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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン


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戻った日常

《デビト目線》

 最近の魔王様は、目に見えるほどご機嫌ななめだ。

 元々魔王城で暮らしている魔族は、魔王様が放つ威圧に圧倒され、近づこうとしない。

 最近では同じ空間にいるだけで卒倒する魔族さえ現れている。

 理由は一目瞭然だ。


(ディアナ様があの狼に肩入れしたのが、かなり気に入らなかったでしょう)


 先日行事の準備で出掛けた途中、魔王様が持っている赤い宝石が光り出した。

 その宝石はディアナ様のチョーカーに飾られた宝石と対になっている。

 ディアナ様に危険が降り注いだ瞬間に自動的に作動すると聞いている。


 私達は一時的に魔王城に帰った。

 そして、ディアナ様とあの狼が一緒にいるところを、目撃した。


 あの狼は滅多に魔王城へ帰らないから、油断していた。

 彼は魔族の中でも、暴力衝動を楽しんでいる傾向が強いから、なるべくディアナ様に会わせたくないと思っていた。

(行事が近づいているから、警戒しておくべきでした)

 これに関しては私も反省しなければならない。


 ただでさえ、我々は長い時間ディアナ様に触れられず、嗜虐心に苛まれているというのに。


 やっとディアナ様に会えると思って、心を弾ませて魔王城に帰ったら、既に狼がやらかした後だった。

 倒れているディアナ様を見て、私達は酷く腹を立てた。


 特に魔王様はディアナ様をいたく気に入っているように見えたから、彼女が知らないところで傷つけられたことに激怒した。

 今まで放置していたペットに、きつく躾してしまうくらい。


 彼女を狼に会わせない為に、部屋から出ることを禁止したというのに、魔王様は仕事の間始終心ここにあらずだった。

 挙句の果て、やっと仕事が終わって、魔王城に帰った途端、ディアナ様はあの狼と一緒にいるところを目撃してしまった。

 しかも、ディアナ様はあの狼の人型を見ても、庇い続けていたという。


(これは、魔王様が拗ねるはずです)

 彼女を守ろうとしたのに、当の本人がそれに反発したのだから。


 魔王様はこの瞬間でも、ディアナ様を膝に抱えながら、本を読んでいる。

 魔王様の手は、しっかりとディアナ様の腰に回している。

 いつもの日常に戻ったようだが、2人とも居心地が悪そうだ。


 ディアナ様は明らかに気まずいようにしている。

 魔王様はとにかく一日中ディアナ様にべったり、彼女の寝る時間のギリギリまで離れないようにしていた。

 自分といない時間を極限に減らし、彼女をあの狼と会わせないようにしたいのだろう。


(行事までに何とか機嫌を直してくれたらいいのですが)


 そんなことを考えていると、ディアナ様がこちらに向かって走ってきた。

 小走りする彼女は、とてもいじらしい。

 「どうしましたか、ディアナ様?」

 魔王様が後ろのソファで、こちらを睨み付けている。

 彼女の話す相手は私だから、ギリギリ許したのだろう。

 「デビトさん、相談したいことがあって――」


 相談内容をまとめると、セロとあの狼の傷に触れた時、彼らの傷がわずかに回復したとのこと。

 魔王様に話したら、また切れられそうだ。


 「興味深いですね。ちなみにその時、何か観察できる現象はありましたか」

 「触れる時、微かに光りました。紫が帯びた光でした」

 「なるほど、こちらで調べておきましょう」

 「お願いします。私もできることをします……このことは魔王様に話した方がいいでしょうか?」

 「そうですね……話した方がいいでしょうけど、その経緯だと、地雷になりかねません。しばらく秘密にしましょう」

 「わかりました」


 彼女は少し俯いた。

 よく見たら顔色が悪くなっている。

 魔王様と四六時中一緒にいて、疲れを感じているからだろう。

 私は彼女に顔を近づけて、小声で話した。


 「お疲れのようですが、1人でいる時間を確保して差し上げましょうか?」

 「っ!いいえ、大丈夫です。これ以上テオ様を不快にさせたくないですし」

 「遠慮しなくていいのですよ。まだ倒れられたら、今度こそ監禁されそうです。お礼はあなたとの時間で――」

 「いつまで話している」


 待ちくたびれた魔王様は私を睨みながら近づいてきた。

 私と彼女の距離も気に入らなかっただろう。


 「もう終わりますよ。それより魔王様。例の行事で確認したいことがありますので、時間をいただけますか?」

 「……今じゃないとダメか?」

 「もう何日も押していますよ。そろそろしないと準備が間に合いません」

 「……わかった」


 私は魔王様をディアナ様から引き離した。

 離れる前に、ディアナ様へのウィンクを忘れずに。

 ――――――――――

《セロ目線》

 最近ディアナ様と会えていない。

 魔王様が帰ってきてから、彼女はずっと魔王様の傍にいる。

 どうやらレオード様がやらかしたらしい。


 今日も魔王様と書庫で過ごされている。


 僕の作業室は書庫の近くだから、いつ誰か出入りしたかよく見える。


 ちなみに今、遠くない場所から、書庫の方を覗き込んでいる方がいる。

 ――レオード様だ。


 魔王様が帰ってきた日以来、レオード様はいつもディアナ様の行方を追っている。

 ディアナ様に近づく機会を伺っているように見える。

(まだディアナ様に何かをしようとしているのか)


 正直彼には近づきたくない。

 いつも酷い目に遭わされる。

 だけどディアナ様に危害を加えようとしているのなら別だ。


 僕は彼に近づく。

 「ディアナ様に何をしようとしているのですか」

 「わあ!……なんだ、軟弱者か。ビックリさせんな」


 彼は指で頬を掻き、声を潜めた。

 「最近、ディアナが疲れているようだから、何とかしたくて……けど魔王に姿を見られたら殺される」

 彼は夜に少し、ディアナ様の部屋に忍び込み、話を聞いたり、狼の姿で添い寝したりしているらしい。

 いつの間にかディアナ様と親しくなっている。


 僕さえディアナ様とあまり話せていないのに。


 本当は新しい作品をディアナ様に見せたくて、機会を伺っていた。

 レオード様に先を越されているのが悔しい。


 その時、魔王様とデビト様が書庫から出てきた。

 ディアナ様が一緒に出てくる気配がなかった。


 もしかしたらディアナ様は今、1人なのでは。

 魔王様とデビト様が遠くへ行ったのを見計らい、僕とレオード様はすぐ書庫に入って、ディアナ様に話しかけた。

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