身分と嫉妬
「先生、"邪魔"しないでくださいよ…?」
マルコは先生に言った。
先生はマルコの顔を見た瞬間に気づいた。
(あいつ、何か企んでいる...でも、俺には止めることができない、俺の教師としての人生が終われば、嫁と子ども達を養えないんだ…すまない、すまない...セオン・クレスト…...。)
「さすがマルコさんー!やっぱり頭いいですね〜」
2人の手下がおだてるように言った。
「まあ、全てはあいつを地獄に陥れるためだからな…」
「なぁ、お前らどこの国にも属さない人間で魔法が使えない奴がこの名誉あるセイクリッド学院にいるのはおかしいと思わないか、でていってほしいと思わないか〜…?」
マルコがクラス全体に向けて発言すると、誰も反応せず、目を合わせないようにしてた。
するとマルコは前に座っていた男の生徒に近づき
「思うよな…?」と質問した。
その生徒は怯えた表情で「はい…」と言った。
あんな風に詰められて聞かれたら、「はい」 としか言えない、そんなことはわかっている。
それでも僕は悲しくなった。
「そうだよな!思うよな!」
マルコは次々に1人ずつ聞いて言った。
「でていってほしいと思うか?」
「はい、」
「思うか?」
「はい…」
「もう、我慢できない…!」
1番後ろにいた女の生徒が立とした瞬間、隣の男の生徒が止めた。
「君ひとりがあいつに反抗したところで何も変わらないよ。」
「だからって将来この国を守り、平和にしていく人間として、こんな状況が許されていいわけが無いでしょ!」
「はぁ〜、君、貴族だろ?」
「それがなによ?」
「あの子は自由民でヴァルシア王国の人間じゃない、退学しても大きな影響はない、でも君は違う、あいつを敵に回せば君は学院を退学させられ、親に迷惑がかかり、この国で生きづらくなる。」
「…っ!!」
「じゃあ、、どうすれば…」
「君は全て正義じゃないとダメと思ってるみたいだね、目を見れば分かる…」
「ええそうよ、全て正義であればこの世界は平和になるの!」
「そういう人ほど損をする世界なんだ…!」
女はその言葉に驚きと怒りが湧いた。
「いいえ、それは違うわ...!」
「いや、今は合ってる。人間は常により良いものを求める生き物だ.....だから、奪い合って、殺し合う.....。この強欲な考えがある限り、どこかで闇を持つことがこの世界で上手く生きていくコツなんだ。」
「損をしたくないなら、大人しくしてるんだ…」
「...うっ…...!」
その言葉に女は葛藤しながらも理解し、席に座った。
「君の名前は?」
「◆ソフィア・ムーンハートよ」
「僕は■エリック・フロストフォード、平民だけど上手に生きていく者どうし仲良くしていこうよ。」
その言葉にソフィアは反応しなかった。
――
「ソフィアさんもうすぐ、あいつが俺たちに聞いてくるよ、どう返せばいいか、わかるよね…?」
ソフィアはまた、反応がない。
マルコはまずエリックの前にきた
「あんな奴はでていってほしいと思うよな?」
「はい、思います。」
「ははっ、そうだよな!」
「よし、お前で最後だな、」
「自由民で魔法が使えないあんな奴にはでていってもらいたいよな!?」
ソフィアにはしばらく沈黙が続いた、そしてマルコは不思議に思った。
「うん?、どうしたんだよ、」
そしてついにソフィアが口を開いた
「、、、は、い…。」
それを聞いたマルコは嬉しそうな笑い声をあげた。
「クク…ハーっハッハッハ!!!おい!セオン・クレスト、俺含めここのクラスみんなお前に学院をでていってもらいたいらしいぜ!みんなの願いなんだでてってくれよ!!」
先生は悔しそうな表情をした。
僕はどうすればいいかわからなかった。
みんなのため?、僕が学院を辞めることがみんなの為になるの?なら、いっそ、、やめても…
そう思った瞬間に村にいたことを思い出す。
お母さんを幸せにすると約束したこと
村を安全にすると約束したこと
学院で待ってると約束したこと。
それを思い出して、僕は勇気を振り絞って言った。
「ゃめません…」
「はぁ?小さくて聞こえねぇよ。」
「僕はなにがあってもこの学院をやめません!!やめられない理由があるんです!!…」
「!!?」
「えっ…!?」
「へぇー…」
「なに、言ってるんだ…?」
先生、ソフィア、エリック、マルコを含め、全員驚いた表情を浮かべた。
「お、お前…マルコさんに向かってどんな口の利き方してんだ!!」
「強がるんじゃねーよ、雑魚が!」
マルコの連れがセオンに怒った。
「黙れ、ルキエ!!レウシ!!」
「すッ、、すいません!!」
「この学院に居たところで、もう何処にもお前の居場所はないんだぞ?」
「居場所なんて、なくてもいいです。ただ、魔法が使えるようになって、強くなれるんだったら。僕はずっと孤独でもかわない。」
僕にはお母さんと村のみんなが居るから。
それだけで充分なんだ。
「はぁ〜…そうか、なら、仕方ねぇな…」
マルコにしばらく沈黙が続いた。
「後悔するなよ?俺はお前を力ずくで退学させなきゃいけなくなった…。」
「!!?」
その時マルコから殺気を感じた
「フン、まぁ今日はこのくらいにしといてやるよ。」
マルコは僕の肩を叩いて後ろ辺りの席に座った。
「セオンお前も席につけ。」
先生からそう言われ、前辺りの席に座った。
すると、周りに居た生徒たちは、セオンと一定の間隔を開けて、毛嫌うかのように、避けていた。
でもそんなことどうでも良かった。
強くなって、夢を叶えて、みんなを喜ばせてあげたい、早く会いたい。
その思いしか僕にはなかった。
――
「ねぇ、マルコ君〜」
エリックが少し前に座っているマルコに声をかけた。
「なんだ?」
「セオン君を退学させようとする、大きな理由はどっちなの?」
「魔法が使えないのに居るからか、自由民という身分だからか」
「しょうもねぇ質問だな、まあ、、どっちもだ」
マルコがそう言うとエリックはとても小さい声で
「しょうもないのはお前だろ…」
と言った。
隣にいて聞こえたソフィアは怒った
「聞こえちゃうでしょ…!」
「それに、あんたがどうこう言う資格ないでしょ、「はい」って答えたんだから…」
「まぁ、そうだね〜」
セオン君が魔法を使えてさえいればこんなことにはなっていなかっただろう、あの魔力量からして、初級魔法でも中級魔法以上の威力になるはずだ。
それを使えることさえできたら、周りからの信用でマルコも認めざるを得なくなる。
それはマルコも気づいているだろう。
マルコは自由民という身分が嫌い
魔力の流れからして、マルコは魔法の扱いが上手だが魔力量が少ない
だからセオン君の魔力量が多いことへの嫉妬。
ってとこか、
理由がわかったところで僕には何もできない。
これは
【魔法を使えるようになるのが先】か
【セオン君を退学させるのが先】かの
勝負だ