想定外
「無駄な時間だったな、さらばだ……!」
魔族が冷笑を浮かべ、鋭い蔓を俺に向けてトドメをさそうとしている。
「ハハッ……」
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【スキル:魔法奪取】
■使用:「『水の盾』」
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蔓が刺さる寸前、俺の前には巨大な魔力を帯びた水の盾が出現し、攻撃を防いだ。魔力が凝縮された盾は鉄壁の防御力を誇り、魔族の一撃を完全に受け止めた。
「なに…!?」
(こいつ、防御魔法を持っていたのか。なら、なぜ今まで使わなかった。これほどの防御魔法……いとも簡単に、私の蔓を受け止めてヒビすら入っていない……)
「フフフ……死ぬのが怖くなったか?だが、もう遅い。今更足掻いたところで、そんな体じゃろくに動くことすらできない!」
魔族は狂気に満ちた顔で俺を見下ろしていた。しかし、俺はただ俯いていた。それは決して諦めではない。覚悟を決めていたのだ。この上位魔族を殺す覚悟を。
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【スキル:魔法奪取】
■使用:『癒し』
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俺は水の盾を消し、ヒールを使った。
足元から温かい光が広がり、傷が瞬く間に癒えていく。
「ほう、回復魔法まで持っていたか。だが、盾がない状況でどうやって私の攻撃を受け止める…!」
魔族は鋭い蔓を再び俺に向けて勢いよく放ってきた。しかし、俺はその場で冷静に、ゆっくりと右手を上げて魔族に向けて放った。
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【魔法奪取】
『【悪魔の炎】』
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俺の手から放たれた紫黒色の炎は、一瞬で蔓を燃やし尽くし、さらに魔族に向かって勢いよく燃え上がっていった。
「なんだそれは…!?」
驚愕の表情を浮かべる魔族に向かって、俺は冷徹に告げた。
「これで終わりだ。」
(なんだ、この炎はさっきのとは明らかに違う……触れない方がよさそうだ。)
「蔓の壁」
魔族の前に黒い魔力を纏った大きな蔓の壁が現れた。
悪魔の炎はその壁に激しい衝撃音を立てながら当たったが、勢いは止まらず、その壁を燃え尽くして再び魔族に向かっていった。魔族の顔には再び驚愕の表情が浮かんだ。
「なかなか、やるじゃないか!」
(上位魔族の私があんなやつの放った炎を避けるわけにはいかない……)
「クッ…『守護蔓』!私を守れ!!」
蔓でできたゴーレムが2体地面から這い上がり、炎を受け止めようとしたが、それも一瞬で燃え尽き、炎の威力は止まらない。
「まずい、このままだと……!チッ……やむを得ん…」
炎が当たる寸前、魔族は驚異的な身体能力で横に飛び避けた。
「貴様なんかに魔力は使いたくないのでな、仕方なく避けることにしたのだ、決して危なかったわけではない。」
俺は魔族を鋭く睨みつける。
「手……大丈夫なのか?」
「なにを言っている…?」
魔族が自分の左手を確認すると、指の先に紫黒色の炎が燃えていた。
「少し炎にかすっていたか。痛くも痒くもないから気づかなかったな。」
そう言いながら、魔族は自身の魔力を手に纏い、消そうとするが、一向に消える気配がないことに少し不思議そうな表情を浮かべた。
「なぜだ、なぜ消えない?」
(私の魔力だぞ、この程度の炎、一瞬で消せるだろう。)
何度も消そうとする魔族だが、指先がどんどんボロボロになっていく。
俺は確信した。
【俺の勝ちだ……】
「待て、一体何が起こっているのだ…!」
炎はどんどん勢いを増し、手を覆い燃やしていく。そして、その炎は腕全体を飲み込もうとしていた。
「なんなのだこれは!クソっー…!」
その時、魔族が予想外の行動に出た。
[グサッ────]
俺の目の前で、魔族が蔓の剣で自らの腕を切り落とす様子が映った。
「なに!?」
「グゥアァ…!!」
地面に転がる切り離された腕は、瞬く間に灰に変わっていく。
「ハハッ…切り離さなければ、今頃どうなっていたかなぁ?貴様もそう思うだろう?」
(炎に触れた部位を切り離せば防げるのか…!完全に想定外だ…!!)
「炎が消えないと気づいた時、正直に言うと、少し焦った。だが、切ればどうってことのない魔法だ。」
「特に回復魔法持ちには……」
「まさか!?」
『呪縛の癒し(カースヒーリング)』
魔族は不気味な笑みを浮かべながら、回復魔法を使う。
「さあ、再生するがよい、私の腕!」
「させるか!『悪魔の炎』!」
(なんだ?さっきより威力が落ちているような…)
「ハハッ!同時に複数の魔法が使える私にとって、その程度の威力なら問題ない!
『蔓の壁』『守護蔓』!!」
魔族はヒールしながら防御魔法を使い悪魔の炎の威力はどんどん落ちていき、消えていった。
「ん?まだ再生しないのか、私の腕は!!」
「上位魔族の私が使う回復魔法だぞ!さっさと再生しろ!!」
魔族の表情は苛立ちに満ちていた。
中途半端なところで終わってしまい申し訳ございません。はやく自分が執筆したいところまでいきたいなと思っていますが、忙しくてなかなか進められないのが悲しいです。
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