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記憶の回帰 〜前世からの復讐者〜  作者: 儚威
第1部:セイクリッド学院編
6/19

限界

 その日、先生は新しい授業の準備を話し終えて、僕は一人黙々と学校から寮に帰る途中だった。


 セイクリッド学院の門を出て、人通りが減ってきたところで、誰かが襲いかかってきた。


「ぐはっ...!!」

 僕はその男にいきなり腹を殴られ苦しみが身体を襲った。

 意識が飛びそうになる中、目の前にはマルコがいた。


「ほんと、弱いなー...」



「なに...するんだよ...」

 苦痛に耐えながらも、必死に声を絞り出し僕はマルコにそう問いかけた。



「は?言ったよな、力ずくでお前を学院から追い出すって...」

 マルコの目はとても冷酷で闇を抱えたような眼差しだった。


 僕は気づいた、嫌な予感がすると。

 逃げないと!と思い立ち上がり、逃げようとすると、もう一人の仲間が後ろから僕を押さえつけた。


 離れようとするも身動きが取れず、前を見るとマルコが再び殴りかかってきた。


 その一撃は腹に思いっきり直撃した。

「ゔっ!!!」

 激痛と苦しみに襲われ、息ができなくなった。


 手が解放され、僕は地面に倒れた。


「はあ、はあ...」と這いつくばりながら呼吸していると、マルコは再び僕の胸を蹴ってきた。


 僕は何が起きているのか理解できなかった。


「まだまだ、こんなもんじゃないぞ、セオン・クレスト。」

「お前がこの学院にいる限り、俺らは毎日お前を傷つける。素直に退学すればもう何もしない。」



 マルコがそう言ってきて、僕はすぐに答えた。

「言ったはずだ。僕はなにがあってもこの学院をやめない...」

 僕の決意は変わらなかった。ここまで来てやめるなんてありえない。



「そうか…、おい、お前ら3人がかりでやるぞ。」

 マルコが言うと、僕は立たされ、再び抑えられた。


「離せっ!」

「無理だ」


「よし…、いくぞ!!」

 そして、僕は2人に連続で体全体を殴られ続けた。後半は記憶がない。


 でも、3人全員が笑いながら殴ってたような気がした。


 ――


「誰かにこのことを相談しても無駄だぜ。なんの取り柄もない自由民と、ヴァルシア王国で欠かせない上級魔導具が作れるグリムウェル家の跡継ぎ、どっちが信じられるかなんて一目瞭然だ。」


 僕は意識が朦朧としていたが、聞いていた。誰に言っても無駄。そんなことは分かっている。でも怒りが沸いた。


 ただ、親がすごいだけでもこいつ自体は何も凄くないくせに…。


 僕はまた、あの時のような頭痛がしたが、こいつらから受けた暴力に比べればほとんど感じない痛みだった。



 するとマルコ達は満足した様子で「今日はこれぐらいにしといてやるか、帰るぞ」と言いながら去っていった。




 それから1時間程たち壁にもたれかかっていた僕は歩けるようになり、寮の部屋に帰ることにした。部屋に戻ると応急処置をした。こんな時回復魔法が使えたら傷もすぐ治るのにと思いながら処置をした。

 その後、軽めの食事を取り寝ることにした。



 寝る前にお母さんへの手紙を書くことにした。



 相変わらずヴァルシア王国は活気に満ちていて、セイクリッド学院には強く優れた人がたくさんいたことを書いた。

 そして

 クラスメイトたちもみんな優しくて楽しい時間を過ごせた。と書いた…。


 僕はお母さんに心配をかけたくないから、嘘を書いてしまった。

 セイクリッド学院を卒業したら、必ず謝ろうと思う。


 手紙を書きながら、村にいたことを思い出し涙がこぼれそうになった。

「辛いな…お母さんやみんなに会いたい。」



 その日は疲れてたのか、すぐ眠りについた。



 ―次の日―



 教室に行き、昨日と同じ席についた、相変わらず周囲の生徒は僕のことを避け、嫌悪感を抱くような視線を向けてきていた。



 座っているとマルコ達が前にきた。

「お前まだ居たのか学院の恥」


 黙れと言い返したかったが、めんどくさいことになりそうだったので無視をした。


「無視かよ…、調子にのんなよ!!!」


 そう言いながら僕の顔を強く殴ってきて、僕は後ろに倒れた。


「キャー!!」


「まじかよ…」


「流石にやりすぎだろ…」


 響き渡る悲鳴や、心配そうな声の周囲の生徒たちの声が聞こえる。


「うるせぇお前ら!!」

 マルコがそう言った瞬間教室は静まり返った。


「こいつらの前ではしたくないけど…、調子に乗ってるお前を分からせる為には仕方ないな。」


 マルコが僕の髪を掴んで殴りかかろうとした時。


「やめろ"!!!」

 低く威厳に満ちた声が響いた。


 マルコの手が止まった。

「なんですか?ハレス先生。」

 その声の主は先生(ハレス)であり、僕は一瞬安心したが、昨日の出来事を思い出しその安心は消え去った。



「暴力だけは許さない…!」


「なに、今更偽善者ぶってるんですか?昨日あれだけのことがあって何もしなかった先生が『暴力だけは』って都合が良すぎますよ。」


「力にはいろいろな使い方があるが、弱いものをいじめるために使うのは間違ってる…」

「それを見て見ぬふりをしたら、俺の人生を否定したことになるんだ!!」


「ハハッ…!確かに、良く考えれば先生は関係ないですね、これは僕とセオンの問題。」


「わかりました。先生が見て見ぬふりできないなら、見れなかったら、問題ないですよね?」


「できないとは言わせませんよ?昨日、約束したんですから、邪魔しないって。」


 先生(ハレス)の顔はとても葛藤している表情だった。

 僕がこれから学院で生活していくためには先生の力が必要だった、でも期待するだけ無駄だった。



「ああ、わかった…。」


 その一言で僕の期待は打ち砕かれた。



「ほんと、相変わらずだね、セオン君は…」

 エリックが高みの見物をしながら言った。

「人はそう簡単に変われないでしょ。」

 ソフィアが返答した。


「ソフィアは気づいてる?」

「気づいてるって、体にある傷のこと?」


「そう、服で隠してるつもりみたいだけど、魔力の流れでバレバレ、体中アザだらけだ。」

「マルコ達にやられたのね。、」


「なんかするつもり?」

「私には何もできない…、私が弱いから。」


「いや、それが正解だよ。セオン君の目にはまだ希望ひかりがある。諦めてないはずだよ。」

「自分の力だけで解決しないと、この先、1人で生きていけないからね。」


 ―


「じゃあな」

 マルコは僕から離れて行き、席についた。


「全員揃ったな、では授業を始める。」

 先生(ハレス)が授業を始めだし、魔法についての勉強した。

 でも僕はこれからのことへの不安が押し寄せて内容が全く頭に入ってこなかった。



 昼になり、僕は初めて食堂に向かった。

 そこは豊富な食材とメニューがあり、僕の落ちこんだ心を少しだけ元気づけてくれた。


 出来上がった料理をお盆に載せ、空いている席に座った。


「おいしそうだな、村ではこんなの食べれなかったからな…」

「いただきます。」

 この時だけは、嫌なことを忘れられる。

 ご飯を口に運び、食べようとした瞬間。


「なに、してんだよ。」

 後ろから声がした、

 頭から少し暖かいスープのようなものがバシャッとかけられた。

 気づけば頭はビショビショだった。

 もちろん食べようとしていた、ご飯も。


「ヒャハハッ!見てくださいよマルコさん、こいつの表情!」


「勝手に食堂使いやがって、お前の顔見ると、食欲無くすんだよ。今すぐ消えてくれ。」


「さすがです、マルコさん!」


 そこにはマルコとその手下の2人がいた。

 周囲の人達はみんな僕のことを変な目で見てた。

 僕は今すぐ消え去りたかった。

 だからすぐに立ち上がり、教室に戻ろうと走り去った。



 教室に戻ると…

「あれ…どこだ、、、」

 最初に座ってた席に戻ると、授業で使う教科書がなくなっていた。


「あ〜、これか?」

 マルコ達も教室に戻ってきていた。

 その手には炎によって焼かれた僕の教科書があった。

 教科書は焼け焦げて今にも灰になりそうな勢いだった。


「炎魔法の練習で何か燃やしたくてよ、まあ結局なんにも役にたたなかったから返すわ」


 マルコはそう言って焼き焦げた教科書を僕の方に投げつけた。


「ふざけるな…」

 僕が我慢してた、感情が溢れ出した。


「ふざけるなよ!!僕はお前らなんかより、ずっと頑張ってきたんだ!家にある本でたくさん勉強して、毎日体力をつけるために運動もした!それも全部魔法を使えるようになるためなんだ!!僕がお前らに何をしたっていうんだ!!!」


 思ってたことを全て言った。



「ああ、お前は別に何もしてねぇ。」

「ただお前のその顔が気に食わないんだ。特にその目、いかにも元気いっぱいの少年が持ってそうな目が俺は大っ嫌いなんだよ…」


 理由は「顔」。

 僕は呆然とした。

 こんな意味のわからない理由で人生を狂わされているという事実を知り心が折れそうだった。


 「でも良く考えてみろ、お前が学院をやめればもう何もしないって言ってるんだ。」


 え、ああ、そうか。

 学院をやめたら、この現実から抜け出せる。

 でも、村は何も変わらない。

 誰も助けてくれない。


 無理だろ、やめれないだろ……。


 決めたろ、村を出る日、みんな僕のことを期待した眼差しで見て、笑顔で見送ってくれて、それが僕は嬉しくて、僕がやってあげないとって。


「みんなを裏切れない……」


「僕はやめるわけにはいかないんだ!!」


「へー、そうか……。おい、お前ら、近くに先生いるか?」


「見たところいません。」


 手下の一人がマルコにそう言うと、マルコは僕の前に走り込んできて、腹を殴ってきた。


「ぐはっ……!!」


 苦しみながらも休む暇もなく、何度も殴られ続けた。床には血が滴る。


 僕は立っていられなくなり、床に倒れた。帰ってきた生徒達は、恐怖した顔でこちらを見つめている。


 痛みが全身に広がり、意識が遠のきそうになる。


「流石にやばいだろ…、もうすぐで授業始まるぞ。」

「先生でもこれは放っておけないだろ…」


 それを聞いたマルコは手下のレウシに指示を出した。


「おい、お前"癒し(ヒール) 使えたよな?少しだけかけろ。」

「は、はいわかりました…。」

 その光景を見た周囲の生徒たちは驚いた。

「あいつ、癒し(ヒール) 使えるのか…」

「優遇されるんだろうな、羨ましいぜ。」


「マルコさん、終わりました。」

 僕は痛みが少し和らぎ、意識が戻った。


「セオン・クレスト、お前がこの学院をやめない限り毎日この地獄が続くと思え。どうせ退学するんだ、早くした方が時間の無駄にならない…」


 マルコの言葉に何も言い返せなかった。

 マルコの言う通り辞めたら楽になると思ったから…。

 こんなのを2年間も耐えられない…。


 でも村はどうなる??何が正解なんだ??

 僕はどうしたらいいんだ?…

 わからなかった。

 自分にとって最善の選択が何なのかを。


 結局、僕は決断出来ないまま、学院に残ったままでいた。


 もちろん、マルコ達からの暴力は終わらなかった。

 先生達が居ないところで殴られ続け、あまりにも血がでていたり、意識がなくなったりしたら、癒し(ヒール)をかけられ、何事もなかったように終わる。


 ある日には、指を1本ずつ折って癒し(ヒール)するというのを繰り返し、退学しろと迫られる日もあった。



 多分、僕はその時、精神がおかしくなっていたんだろう。



 どちらを選んでも待っているのは地獄。


  退学しない場合

【マルコ達から毎日痛くて苦しい暴力受け続ける】


   退学した場合

【村にいつ魔物が来るかわからず怯え続ける毎日】



 にねんかん、2年間耐えれば僕の勝ち…、いや、その前に魔法が使えるようになれば…


 毎日、そんなことをベッドの上で頭を抱えながら考える日々。


 ふと、手に違和感があり、見てみた。

 そこには僕の抜けた髪の毛がたくさん着いていた。



 とっくに限界だったんだ、頭では大丈夫、耐えろ、我慢しろって言い聞かせてたけど、体が拒否してる…。


 いいよね?もう、頑張ったよね…?


 〔少しでも、辛いと思ったら帰ってきなさい…〕


 お母さん、そう言ってくれたもんね…。?

 僕は涙がこぼれ落ちながら、思い出した。



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