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プロット  作者: 委員会
14/36

トニー谷子

「ビオレ」の壁掛け時計が、まもなく8時を告げようとしていた。


「♪8時ちょうどの~あずさ二号で~」の曲が流れる。


どこからともなく声が割り込む。


「たわし! は たわし! は あなたから旅立ちます〜!」


そこにいた野間が思わず吹き出す。


「……あんた誰?」


紫のフリルドレスをまとい、額にそろばんをバンダナのように巻いた奇怪な女が、

たわしをマイク代わりにして名乗る。


「わたくしざんすか? トニー谷の弟子だった、トニー谷子ざんす!」


続いてそろばんをポロンポロン鳴らしながら歌い出す。


「あなたのボーナスなあに〜ざんす〜? ふところ事情が気にな〜るざんす〜」


そろばんをジャラララッと回してパチン!


「……あら、200万円ざんす! 薄給ざんすね〜!」


野間がむっとしながらも笑いを堪えきれずにいると、

モリエが顔を出す。


モリエ「……あんた、トイレから出てきたと思ったらなんなの?」


トニー谷子はくるりとターンしながら投げキッス。


「ざんす芸は突如あらわれ、突如去る。それが美学ざんす!」


野間「なにそのプロ意識……ていうか、“ざんす芸”ってジャンルあるの?」


トニー谷子がそろばんを持ち直し、決めポーズ。


「芸は身を助けるざんす。そろばんは、音も出るし計算もできる便利アイテムざんす!」


そのとき――


「ボ~~~~~~ッ!」


という船の汽笛のような音が店内に鳴り響く(※店の空気清浄機の故障音である)。


トニー谷子はぴたりと直立して一礼。


「そろそろ……時間ざんすね」


そう言い残し、カウンターの後ろにスッ……と姿を消す。


野間「え、どこ行った!? この店、秘密通路あるの!?」


モリエ「……ちょっと、椅子にこれ置いてあったわ」


と差し出したのは、ピンクの紙ナプキンに走り書きされたメモ。


『また来るざんす♡ 今度はナポレオンズの弟子も連れてくるざんす』


野間「いや、連れてこないで!」


モリエ「てか、あの人、トニー谷に似てたわね……」


野間「……イヤミってキャラのモデル、トニー谷だったらしいよ」


モリエ「じゃあ、イヤミの弟子の弟子ってこと?」


野間「もう何代目かわからんけど、“ざんす”の血だけはしっかり受け継がれてる」


そして、何事もなかったように野間が歌い出す。


「♪たわし〜 は たわし〜〜 は あなたから〜〜〜」


モリエ、ぽつりとつぶやく。


「……歌詞だけは地味にクセになるのよね」



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