3.ゼフィール・グレンデルとの出会い
ある日の午後、リリアーナが山奥で特に大きな翠石の塊を掘り出し、その魔力純度のデータを解析しているときだった。彼女は突然、背後からの人の気配に気づいた。
慌てて振り返ると、一人の青年が立っていた。彼は、リリアーナと同じく土埃にまみれた地味な調査服を纏い、背中には大きなリュックを背負っていた。その瞳は、熱心な探求心に燃えており、リリアーナの手に持つ翠石を興味深げに見つめていた。
「驚いた。こんな奥地で女性が……しかも、その掘り方、まさかあなたは翠石の良質な脈を探しているのか?」
青年は、ゼフィール・グレンデルと名乗った。彼は、隣接するグレンデル辺境伯家の子息であり、領地の鉱物調査官としてこの地域に派遣されてきたのだという。
リリアーナは、自分の作業を理解してくれる人間がいたことに衝撃を受けた。
「はい。この地域の採掘技術は、翠石の存在を見逃しています。従来の採掘では不純物と見なされますが、私の解析では、これは国のエネルギーを一新する可能性を秘めています」
リリアーナは、興奮して解析結果のメモをゼフィールに見せた。ゼフィールは、その詳細で正確なデータを見て、目を見開いた。
「驚異的だ……!あなたは公爵令嬢だと聞いていたが、これほどの知識をどこで?このデータは、私の数年にわたる調査結果を遥かに超えている」
リリアーナは、ゼフィールが彼女の「リリアーナ・フォン・アーデルハイト」という肩書きではなく、「知識」と「結果」だけを純粋に評価していることに気づいた。彼の周りからは、「知的好奇心」と「誠実さ」の濁りのない澄んだ波動が放たれていた。
ゼフィールは、リリアーナの能力を全く疑わなかった。彼は、王都の噂や、彼女の過去の悪行について一切触れなかった。
「リリアーナ様。その知識と能力を眠らせるのは惜しい。私と協力してくれないか?あなたの解析能力と、私の現場経験があれば、この領地は必ず蘇る」
この「協力」という言葉、そして偏見のない評価に、リリアーナの胸は初めて熱くなった。




