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人間から嫌われている私は、魔族に愛される魔女だったらしい  作者: シン


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運命の日

12時毎日投稿です

「ディアナ、貴様を聖女を毒殺未遂の罪で死刑に処す」

 目の前で、“父親”だった人が、軽蔑の眼差しで私を睨みつける。


 あ、いつかこうなると思っていました。

 私はこの人から愛されぬまま、死んでしまうのでしょう。



 ローランド国。

 魔族領と隣接しているこの国は、常に魔族に襲われる恐怖を抱いている。

 16年前、王族から双子の娘が生まれた。


 片方は愛らしいプラチナブロンド髪に桃色の瞳を持つ可愛らしい娘。

 もう片方はこの国に存在するはずのない、暗い紫色の髪を持つ、銀色の瞳の娘。


 暗い色は呪いの色とされている。

 この国には、明るい髪色の者しか存在しなかったからだ。

 だから暗い紫色を持つ娘はきっと呪われているのだ。

 この国で暮らしている人は、誰もがその話を信じて疑わない。


 だから私、ディアナ・ローランドは、生まれた瞬間から国王に嫌われ、城から出ることが許されなかった。

 ガラスが混ぜ込まれた食事、鋭いかけらが散りばめられたベッド、毒を入れられた飲み物。

 城の中でも、私は使用人達から忌み嫌われていた。

 誰もが虎視眈々と私の命を狙っている。


 そんな私でも、優しくしてくれる存在はいた。


「ディアナ、一緒に散歩しましょう!」

「ディアナ様、自分で良ければ、護衛しますよ」


 双子の妹ステラ・ローランドと勇者バルド・エルメス。

 この2人だけは、普通に接してくれていた。


「ありがとう。でも私といると、2人は悪く言われてしまうわ」

「そんなの、私に関係ない!私はディアナと一緒にいたいの」

「そうです。ディアナは何も悪いことしておりません。今からでも自分が国王に――」


 今にも王座に殴り込もうとするバルドに、私は止めようとした。

「――やっぱり散歩に行きましょう。いつまでも部屋にいると、気が滅入ってしまうわ」

 何とか不満そうなバルドを宥め、ステラは軽食と紅茶を入れたバケットを手にしながら、城の中庭へ向かった。


 中庭の中央に置かれているテーブルに、軽食を次々と並べる。

「さあ、ディアナ。好きなのを選んで。私のおすすめはいちごのタルトよ!」

 いちごタルトを一切れ取って、私に差し出す。

「ありがとう、ステラ。とてもかわいいわね」

 

 タルトをフォークで小さく掬い、口に運ぶ。

 上品な甘さに濃厚なクリーム、いちごの甘味もよく染み込んでいる。

 ステラ達と食事している時だけ、美味しい食事を食べられる。

 それでも、私といるところを誰かに見られてしまわないか、心の奥がハラハラする。


「バルド、あなたも座って一緒に食べよう!」

 ステラは可愛らしくバルドを見上げ、甘えるように声をかけた。

「いいえ。自分は皇女2人を守る義務がありますので」

 だが、バルドは相変わらず自分の役割に忠実である。

「もう、バルドは勇者であって、護衛ではないのよ」

 ステラは頬を膨らませ、怒ったかのように、紅茶を一気に口の中に流し込む。


 私はそんな2人のやりとりが微笑ましくて、タルトを味わいながら眺めていた。


「っく、コホッコホッコホ」

 突然、紅茶を飲み終わったステラが、激しく咳き込む。

 

「ステラ?!」

「ステラ様、大丈夫ですか!」

 私もバルドも、すぐステラに近づき、その体を支えようとした


「ッ、何、これ、苦、い……モヤモヤ、する……」

バタンと、ステラはテーブルの上に倒れ込んだ。


「バルド、どうしよう、医者を呼んでこなきゃ」

「落ち付いてくたさい、ディアナ様、自分が呼びに行きますので、ディアナ様はステラ様を――」


 遠くから人が走ってきた音がする。

 その方向を見てみると、2人の兵士が駆けつけている。


「おい、お前達ちょうといい、医者を――」

 近づいてきた兵士は、手にしている槍を私に向ける。

「ディアナ様。あなたを聖女ステラを毒殺未遂の罪で拘束します」

 隣のバルドは信じられないような表情を見せた。

 けど、私は抵抗する気力さえ起こらず、兵士達について行った。


 国王に死刑を言い渡され、私はドレスのまま、兵士に国の境界まで連れて来られた。

 

 魔族領と国を隔てる、高くて厚い壁。

 この国はかつて、魔族と戦争して、大きな損害を負った。

 どうにかして魔族の襲撃を止めるべく、かつての国王は魔族の王と“調和協定”を結んだ。

 一、お互いの領域を侵さないこと

 二、お互いの住民が向こうの領域に踏み込んでしまった場合は好きに扱っていいこと

 三、以上の内容が破られた場合、破った側の王は自身の身柄を持って償うこと。

 

 当然、魔族には人間との契約に応じる筋合いはない。

 だから、当時の国王はそう約束した。

 “この国の死刑囚はすべて、魔族に捧げよう”


 魔族は嗜虐心が強い。

 常に生物をいたぶること、鬱憤を発散している。

 だから、この国の死刑囚は、この国の平和を守るための“生贄”なのだ。


 私は大きな門の前まで来た。

 (あ、死んでやっと、私はこの国の役に立てるのね)

 この扉の向こうには、瘴気が濃く漂う、魔族棲む森がある。

 魔族に入ったら、私は魔族にいたぶられ、殺されるか、瘴気によって体を蝕まれるかの運命。


 扉は徐々に開き、やがて薄暗い森が視界に入った。

 2人の兵士は私の後ろに立つ。

 私が逃げないようにしているのだろう。

 でも、逃げる気など毛頭ない。

 私は躊躇なく、森へ足を踏み入った。


 後ろから扉が閉じられる音がした。

 それでも私は振り返らない。

 (やっと、私は死ねるのね)


 腫れ物のように扱われる日々。

 突き立てるような悪意に満ちた視線。

 自分は何のために生まれてきたのかわからない焦燥感。

 今日はこの全てから解き放たれる日。

 私の、運命の日。

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