表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/28

知ってはいけなかった一面

《テオボロス目線》

 魔王城の庭の奥には、大きな空き地がある。

 普段は木々に隠れ、近づかないとわからないようになっている。

 そこには高く大きな壁が円状に建てられている。

 中に入ると、真ん中には円状のステージ、そしてそれを囲うように高く設置された、数万規模の観客席。


 既に多くの魔族が観客席に座っている。

 行事が始まる瞬間を、今か今かと、騒がしくしている。


 俺はステージの中央に立ち、息を深く吸込む。

 「これより、我、魔王テオボロスは、月に一度の『闘技会』の開幕を宣言する」

 この一言に、会場全体は湧き上がる。

 俺はすぐ背を向け、自分の定位置である入口正面の特等席に座る。

 残りはデビトに任せればいい。


 「魔族のみなさん。本日の試合内容をお教えします。静かにしてください」

 騒がしかった会場が一瞬で静まった。

 「本日の参加者は15名。そして相手となる魔獣が10匹――」

 会場が緊張感に満ちていく。

 「――人間が8名」


 「「「ウォオオオオオオ!!!!!」」」


 魔族が月に一度のお楽しみ。

 思いっきり嗜虐心、暴力衝動、加虐欲を発散する行事。

 毎回行う度に、魔族領をあっちこっち駆け回り、獲物を狩らないとならないから面倒だ。

 しかも、人間がいないと場が酷く荒れる。

 だから毎回、人間の有無で行事の盛り上がりが決まる。


 今回は8人見つかった。

 普段2、3人しかないのに対し、豊作と言えるんだろう。


(こんな見るだけの会、大して発散にならないがな)


 力の弱い魔族にとって、見るだけでかなり発散になる。

 だが俺やデビトみたいな強い魔族にとって、不完全燃焼もいいところだ。

 だからなるべく強い魔族を出場させている。


 俺やデビトはすぐ相手を殺してしまうから、出場しない。

(こんな会、早く終わらせて、帰りたいんだがな)


 思い浮かぶはディアナの温もり。

 あいつと一緒にいる心地よさを知ってしまった今、俺とデビトにとって、こんな会はもう無意味だ。

 あの駄犬も同じこと考えて、今回は出場しなかったんだろう。


 「では、第一試合を始めます。選出出場――」

 大鎌を持ったガタイの大きい魔族がステージに登る。

 反対側に魔獣が1匹が檻ごと運び出された。

 

 檻が開けられた瞬間、試合が始まった。

 ステージで繰り広げられる激闘に、会場が喧騒になっていく。


 「どうです?楽しんでますか、魔王様?」

 「知れたことを。こんなお遊びで楽しめるわけねえだろう」

 「そうですね。高級食材を知ってしまった今、安い肉じゃ満足できませんね」


 デビトは隣で立ち、つまらなさそうにステージを見下ろす。


 次々と試合が終わっていく。

 既に魔獣は狩りつくされ、残りは人間のみとなった。


 「お待たせしました。これより人間が登場します」


 「「「ウォオオオオオオ!!!!!」」」


 金棒を持つ魔族がステージに登る。

 反対側に見るからに鍛えられている、筋肉質な人間が出てきた。

 一応反抗の手段として、剣と盾を持たせている。


 試合が始まり、人間は魔族に向かって勇敢に攻撃を仕掛ける。

 それを、魔族は素手で容易く防ぐ。

 しばらく人間が激しい攻撃を繰り出した後、疲れ始めたのか、動きが鈍り始めた。

 対して相手となる魔族は余裕の笑みを浮かべ、やっと金棒を振り上げる。


 最初こそ人間は盾で何とか防いだが、すぐその盾が壊され、金棒により攻撃が当たった。


 「ぐああああああああ」

 「あっはははははははは」

 

 魔族の金棒が何回も人間に打ちつけ、そのたびに人間の悲鳴が会場中に響き渡る。


 「――も、やめて、くれ……ぐああああ」

 人間の命乞いも虚しく、息の根が止まるまで、魔族からの攻撃はやまなかった。


(また1人目だというのに……時間がかかりすぎるな)

 すぐにでも帰りたいのに、この調子だと行事はかなり長くなる。


 そんなことを考え、出入口の方を見ると――

 「――はっ」


 ――――――――――

《ディアナ目線》

 白猫を追っていたら、庭の奥まで来てしまった。

 テオ様には建物から出るなと言われているのに。

 すぐにでも帰らないと。


 私はやっと追いついた猫を抱え上げる。

 そしてその子が咥えているチョーカーに手を伸ばす。

 「えっ」

 そしたらチョーカーが跡形もなく消えた。

(なんで?!)


 でも猫の感触はちゃんとある。

 「ニャー」

 猫は可愛らしく、私の体に擦りつける。


 「チョーカー、どこにいったの?」

 猫に問いかけても、ただまん丸な目が見つめ返してくるだけ。

 「どうしよう……」


  『『『ウォオオオオオオ!!!!!』』』


 森の奥から声が聞こえた。

 大勢の声だ。


 ――今すぐ帰らないと。

 頭では分かっているのに、足は好奇心に駆られて、前へと進む。


 やがて大きな壁を見つけた。

 「こんな場所、庭にあったんだ」


 再び中から声が響いてきた。

 目の前にある、入口らしき穴に、ゆっくりと入っていく。


 真っ暗な通路に、一筋の光が真正面から差し込む。


 やがて目は光に慣れていき、恐ろしい光景を視界に入ってしまった。


 ――魔族が金棒を持って、何回も人間の男性に打ち込む光景。


 あの男性はもう息が絶え絶えなのに、魔族の動きは止まない。

 ステージの上は、血で染まっていく。


 体が震える。

 胃の奥から何か湧き上がってくるのを感じる。

 叫び出しそうになる口を、手で強く封じる。


 やがて足から力が抜けていき、地面に倒れ込む。


(いやだ……いやだいやだいやだ)

 引き返さないと。

 早くここから離れないと。

 これは、私が見ていいものではない。


 そう思うのに、足が動いてくれない。


 「うん。おい、そこで何をしている」

 後ろから声がする。

 振り向くと、知らない魔族が、1人の女性を引き連れている。

 その女性は、ボロボロな服を着せられ、剣と盾を持たせられている。

 恐らく人間だ。


 彼女もこれから、ステージにいる男性と同じような目に遭うだろうか。

 「お前、人間か?9人目がいるなんで聞いてないぞ」


 その魔族は私に手を伸ばす。


 ――それを誰かが掴んだ。


 「っ!魔王様!」

 「この女に触れたら殺す」


 その魔族はすぐ手を引っ込み、壁際まで後退る。


 テオ様は私を抱え上げ、ゆっくり壁の外へ歩き出す。


 「なぜここにいる?」

 「……チョーカーが、猫に取られて……その子を追っていたら、ここに」

 「猫?」


 いつの間にか、私の手の中にいるはずの白猫は、いなくなっていた。

 「あ、あれ?」

 「……とにかく建物に戻れ。今夜お前の部屋に行く」


 壁の外側に出て、テオ様は声を上げた。

 「――レオード」


 地面に魔法陣が現れて、そこからレオードさんが出てきた。

 「召喚により、参りました……ディアナ?!」

 

 レオードさんは地面に跪いていたけど、私を見た瞬間、驚いて立ち上がった。

 「命令を守れなかった処罰は後で言い渡す。今はディアナを部屋に連れ戻せ」

 「わ、わかった」


 レオードさんはテオ様の手から私を受け取り、魔王城に向かって飛んでいく。

 それを、テオ様は見守った後、壁の中に入っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ