心霊写真(共通)
サキらは廃墟のようなロビーを後にし、再びドアをくぐって外へと消えていった。
その背を見送るように、浴場の奥、休憩室の暗がり、ボイラー室の影――そこに、かつてビブレで働き、あるいは訪れ、そして帰らなかった四つの魂が、静かに姿を現した。
モリエが呟く。
「……取り壊しじゃないだけ、マシですかね」
愛理が問う。
「あの人、誰?」
「オーナーの娘……いや、もう本人が社長だって話。サキさんっていう」
愛理はロビーに残る彼女の余韻に目を向けた。
「……綺麗な人」
「たしかに」とモリエも頷いた。
幸枝「誰?オーナーには娘はいなかった・・・」
(後藤が一人で入ってくる)
彼女は白沢監督の助手で映画「ゴースト」のロケハンで訪れた。
後藤「はい、ここが最近話題の心霊スポットね。
(野間、ふと思いついて後藤の前に立ち、手をひらひらと動かす。しかし後藤は全く気づかない)
モリエ「マダム、ダメですよ! そんなことしたらこの人、驚くじゃないですか!……って、全然驚いてない? ああ、そうか、後藤さんにはマダムが見えてないんですね」
(モリエも後藤の横に立つ。後藤はなおもキョロキョロと辺りを見回している)
後藤「しかし……噂通りの空気ね。なんかこう、重苦しいというか……。これは確かに、心霊スポットって言われるのも納得だわ」
(愛理、モリエと野間に戻るように手を振るが、二人は面白がって無視。アカンベーをしたり、後藤の頭を撫でたりするが、後藤は気づかない)
(後藤、スマホを取り出し、愛理のいる方向にカメラを向ける。愛理、慌てて姿を隠すが、野間とモリエはスマホの前に立ちピースサイン)
(後藤、自撮りを始める)
(野間とモリエは後藤の両脇に並ぶ。モリエは肩を組み、野間は後藤の肩に首を乗せてウィンク)
(後藤、スマホの画面を確認し、固まる)
後藤「……な、なによこれ?(あたりを見回す)」
(野間とモリエ、ニヤリと笑う)
後藤「や、やだ……ヤダーーッ!」
(後藤、叫んで走り去る)
(幸枝が登場)
幸枝「今の人、どうしたの?」
モリエ「映画のロケハンだったみたいです」
野間「あんなに驚かなくてもいいのにねぇ」
モリエ「それにしても、マダム。なんでいつもカメラの前に出たがるんですか?」
野間「だって、女優ですもの。カメラを見たら、女優魂がね……むらむらっと」
モリエ「ところで幸枝さん、改めての確認なんですけど……俺たちって、何でしたっけ?」
幸枝「わかってるでしょ。……幽霊よ」
モリエ「やっぱり。いやー、時々確認しないと、つい忘れそうになるんですよ」