表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プロット  作者: 委員会
35/36

試し書き 完



映画『カサブランカ』は、誰もが「完成せずにお蔵入りになった」と思っていた作品でした。なにしろ、タイトルも決まらないまま撮影が終了し、編集が終わってからようやく『カサブランカ』という題名がついたのです。


まさかその映画がアカデミー賞を受賞し、アメリカの「国宝映画」と呼ばれるようになり、さらにワーナー・ブラザースの象徴とも言える存在になるとは、誰が想像したでしょうか。


主演のリックを演じた“ボギー”ことハンフリー・ボガートは、のちに「アメリカ映画史上最高の男優」に選ばれることになります。


一方、ヒロインのイングリッド・バーグマンは、この映画が公開されたことも、賞を取ったことも知らなかったそうです。ずいぶん時が経ってからロンドンでの再上映に招かれ、初めて自作を観たバーグマンは、「初めて観ました。いい映画ですね」と言ったといいます。冗談ではなく、本音だったのでしょう。


私自身も、あの映画はお蔵入りになったと思っていました。


夫が亡くなったあと、生まれたばかりのサキを連れて、私はニューヨークに渡りました。カリフォルニアは、当時の日系人にとっては地獄のような場所だったからです。


その間、ホリー──あの堀井にサキの世話を頼んで、私はニューヨークの映画界で脚本助手として働いていました。ホリーは『ティファニーで朝食を』のモデルで、実在する女性です。国吉が彼女の肖像を描いており、その絵のいくつかはニューヨークの美術館に所蔵されています。


ホリーは謎の多い日系女性で、私は彼女がユダヤ系のスパイだったのではないかと思っています。ただし、スパイであることがばれたら、それで終わりですが。


そんな中、兄が「アメリカは信用できない」と言って日本に戻り、銀座七丁目に「東京ジョー」という店を開いていることを知りました。ホリーも日本に行くというので、私も行くことに決めました。


実のところ、私自身も、いつ強制収容所に入れられるか分からない身でした。ナチス・ドイツと同じことをするアメリカ政府は、もう信用できないと感じていたのです。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ