語り終わり、しばらく沈黙が続いた。


 僕は彼女の様子を密かに覗く。

 彼女は下を向いていて、表情が良く見えない。

 けど両手は脚の上に握りしめて、微かに震えている。

 やがてぽつりと、彼女は話し出す。


 「バルド、どうしよう、私今、凄く悔しい」

 一滴、また一滴、彼女の涙がシーツに染み込んでいく。

 「なんで誰も、ディアナを見ようとしないの。彼女はいつも、辛く当たられても、我慢してるのに。誰にも迷惑をかけないように、何も言わないのに。彼女はただ、普通に暮らしたいだけなのに」

 僕はハンカチを差し出す。

 彼女はそれを取って、目に当てる。

 「そもそもあの紅茶は、私が持ち出したのに、なんでディアナのせいになるの!」


 彼女の最後の言葉に、僕ははっとなった。


 そもそもディアナ様が捕らえられてから処刑されるまでの流れが速すぎる。

 さっきは焦りすぎて、思いつかなかったが、普通は捉えてから証拠を集め、裁判を行ってからやっと処罰を決めるものだ。

 しかし証拠品となる紅茶は、ステラ様が使用人に用意させたものだ。

 ちゃんと調べれば、ディアナが毒を仕込むタイミングがないと分かる。

 しかも裁判もすっ飛ばして、処罰を言い渡された。


 そこで1つの可能性が浮かんだ。

(あの国王が、すべてを仕込んだ……?)

 最初からディアナ様を処刑するために、あらぬ疑いを着せて、有無言わせず処刑するつもりだった。


 この瞬間、頭の中にある国王の顔真っ黒に染まった。

 

 あの人はダメだ。

 彼の行動は()()()()()

 国王にふさわしくない。

 

 僕は涙拭うステラ様の手を取り、強く握る。

 「ステラ様」

 彼女は顔を上げて、僕に視線を向ける。

 「一緒に、あの男に、復讐しましょう」

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