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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン


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勇者パーティー、出発の日

《ステラ目線》

 ようやく出発日前日になった。

 この1ヶ月間、私は業務の時間以外、全部ライアンさんの研究室に入り浸り、浄化魔法の研究に協力していた。


 「やっと……やっと……完成した!!!!」

 目の下に隈を浮かびながら、ライアンさんは感激のあまり、両手で私達の研究成果を掲げた。


 「これでやっと!安心して眠れます」

 「ライアンさん、深夜に出発するので、今晩は寝ないでください」


 眠気で重くなっている瞼に、ホットタオルを当てながら、私はライアンさんにこう言った。

 私達は、深夜に出発することにした。

 理由はもちろん、父上に気づかれないようにだ。


 知られたらきっと反対されてしまうし、下手したら無理矢理止められるかもしれない。

 閉じ込められるのだけは避けたい。

(聖女の儀式はしばらくできなくなるけど……あれは形式的なものだし、やらなくても大丈夫でしょう)

 きっと戻った頃に、父上に酷く怒られるわね。

 でも私も勝手にディアナを処刑したことに怒っているから、おあいこね。


 「ステラ様も、仮眠を取ってください。連日夜遅くまで研究に付き合っていましたから、お疲れでしょう」

 「ええ、そうさせてもらうわ」


 私はライアンさんの研究室を後にし、部屋に戻ろうとした。

(その前に訓練場を覗いてみようかしら)


 寄り道で行った訓練場には、バルドとカイルさんの姿があった。

 カイルさんは元戦士ということで、王城の訓練施設を自由に使う権利が与えられていたらしい。

 今までその権利を使う戦士は少なかったから、私とバルドがそのことを知った時、かなり驚いた。


 そんな彼らは今、激しく木刀を打ち合っている。

 魔族との戦いに備えているのだろう。

 

 遠目でも分かる。

 必死に剣を打ち込むバルドに対し、カイルさんは余裕そうに対処している。

 バルドは決して弱くないけど、これは経験の差なのだろう。

 魔族に対してどのくらい通用するかわからない。

 そもそも魔族の力は未知数だけど、今はできることを精一杯するしかない。


 彼らの邪魔をしないように、私は静かにその場から去った。


 部屋に戻った後、私はメイリーを呼び出した。

 

 「メイリー。父上の様子は?」

 「気づかれていないと思われます」

 「そう……無事に出られるといいけど」


 瘴気対策が整った今、唯一心配なのはそれだけだ。

 もし出発の時に止められたら、私達はどうすることもできない。

 チャンスは一度っきり。

 慎重に進めなければ。


 「心配ありません。そのために私がいます」

 メイリーは手を胸に当てながら、自信ありげに言い放った。

(コウモリである彼女がそう言うなら……信じるしかないわね)


 「私は少し仮眠を取るわ。メイリーも出発まで、少し休みなさい」

 「かしこまりました」


 メイリーが部屋から離れ、私は夜まで休んだ。


 深夜になり、私はマントで身を包み、集合場所である王城の裏口へ向かった。

 そこにはすでに、バルド、カイルさんとライアンさんの姿があった。

 「メイリーが進路の状況を確認しています。合図してから出るとのことです」

 バルドが小声で私に話しかける。

 この裏口は普段使用人が使っているけど、メイリーがうまいごと人払いしてくれたらしい。

 

 「あの嬢ちゃん、なかなか優秀だな」

 カイルさんが話し出した。

 「カイルさんから見ても、メイリーは優秀なんですね」

 「まあな……特に気配の消し方がうまい。何回も気付くのを遅れて、驚かされたわ」

 カイルさんの言葉に、バルドも苦笑いを浮かべた。

 どうやら2人が一緒にいた時に起きた出来事らしい。


 やがて窓から黒い紙が舞い込んだ。

 それが、メイリーの合図らしい。


 私達はしっかりとマントを頭まで被り、足音を立てず裏口から出ていった。


 道中はびっくりするほど順調で、兵士1人とも出会わず壁近くまで来られた。

 そこでメイリーと合流した。

 「ご苦労様、メイリー。おかげですんなり出て来られたわ」

 「お役に立てて、光栄です」

 彼女は黒い服で体を包み、私に向かって一礼をした。


 「では、壁の向こうに行く前に、道具を配るとしましょう」

 ライアンさんは持ってきた荷物から、5つのブローチを出した。

 これこそ私とライアンさんが共同開発した、浄化装置。


 「このブローチは瘴気を浄化する聖女の力を蓄えた装置です。肌身離さず持っていてください。効果は6時間程度ですので、定期的に僕かステラ様に力を注ぎ直すようにしてください」

 ブローチが全員に行き渡ったのを確認し、私達は最後の難関に向き合った。


 「扉を開くには、兵士の持っている鍵が必要ね」

 扉の傍には、2人の兵士が立っている。

 彼らがそれぞれ持っている鍵を2本揃わないと、扉を開けることができない。


 「騒ぎを起こすのは避けたい。メイリー、鍵を奪うことはできるか?」

 「1本だけなら可能ですが、2本となると難しいかと」

 バルドはメイリーに相談してみたけど、流石に2人いると彼女もやりにくいらしい。

 ここでライアンさんは前に出た。


 「ここは僕が彼らを眠らせてみましょう」

 彼はカイルさんの方を見た。

 「カイルさん、僕のサポートをしてください。もっと近づかないと、魔法が届きません」

 「めんどくせえなー」

 カイルはライアンと共に、扉の方へ近づいた。

 それを、私達は距離を保ちながら見守った。


 2人の兵士はカイルさんの姿を捉え、槍で扉を遮る。

 「そこを止まれ!これ以上近づくんじゃない!」

 「いやー、兵士さん、ご苦労なことでー。こんな夜遅くまでに仕事しなきゃなんで」

 カイルさんはまるで酔っぱらったかのようにふらふらしながら、兵士達に話しかける。

 ライアンさんはそんなカイルさんの後ろに身を隠しながら、小さな魔法陣を浮かばせていた。

 魔法を発動する時、どうしても魔法陣が浮かんでしまうから、カイルさんを隠れ蓑にしたのだろう。


 「なんだ、この酔っ払い。早く帰らんか……なんか、変な匂いがしないか」

 「そうだな……なんか……眠くなって――」

 カイルさんが時間稼ぎをしているうちに、2人の兵士は眠りに落ちていった。

 

 それを見て、私達もゆっくり扉の方へ近づいた。

 カイルさんは2本の鍵を兵士の衣袋から取り出した。

 「お前の魔法、なんで俺に聞かなかったんだよ」

 「あなた方に渡したブローチは、状態異常にも効くのですよ」

 「まじか。お前、見かけによらずすごいんだな」

 「こう見ても、天才魔法使いと呼ばれておりますので」


 そんな他愛のない雑談を交わしながら、彼らは扉の解錠を試みる。


 「ようやく、ディアナを助けられる」

 私は小さく呟いた。

 

 「ステラ様」

 「なに?」

 私の呟きを聞こえたのか、バルドは話しかけてきた。

 

 「……ステラ様は気が進まないかもしれませんが、僕は復讐を諦めていません」

 「……うん、覚えているよ」

 ディアナが処刑された後、バルドが私にかけた言葉。

 私達が、ここに立っている理由。


 「ディアナ様が生きていたとしても、僕は王のしたことを許すことができません」

 「そう……私は、ディアナに会わないと、判断できないわ」

 「わかりました……必ずディアナ様を救い出しましょう」


 扉が開き、私達5人は、魔族の森へ向けて歩き出した。

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