証明
「では、打ってくだ……」
試験管が開始の合図を言おうとした瞬間、リンが手を挙げて止めた。
「あの、攻撃方法はなんでもいいんですよね?」
「え、はい。範囲から出ず、自分の魔法なら。」
「わかりました。なら、私は打ちません。」
試験管と他の生徒たちが驚いてざわめき始める。
「斬ります。」
「え……?」 試験管が不思議な表情を浮かべた。
隣に立っていたソフィアも戸惑う。
(斬る…?的まで30メートルは離れているのよ……?)
「えっと、とりあえず、打ってください!」
試験管の指示でリン以外のソフィアを含めた3人が魔法を放った。
「日光撃!」
「水流波!」
「花の破裂!」
ソフィア以外の者は的に当たるものの、ほとんどダメージがなかった。
しかし、ソフィアの放った魔法は的の近くで花が破裂し、かなりのダメージを与えた。
「リンさん、準備はいいですか……?」
試験管が恐る恐る尋ねた。
だが、リンは返答せず、目を閉じて深呼吸をしていた。
「ハァー、フゥー、ハァー……フッ……!」
リンが深呼吸をやめた途端、周囲の空気が静まり、彼女の魔力が溢れ出した。
そして、腰に下げていた剣を抜き、魔力を込めた。
「はぁー……『月光斬』!!」
リンは剣を一閃し、月のように光る斬撃が的に向かって放たれた。その斬撃は的を真っ二つに切り裂いた。
全員が驚きの表情を浮かべる中、リンは冷静に剣を鞘に収めた。
「すごい……!」
ソフィアが思わず呟いた。
「これが……リンさんの実力……」
試験管も感嘆の声を漏らした。
俺も、驚きを隠せていなかった。
(リンは剣技に特化しているのか、でもまさか、ここまで強いとは……想定外だな……)
「あの、点数は…?」
リンが試験管に尋ねた。
「あー!す、すみません…!」
「モリーさん、5点、ユリアさん、6点、
ソフィアさん、8点…!」
その場にいた、全員がソフィアに視線を向ける。
それもそうだろう、なぜなら、最高得点をだしたのだから。
「あれが、8点なら……」
ソフィアへの注目もすぐに消える……
「リンさん、10点…!!」
「まじかよ……」
「的を壊さないと10点貰えないってことか……」
「あいつは何者なんだよ……。」
ざわめきが多いなか、ソフィアは気落ちした様子だった。
初めに声をかけたのはエリックだった。
「いや〜、すごいじゃないか、ソフィア!」
俺もエリックに続くように言った。
「8点なら、充分だ……」
「そうね、まだ、これで決まるってわけじゃない…」
「うんうん、そうだよ〜!」
エリックは明るい表情で返した。
「次、紅、ホラム・〜」
「蒼、「グラディス・エバフォール」
「翠、エリック・フロストフォード。白、〜……」
エリックは自分の名前を呼ばれ反応した。
「おっと、やっと僕の番か……」
「頑張りなさいよ」
「言われなくても頑張るよ」
―――
「打ってください!」
「真空弾」
グラディス:「『暗黒弾』」
エリック:「『氷刄の舞』」
「火炎花」
―――
4人が一斉に魔法を使うなか、グラディスとエリックの魔法だけ他2人とは比べ物にならいないほど卓越していた……
(エリックの魔法は何気に初めて見たけど、氷魔法であんなに強かったのか……。)
的のあたりは煙や、氷の冷気で充満していた。
的が見え出すと、エリックとグラディスの的はぼろぼろで今にも崩れそうになっていた。
「エリックさん、グラディスさん、10点……!」
「おお、やったね……」
エリックが嬉しそうにしていると、隣に立っていたグラディスの様子が変だった……
「はあー、だるいな〜…、なんで俺と同じ番で10点出すのかな?俺の目立たさが薄れるだろ〜?」
グラディスはイラつきながら、エリックにそういった。
「えっと、そんなの知らないよ、順番は決まってるんだから。」
エリックは笑顔で答えた。
「チッ、あんなやけくそ氷魔法で10点取れて良かったな……」
「いやいや!、君こそあんな、ブレブレ闇魔法で10点取れて良かったね〜!」
「なんだと……!?」
「僕は、君なんかよりずっと、闇が濃く、全てを飲み込んでしまう、闇魔法使いを知ってるからね……」
「はっ!そんなやつが居るなら、いつか会ってみたいものだ……」
グラディスは歩きだし去っていった。
(いつか、会えるかもしれないね……)
「やるじゃない、エリック」
「おっ!ありがとう、ソフィア」
「お前がここまで強かったとはな……」
「セオン君もありがとう、でも、君の魔力量に比べたら、僕なんてまだまだだよ……」
「そろそろセオン君の番なんじゃないかい?」
「ああ、そうだな……」
「次は、紅、トハナ・〜、蒼、ヒタメ・〜」
「翠、「セオン・クレスト」
「白、デネシ・〜」
(いよいよ、俺の番か)
「頑張ってね〜!」
――
——魔法が使えるようになって、2週間。まだ完璧ではないが、魔法が体に染み込んでくる感覚がある——
「では、打ってください」
—本当はもっと極めてから使うはずだった。でも、俺はここまで成長したんだ。この場で証明してやる—
——見ていろ、ただ傍観していた連中ども。あの時の俺はもういない——
俺は左手で右手首を抑え、右手から炎を生み出し始めた。
炎の球はどんどん大きくなる。
他の3人はすでに魔法を放ち始めているが、気にしない。俺はもっと大きく、もっと熱く——
セオンの手から出る炎は、気づけば巨大な火炎球となっていた。
「な、なんなんだよ、あのでかい炎の球は…!」
「あんなにでかい炎の球は見たことないぞ……」
——準備はできた——
人々がざわめくなか、俺は全力でその魔法を放った。
「行け……」
「『火炎の球』……!!」
全員が息を呑んだ。
初級魔法の『火炎の球』が、こんなにも巨大で威力のあるものだとは信じらず、誰も見たことがない光景だったからだ。
火炎の球は凄まじい勢いで的に向かっていった。
「ドォーン!!」
激しい音とともに、的に当たると、爆発音が響き、煙が立ち込め、的は完全に破壊されていた。
周囲は驚きと恐怖で静まり返る。
この時、誰もがセオンの力を認識した瞬間だった。
「フゥ……」
深く息をついたセオンの姿は、まるで、別人のようだった。
――
「えっと、て、点数を発表します……。トハナさん、4点、ヒタメさん、5点、デメシさん、5点」
「セオンさん、、、10点…!!」