6.王都への帰還と王太子の提案
鉱山領地の功績があまりに大きくなったため、リリアーナとゼフィールは「国家の功労者」として王都へ呼び戻されることになった。
リリアーナは、追放された時とは比べ物にならないほど立派な馬車に乗り、自信に満ちた表情で王都の門をくぐった。彼女が纏うのは、高価なドレスではなく、実用的な、しかし上質な仕立ての調査服だった。
王宮で開かれた功労者謁見の場。王太子アランは、リリアーナを見て言葉を失った。以前の、どこか怯えたような「高慢の仮面」を被ったリリアーナではなく、仕事の充実からくる清々しい笑顔と、揺るぎない自信を纏った、真に魅力的な女性が立っていたからだ。
アランは、リリアーナの功績を称え、そして、かつての過ちを公衆の前で認めた。
「リリアーナ・フォン・アーデルハイト。私の判断は誤りであった。君が辺境で成し遂げたことは、王国の歴史に残る偉業だ。私を許してほしい」
そして、彼はリリアーナに、王都での高い地位と「やり直すための婚約」を提案した。
「リリアーナ。どうか、王都に戻り、私の傍らに戻ってきてほしい。今度こそ、私は君を正しく理解し、国を支え合いたい」
会場の貴族たちは、王太子のこの提案に息をのんだ。リリアーナの「逆転勝利」のシナリオが、完成しようとしていた。
リリアーナは、かつての婚約者を見つめ、彼が発する「後悔」と「贖罪」の波動を感じ取った。彼の言葉に嘘はなかった。しかし、彼女の心は動かなかった。
リリアーナは静かに、しかしはっきりと首を横に振った。
「アラン殿下。殿下のお言葉、誠に嬉しく思います。しかし、私はもう、王太子の婚約者としてのリリアーナではありません」
そして、隣に立つゼフィールに視線を移した。ゼフィールは、リリアーナの決断を静かに見守っていた。
「殿下は、私に『王家の名誉』と『地位』を与えようとしました。しかし、ゼフィールは私に、『真の知識』と『ありのままの私』を認めてくれました。彼は、『悪役令嬢』ではない『星野葵』としての私の価値を見出してくれたのです」




