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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン


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勇者パーティー2

《ステラ目線》

 魔法使いを探すと、バルドに約束したものの、どこから探せばいいのか分からず、とりあえず王城で働いている魔法使いの研究室に向かうことにした。

 (私に魔法を教えている先生に頼ってみたいけど、あの人、ディアナのことをよく思っていないのよね)


 王城で働いている人のほとんどは、ディアナのことをよく思っていない。

 遠巻きにして、関わらないようにしている人もいれば、正々堂々悪口を叩いている人もいる。

 私の魔法教師はまさに後者だ。


(いつも暗い髪色は神に嫌われた証とか、神に愛されないものは国から追い出すべきだとか、私の前にペラペラ話しちゃうんだよね)

 おかげで魔法は好きなのに、魔法の授業は素直に楽しめない。


 そんなことを考えていると、前から()()()()()がゆっくり近づいてきた。


(あれ、道は見えているのかな)


 案の定、その人は何かに躓き、本を全部地面にぶちまけた。

 その中の一冊が、私の足元まで滑り込んだ。

 私はそれを、拾い上げる。


(《魔族と魔法の関連性》?)


 この本を持っているってことは魔法を研究している人なのだろうか。

 だけど魔法使いでも、魔族について知ろうとする者は少ない。

 誰も能動的に魔族と関わろうとしないからだ。

 だからこんな本を読むなんて、相当な変人に違いない。


 私は本を拾っている人に近づく。

 「これ、落ちてたよ」

 「あ!ありがとうございます!」


 私を見上げる彼は、鮮やかな黄緑色の髪と、太陽の色をした瞳を持つ、12歳くらいに見える男の子。

 「この本はあなたが読んでいるの」

 好奇心に駆られ、思わず質問を口に出す。


 「いえ!これは僕の師匠が、取り寄せた本です」

 「師匠?もしかして、魔法の師匠かしら」

 「そうです!僕の師匠は、すごい魔法使いなんです!」

 「そうなんだ!じゃあ、あなたは将来、すごい魔法使いになるのね」


 目の前の男の子があまりにもキラキラした目で話すから、微笑ましく感じてしまう。

 「あなた、お名前は?」

 「申し遅れました。僕はウェイン・ヘンリックと申します。ブルックス魔法研究室に所属しています」


 ブルックス魔法研究室。

 確か王城専属の研究室の中でも話題が絶えない所。

 いつも新しい視点で既存の魔法理論を覆し、魔法研究に多大なる貢献をしている研究室。

 それ以外でも室長を務める方は優秀だけどかなりの変人で、そういった面でも話題の中心にいる。

 

(この子があの研究室の子なのね)

 こんなに若いのに、王城専属研究室に入れるということは、この子もかなりポテンシャル高いのであろう。

 特に魔法研究室の中でも将来有望と言われるブルックス研究室に所属しているのだから――


 ふと、頭が閃いた。

(そこの室長が魔族に関する本を読んでるってことは、私の話にも興味を示してくれるんじゃ――!)


 「ウェインくん!」

 私は彼の手を力強く握る。

 「は、はい?!」

 「私を、あなたの研究室に案内して!」


 そうして私は、ウェインくんと半分こして本を持ち、研究室前まできた。

 「師匠!本を持ってきました!」

 「入っていいよ」


 扉の先には、どこもかしこも本を雑に積み上げられていた部屋だった。

 おまけに何枚かの紙が地面に散らかっている。

 そして部屋の主は真ん中にあるテーブルの上で、何やらすらすらと書いている。

 私とウェインくんが部屋に入ったにも関わらず、彼は一向に紙から目を逸らす気配がない。


 「師匠、お客様です」

 「ん?そんなの、聞いてないけど――」

 彼はやっと、こちらに視線を向けた。


 肩までの滑らかな水色の髪に、茶色の瞳。

 目尻のほくろが彼の整った顔立ちに色気っぽさを添えた。

 

 「君は……もしかして皇女殿下ですか?」

 彼は解せないと言わんばかりに、私を見つめた。


 私は本をテーブルに置き、ドレスを軽くつまむ、お辞儀をする。

 「お初目にかかります。ステラ・ローランドと申します。急に押しかけたことを深くお詫び申し上げます。私は、ブルックス卿に折り入った話がしたく、参りました」

 

 そこでウェインくんは大慌てで部屋を軽く片付け、私を客用のソファに座らせた。

 「皇女様に、本を持たせちゃった……」

 彼は涙目になりながら、呟いていたのだが、私は気にすることなく、彼に微笑みかけた。

 そして慌てているウェインくんと対照的に、ブルックス卿は冷静に私の向かいに座った。


 「ライアン・ブルックス卿と申します。皇女様、ご用件は何でしょうか?」

 彼はただ無表情に、私に問いかける。

 彼の仕事を邪魔したことで、不快にさせたのだろうか。


 「さっき、ウェインくんの本を運ぶのを手伝った時、少し見えてしまいましたが、ブルックス卿は、魔族についてご興味が?」

 「……なるほど、そうでしたか。して、あなた様は私を警告しにきましたか?それとも糾弾しに?」

(ん?)


 「これまでも何回しつこく言われましてね。もう鬱陶しいのですよ。たとえ王族が直々に警告しに来たとしても、僕は諦めるつもりがありません」

 何やら彼は話を数段飛ばした上で、何かを誤解している。


 「いいですか、皇女様!僕のスタンスは変わりません。魔法を研究する上で、魔族の研究は欠かせないのです。魔族は強大な魔力を秘めながら、息を吸うように魔法を使いこなしている。論理的に魔法理論を読み解き、魔力操作を練習し、応用を覚えることでやっと使えるようになる我々人間とは違い!直感的にです!」

 そして彼は、熱く語り出した。


 「つまり、魔族と魔法は密接な関係を持っている。それを研究することで、人間の今までの魔法使用理論を一新することができるかもしれないのです!」

 やがて、彼は立ち上がり、自分の世界に入ったかのように手を上げる。


 「何と言われようとも!僕は決して!魔族を研究することを諦めません!!!」

 一気に話し過ぎたのか、彼は息が乱れながら、ソファに座り直し、お茶に口づけた。


 彼の語りに思わずポカンとなったものの、私は彼の反応から、ようやく決心がついた。

(よくわかったわ、彼が魔法に対する熱意も……私の話に興味を持ってくれるだろうということも)


 「ブルックス卿の熱意はよくわかりました。しかし私は、あなたを止めるためにここに来たのではありません。お願いがあって来たです」

 「お願い?」

 彼は目を見開いた。


 「ええ……実は私、魔族の森に入りたいと思っています」

 私は、ゆっくり語り出した。

 ディアナが冤罪で死刑にされたこと、神託から、彼女が生きているかもしれないと知ったこと、そして私とバルドの計画のこと。

 彼は話を遮ることなく、気長に聞いてくれた。


 「なるほど、あなた様はもう一人の皇女を助けたく、魔法使いを探しているということですか」

 彼は顎に手を当てる。


 しばらく沈黙が続き、私はごくりと息を飲み込んだ。

 そしたらようやく、彼は話し出した。

 

 「僕、本当は魔法の研究がしたいだけで、戦いは好まないのですが……いいでしょう。魔族と接触できるいい機会です。みすみす逃せるはずがありません」

 それに――


 彼は言葉を続けた。

 「会う機会はありませんでしたが、以前からもう一人の皇女に興味があったのです」


 思わず驚いてしまう。

 「ディアナのこと、不気味がらないのですね」

 「研究者からすれば、根拠のない信仰は非論理的です。暗い髪色と呪いの関係性は証明されていない。なら、僕としては忌み嫌う理由がありません。逆に研究対象として興味があります。あの髪色は何故なのか――」


 彼の語りがまた始まった。

 私は帰るタイミングを完全に失い、2時間も彼の魔法談に付き合うことになった。


(でも、いい協力者を見つけられたわ!待ってて、ディアナ。絶対、あなたを助けるから)

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