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記憶の回帰 〜前世からの復讐者〜  作者: 儚威
第1部:セイクリッド学院編
16/20

自信ー遭遇ー

「おいおい、あいつ、いつの間にあんなに魔法使えるようになってんだよ……」


「魔法が使えないマルコのオモチャじゃなかったのかよ……」


 周囲の視線が俺に集まり、様々な声が飛び交う。


「不正したんじゃね?」


「不気味だわー……」


 事実無根の中傷や心無い言葉が次々と聞こえてくる。


 黙れ、黙れ……


 ・・・


「すごいな、セオン君!」


「まさか、ここまで成長していたとはね」


 その声に振り向くと、そこにはエリックとソフィアがいた。


「うん、ありがとう……」


「え?セオン君、なんかテンション低くない?10点なのに」


「ちょっと、エリック!ここはそっとしておくのが普通でしょ!」


 この学院で信頼できる友人は、この二人だけかもしれない……


「セオン。」


 俺がエリックとソフィアと話していると、どこかで聞いたことのある声が背後から聞こえてきた。



 そう、またしても、気づかない内に背後に立っていたのだ。


 リンが——


「セオン、やっぱりボクの目は間違ってなかったよ……」


「久しぶり。確か最後に話したのは2週間前くらいか」


「うん、そうだね。素直にボクは嬉しいよ。セオンが選抜戦に出てくれることが」


「え……?」


「え、違うのかい?ボクさっき、お偉いさんから[君は選抜戦確定だ]って聞いたから、てっきりセオンも……」


 なんだよ、それ。裏で推薦でもされてたのか……


「あー、多分、俺は魔力を使って大きくしただけだから……」


 俺がリンに言い放そうとした瞬間、男の声が被せてきた。

「セオン・クレスト、君も選抜戦は確定だ」


 振り向くと、そこにはスリムだがシワの多い男性が立っていた。その言葉に俺は戸惑いを隠せなかった。


「えっと、言っている意味が……」


「10点を取った者は成績に関係なく選抜戦に出てもらうことが会議で決まった」


「本当ですか!?ってことは、エリックも……」


 俺がエリックの方を見ると、笑顔で手を振っていた。

 そして、隣ではソフィアが少し悲しげな表情を浮かべている。


「あの、この場合、俺は成績上位者4人の中に入るんですか?」


「ああ、そういう決まりになった。」


 つまり、俺とエリックで成績上位者の枠はあと2人……


「10点を取った者は君を含めて4名。約1ヶ月後の【ライトサイド候補選抜戦】、いい舞台にしてくれ」


「はい、必ずライトサイド候補生になります」


「楽しみにしているよ、セオン・クレスト君」


 その人は微笑みながら歩いていった。


「セオン」


「どうした、リン」


「1ヶ月後、全力で戦おう」


「ああ」

 俺の返事を聞くと、リンも微笑み背中を見せて歩いていった。


 いきなり過ぎて、あまり、整理が追いつかない。


 もう、魔物討伐や模擬戦をしなくても成績上位者確定なんだよな。


 素直に嬉しいし、有難い。


 残りの1ヶ月、自分のペースで強くなっていける。


 しばらく考えたあと、俺はあることを思いついた。



 実践の経験も大事だよな。


 次の休みの日でも、遠くの森に行って魔物でも倒しに行くか……。


 自分の力が魔物に通用するのか

 そして、あれ以降使っていない、【魔法奪取(マジックスティール)】についても……



 俺は選抜戦に向けて、全力で準備を進めることにした。



 ーーーそれから数日後―――


 俺は休みの日を使って、ヴァルシア王国の端にある、バルスケの森に向かった。


 その森は魔物が多く、冒険者が魔物討伐で報酬を得るためによく訪れる場所だ。

 何かあっても冒険者に助けてもらえるだろうから心配はない。


 エリックやソフィアには言っていない。


 仮にも選抜戦で戦う仲だからという理由もあるが、本当の理由は自分のスキルを試すためでもある。


 俺は魔法の力を手に入れてからまだ日が浅い。

魔法奪取マジックスティール】というスキルの可能性を、誰よりも自分自身が知る必要がある。


 バルスケの森は広大で、薄暗い木々が鬱蒼と茂っていて、風の音が静けさを際立たせている。


「よし、行くか。」


 俺は森の奥深くへと足を踏み入れた。

 闇に潜む魔物たちに、自分の実力を試す舞台が整っている。


「来るなら来い……」


 心の中でそう呟きながら、俺は歩きはじめた。

 初めての戦いが待っている。

 実力を証明するために、ここに来たんだ……。



 選抜戦で勝つために……

 過去の自分を乗り越えるために……!


 ―――


 しばらく歩き、起伏が激しく、湿地のある場所まで来た。



 周りには人1人もいない。


 だが、魔物は居る。

 俺は魔力を感じて気づいていた。


「ウゥオーーー!!!!」


 茂みの中から姿を現したのは、オークだった。

 大きな体格に粗野な顔つき。そして、その背後にはさらに2体のオークがいる。


「いきなりオークかよ。どうせならゴブリンとかが良かったんだが、まぁ、焼いたら一緒か……」


「ウォオオオー!!!」


 オークたちは雄叫びを上げ、俺に向かって走ってくる。近接戦闘が得意なオークには、距離を保ちながら魔法を使うのが得策だ。


「『火炎の球(ファイアボール)』!」


 俺は走ってくる3体のオークに向かって火炎の球(ファイアボール)を放った。


「ヴゥグア!」


 前方を走っていた1体のオークが火炎の球に直撃し、ボロボロになって倒れ込む。

 残りの2体のオークは動きを止め、俺を見て恐怖におののいていた。


「どうした……早く来いよ……」


 俺が挑発するように言うと、2体のオークは顔を険しくさせ、再び突進してきた。



「"ウァアャ"ーー!!!」


 俺は冷静に構え、次の魔法の準備に入る。オークが接近してくるのを待ちながら、心の中で力を高めていく。


 知能が低くて助かった。


「これで終わりだ、火炎の嵐(ファイアストーム)!!」



 強力な炎の嵐が俺の前に広がり、突進してきた、オーク達を包み込む。

 オークたちは燃え上がる炎の中で悲鳴をあげている。


「"ウグァーー"!!!!!!」


 やがて、炎が消えた後には、焦げたオークの残骸だけが残った。


「このままにしておくのもあれだし、火葬するか……」


 ────────────────────

  【スキル:魔法奪取(マジックスティール)



  ■―奪取(スティール)リスト―

  ・ 悪魔の炎(デビルファイア)

  ・ 炎の矢(フレイムスピア)

  ・ 癒し(ヒール)

  ・水の盾(ウォーターシールド)


  ■使用:悪魔の炎(デビルファイア)


 ────────────────────



 俺は残骸3体のオークをスキルを使って悪魔の炎で焼き、灰にした。


「やっぱりそうか……」


 魔物を倒して気づいたことがある。俺のスキル、

魔法奪取マジックスティール】は魔物からは魔法を奪取できないということだ。

それもそのはずだ。

 魔物は名前のある魔法を使わないから。


 ──────────────────────


  【スキル:魔法奪取マジックスティール


 自身が殺した相手からランダムで1つ魔法を奪い取る。


 ──────────────────────


 つまり、「殺した相手」というのは、人間はもちろん、魔族なら魔法を奪取できるのだろう。


 そして、もうひとつは【魔法奪取マジックスティール】の魔法を一度に2つは使えないこと。

【使用:】のところをどうやっても1つのままだ。


 だが、どうしても分からないことがある。なぜ、奪取してないのに、初めから奪取スティールリストに【悪魔の炎(デビルファイア)】があったのかということだ。


 まあ、分からないことをいくら考えても仕方ない。考えるのはやめよう。

 結局スキルを使うわけにはいかないから、俺自身の魔法で戦う必要がある。


「まあ、とにかく初めての実戦でオークを倒せたのは上出来だろ……」


 俺は一息ついて、達成感を感じていた。確実に力がついている実感がある。


「さて、次はどんな魔物が現れるか……」



 俺は再び森の奥へと足を進め、次々と魔物と遭遇し、戦った。


 時には数多のゴブリンと遭遇し、


火炎の球(ファイアボール)!」


 時には少しでも喰らうと死に至る毒を持つ巨大な蜘蛛と遭遇し、


火炎の嵐(ファイアストーム)!」


 俺はこの森でいろんな魔物を自身の魔力量と訓練した魔法の精度、頭の知恵を駆使して何とか倒していった。

 そして、最後には『悪魔の炎(デビルファイア)』で燃やし尽くし、灰にする。

 これを繰り返すことで、確実に自分の戦闘技術が上がっていることに気づいた。


「もう、こんな時間か……思った以上に良い訓練だった。」


「行ける日は毎日行くとするか……」



 ――――



 俺はそれから、休みの日は毎日その森へ行き、魔物を倒し、経験を積んでいった。


「休みの日はどこに行ってるんだい?」

 エリックが不思議そうに俺に聞いてくるが、


「散歩とか、街の探索に……」


 と言って誤魔化している。



 そして、今日も俺はバルスケの森の奥まで足を運んでいた。


『シェーー!!』


「また、ヴェノムスパイダーか……」


 こいつは動きが素早く、糸を張って攻撃してくるから厄介だ。さっさと片付けるか……今日はいつもより多めに魔力を使って……


火炎の嵐(ファイアストーム)!!!」


 炎の嵐が全方位に広がり、ヴェノムスパイダーの糸を焼き尽くす。糸が燃え、地面に落ちたヴェノムスパイダーが悲鳴を上げる。


「シェァーー!」


火炎の球(ファイアボール)…!!」


 俺は鋭い動きで飛びかかるヴェノムスパイダーをかわし、その落ちた瞬間を狙って火炎の球(ファイアボール)を放った。燃え盛る炎の球は正確に命中し、ヴェノムスパイダーは焼き尽くされた。


「よし、いつも通り『悪魔の炎(デビルファイア)』」


 俺は戦闘の中で負った小さな傷を確認し、次のスキルを発動した。


「少し、傷を負ってしまったな。」


  ───────────────

  奪取スティールリスト


  使用:『癒し(ヒール)

  ───────────────


 俺はレウシを殺して手に入れた回復魔法『癒し(ヒール)』を持っていたが、使う機会がなく、精度も未熟だった。しかし、魔物との戦いを通じて、この癒し(ヒール)もほぼ完璧に使いこなせるようになった。

 ロザリナ先生には及ばないが、それでも実戦で十分役に立つ。


 俺は両手を光らせ、魔力を集中させた。負った傷口に手をかざすと、淡い光が傷を包み込み、瞬く間に傷が治っていく。普通の人なら、これほどの魔法を使えば魔力切れを起こすだろうが、俺はその心配がなかった。俺の魔力は常人をはるかに超えている。


「完璧だな……」


 俺は一息つき、再び森の中へと歩きだした。


――


 魔物との戦いには随分と慣れてきたな。


 もうすぐ選抜戦だし、ここに来るのも今日で最後にしておこう。

 訓練所で仕上げの練習でもするか。


 俺はこれまでの戦闘を思い返した。

 やれることはやった。何度も戦い、確かな自信がついた。

 それも魔物たちのおかげだな……

  ・

  ・

  ・


  —その瞬間、何者かの強力な魔力を近くで感じた—



「なんだ…!?この魔力は!!?」


  ・

  ・

  ・


『フフフ……なるほど。ここ最近、私が飼い慣らしていた魔物たちが跡形もなく消えていると思ったら……』



「!!!?」


  ◆◇◆


『まさか、一人の人間がこれほどの惨状を引き起こしていたとは……面白い。たが……

  【次は貴様が死ぬ番だ】……』


  ◇◆◇


 視線の先には圧倒的な魔力を放つ恐怖の存在が立っていた。


 人型で、燃えるような赤い髪が目立ち、こめかみからは2本の鋭い角が突き出ている。

 冷酷な笑みを浮かべていて、視線はまるで獲物を見つけた捕食者のようだ。



 この圧倒的な威圧感に、つい怯えてしまいそうになる。


 


  間違いない、「魔族・・」だ……






ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


戦闘シーンが少なく、物足りなさを感じていた読者の方も多かったかもしれませんが、これからは本格的な戦いが始まります。選抜戦を前に、セオンと魔族の戦いが待っていますので、期待していてください!


もし気に入っていただけましたら

【ブックマークと★評価】をしていただけると、とても励みになり、執筆のモチベーションにもなります。

これからもよろしくお願いします!


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