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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン


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勇者パーティー3

《ステラ目線》

 ようやくブルックス卿の魔法談から解放され、私は彼にバルドと顔合わせ時間を取り付けてから、研究室を出た。

(バルドは順調かな?)


 最初は苦戦するかと思ったけど、案外すんなり見つかった。

 これも早くディアナを助けられるよう、神が導いてくれたに違いない。


 私はバルドに手紙を書こうと、部屋に戻ろうとした。


 「皇女様!」

 後ろから私を呼ぶ声がした。

 振り向くと、1人の侍女が近づいてきた。


 「あなたは?」

 「メイリーと申します。ディアナ様の専属侍女を勤めておりました」


 栗色の髪を短い切り揃えている彼女は、緑色の瞳をしていて、とても活発そうな印象を受けた。

 よく思い出してみると、いつもディアナの後ろに彼女が立っている気がしなくもない。

 それくらい、印象が薄かった。


 「ディアナの元侍女が、私に何の用かしら」

 侍女を中心に使用人たちがディアナを密かに虐げているのは知っている。

 流石に誰が何をやったのかはわからないけど、警戒せずにはいられない。


 「実は……あなた様と勇者様の話を、少し聞こえてしまって」

(私とバルドの話?)

 あの時は誰もいないことを、一応確認したはず。

 見落としてしまったのだろうか。


 「私、どうしても皇女様にお願いしたくて、失礼ながら声をかけさせていただきました」

 彼女は私を見下ろさないよう、跪いた。


 「お願いって何?」

 「私、後悔しているのです。ディアナ様がいつも虐げられて……でも、私だけではどうすることもできなくて。ディアナ様が死刑に処されたと聞いて、とても悲しかったのです」

 彼女は頭を下げながら、体を微かに震わせる。

 (これは……涙をこらえる震えかしら)


 彼女の声も震えているように聞こえる。

 

 「だから私、ディアナ様が生きているかもと聞いた時、嬉しかったのです!今度こそ、私が彼女を助けるのだと!」

 今度は力強く言い放った。

 まるで、覚悟を決めているかのように。


 「お願いです、皇女様!勇者パーティーに私も入れていただけますか?」

 「話はわかったわ。でも、危険な旅になるのよ。侍女のあなたに何ができるの?」


 彼女の真意はどうであれ、魔族の森へは、戦闘力にならない一般人を連れていくことができない。

 

 「皇女様、実は私、こういうものです」

 彼女は何かを握りしめたまま、私へ差し出す。


 私の手のひらを広げてみると、彼女はそこに何かを載せた。

(っ!?コウモリの紋章――)


 父上から聞いたことある。

 王族が密かに集め、鍛えている諜報部隊。

 王族の中でも、直系の人しか知らない、コウモリと呼ばれる人達。


 私はその紋章を彼女に返す。

 「あなたの正体についてはわかったわ。けど、父上の命令に従うはずのあなたが、なぜディアナを救おうと?」

 「ディアナ様はとてもかわいそうなお方でした。何度虐げられても、王にも訴えられず、あなた様や勇者様に迷惑をかけないよう、1人で抱え込んでいたのです。それでも、彼女は優しさを忘れず、私にとても良くしてくれました。それが、とてもうれしかったのです」


(確かに……ディアナはびっくりするくらい、優しかった)

 私も優しいディアナのたくさん救われたことがある。

 コウモリは酷い訓練に耐えなければならない。

 なら、ディアナの優しさに感動してもおかしくないわね。


 「……わかったわ。バルドに掛け合ってみる。でも、条件があります」

 「はっ!何なりと」

 「あなたの"命"を、私に預けなさい」

 

 コウモリのひとりひとりには、裏切りを防ぐために魔法がかけられた契約をしている。

 その命を物に宿し、王族に託すこと。

 その物が壊れた瞬間、コウモリの命も散る。


(これは念のため。彼女が、私を裏切らないための)

 「私の命は今、王に預けております。しかし、時間をいただければ、必ずそれを取り戻し、あなた様に渡しましょう」

 「いいでしょう。あなたの実力を見極めるいい機会です。今夜9時、私はバルドと例の場所で会うつもりよ。その時間まで命を私に渡せないのであれば、この話は白紙にするわ」

 「はっ!必ずやあなたの期待に答えて見せましょう」


 そう言って、彼女はこの場を去った。

 私も部屋に戻り、手紙を書こうとしたけど、机の上には既に、バルドからの手紙が置いてあった。

 

『ステラ様

 いい戦士が見つかりました。

 いつもの時間で、例の場所で待ち会わせましょう。

 バルド』


 どうやら彼に先を越されたらしい。

 でも私もいい人材を見つけたのだ。

 今夜が楽しみで仕方ない。


 そして夜の9時になり、私は魔法使いのブルックス卿を連れて、私達の秘密の場所――訓練場の裏側まできた。

 そこにはバルドと、体の大きい男の人がいた。


 「ステラ様。こちらは戦士カイル。かなりの手馴れです」

 「カイルだ」

 「ステラ・ローランドと申します。こちらは王城専属の魔法使い、ライアン・ブルックス卿です」

 「ライアン・ブルックスです。お初目にかかります。勇者殿、カイル様」

 「ああ、バルド・エルメスだ。よろしく頼む」

 

 私達は簡潔に自己紹介を済ませた。

 「では、作戦を共有としよう」

 「バルド、その前に話が――」


 その時、私達の近くに、何者かが近づいた

 「っ!」

 「バルド、待って!」

 剣を抜こうとしたバルドを、呼び止める。


 そこには、黒い服装で体を包んだ、メイリーの姿があった。

 「皇女様、こちらが、例のものです」

 彼女は小さな手鏡を、私に差し出す。

 「確かに受け取ったわ。バルド、彼女もパーティーに加わってもいいかしら」

 私は彼女の手鏡を隠してから、バルドに問いかける。

 

 「彼女は?」

 「王族の秘密裏の護衛よ。とても腕が立つから、役に立つと思うわ」

 私は彼女の正体をぼかす。

 流石に勇者でも、王族の秘密を易々とばらすわけにはいかない。


 「……ステラ様がそういうのであれば」

 バルドは渋々と了承し、私達に向き直す。


 「では、改めて作戦を共有します。我々の目的は魔族の森に入り、魔王城を探すこと。そしてそこにいるかもしれないディアナ様を救出することです。そこで1番目先の課題は、瘴気です」

 「確か、入るに連れて瘴気が濃くなると聞いたな」

 カイルさんはどうでもよさそうに話す。


 「瘴気なら、私がある程度浄化できるけど……四六時中となると難しいわ」

 私はブルックス卿に視線を向ける。

 「ブルックス卿、何か意見は――」

 「皇女様、僕たちはめでたくパーティーを結成したのです。どうぞライアンとお呼びください」

 「では、ライアンさん。あなたの知恵をお貸ししても?」

 「そうですね……僕の聖女ほどではないですが、浄化魔法が使えます。しかし、長時間保つことができません」


 ライアンさんは立ち上がった。

 「少し時間をいただけますでしょうか?瘴気を長時間浄化する装置を作ります」

 「そんなもの作れるのか?」

 バルドが驚いた素振りを見せた。

 「実は、以前から1人だけでも魔族の研究を行いたいと思い、瘴気対策を考えていたのです。そこで考えたのが、常時浄化する魔法を放つことができる装置で――」

 「とても心強いわ!ライアンさん、協力できることがあれば、何でも教えてくださいね!」

 ライアンさんの魔法談が始まる前に、大声で遮る。

 「……そうですね。お願いいたします、ステラ様」

 不満げだけど、彼はすぐ引き下がってくれた。

 そのことに、少し胸を撫で下ろした。


 「では、お願いします。ライアンさん。時間はどれくらいかかるのでしょうか」

 「本当は実験や検証も兼ねて、3ヶ月は欲しいどころですが……ここは超急ぎで1ヶ月で仕上げて見せましょう。魔族の森に入ってからまた改良していきましょう」

 「ふむ……仕方ない。今すぐにでもディアナ様を助けたいのですが、我々が命を落としては元も子もありません」

 「じゃあ1ヶ月後、出発するってことだな」

 カイルは立ち上がり、ここを去ろうとした。


 「待ってください、カイルさん。せめて連絡方法を残してから――」

 「用事があれば例の店に行けばいい。そこで部屋を借りている」


 そう言って、彼は今度こそ、この場を去った。

 私達もそれ以上共有することがなく、それぞれの連絡方法だけ残して、解散した。

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