5.アランの後悔
辺境の鉱山領地が、王国一の財源となったという知らせは、王都を驚愕させた。追放され、破滅したはずの悪役令嬢が、遠く離れた地で英雄となっていたのだ。
王太子アランは、この報告に頭を抱えた。彼が婚約破棄した理由の一つは、リリアーナの家が「国益に反する」と考えたからだ。そのリリアーナが、誰よりも国益に貢献している。
アランは、リリアーナの傲慢さの裏に隠された不器用な優しさを見抜けず、ゲームのヒロインの言葉だけを信じて断罪した過去を、今更ながら後悔し始めた。
一方、ヒロインのエルヴィラは、王宮で「癒やしの力」を使い、人々を慰めていたが、彼女の力は、この辺境の「技術革新」という現実的な問題には全く役に立たなかった。
リリアーナとゼフィールは、もはや仕事のパートナー以上の関係になっていた。毎日、お互いの知識を尊重し、困難を乗り越える中で、彼らの間には確かな愛情が芽生えていた。
ある夜、調査室で、リリアーナが熱心にデータを書き込んでいるとき、ゼフィールが静かにリリアーナを見つめた。
「リリアーナ様。あなたの翠の瞳は、いつも真実を見ている。私は、あなたの知識と強さ、そして不器用な優しさに惹かれています」
リリアーナの心臓が激しく脈打った。かつての婚約者、アランの周りからは「義務」と「所有欲」の波動しか感じられなかったが、ゼフィールからは、「純粋な愛」と「尊重」の澄んだ波動が放たれていた。
「ゼフィール……。私は、あなたに公爵令嬢という地位や財産を失った女よ。それでも……?」
「地位や財産など、私にはどうでもいい。私の望みは、リリアーナという個人を、私の隣に置くことだ」
ゼフィールは、リリアーナの手を取り、そっと口付けた。その瞬間、リリアーナの「解放された幸福」の波動と、ゼフィールの「真実の愛」の波動が、一つに溶け合った。




