成長過程
寮で俺は考えていた。
今のままじゃ、俺は成績上位者4人の中に絶対に入れない……
テストの点数が2割、残りの8割は1ヶ月後に行われる魔物討伐での討伐数とハレス先生との模擬戦だ。
テストは大丈夫だ……問題は戦闘面。スキルを使わないのは前提として、今の俺にできることは魔法の訓練だ……!
俺は拳を握りしめ、決意を新たにした。
翌日、俺は学院にある訓練場へ向かった。そこには魔法を練習するための広大なスペースが広がっていた。人は一定数いたが、練習の邪魔にはならない。
この世界の人間にはそれぞれ、自分に合った魔法の種類がある。俺は恐らく炎魔法が合っている。
炎魔法を使うための細かいコントロールや、瞬時に発動できるようになるための反復練習が必要だ。
毎日、休むことなく訓練を続ける。
炎魔法を操るための基本から応用まで、全てを極めるつもりだ。
この2ヶ月でどれだけ成長できるか、それが勝負の鍵になる。絶対に諦めない、必ずやり遂げてみせる。
「ハッ…!」
俺が炎の魔法を発動させると、手から舞い上がる赤い炎が空気を震わせた。その光景を見ながら、俺は思い出した。
【前世のような人生は送らない……】
そうだ、忘れるな。
「強くなる……そしてすぐに追いついてやる、エリック、ソフィア」
「そして、お母さん、村のみんな、待っていてくれ……」
お母さんと村のみんなの顔が脳裏に浮かんだ。
みんなが信じてくれている以上、俺も自分を信じて進むしかない。
焦るな、だが急げ、確実に成長するんだ……それが今の俺にできる唯一の道だ。
その意志を持ち、俺は炎を出し続けた。
訓練場の片隅で俺を見ていた二人の学生がひそひそと話しているのが聞こえた。
「あいつ、なかなかやるな〜」
「関わらない方がいいですよ、今朝の記事見ましたよね?あの有名貴族のマルコ・グリムウェルも死んでいたことが確認されたって……」
「ああ、見たよ、衝撃だったな。その森には魔族も確認されていないらしいし、怪しいとされていた人も鑑定で魔法が使えなかったみたいだし……」
「でも、今は使えてますよ…」
「え……?」
「そう、あいつが例のセオン・クレストですよ。」
「そうなのか、あいつが……」
(鑑定されたのはつい数日前だろ……、にも関わらず今はあんなに……)
「俺はあいつが不気味でたまらないですよ……」
「確かにそうだな、お前の言う通り、俺も関わらないでおこう。少し心は痛むがな……」
勝手にしろ、俺の道は決まっている。ただ……邪魔さえしなければ何もしない……。
俺はそいつらに視線を向けた。目が合った瞬間、二人の表情が驚きと恐怖に変わった。
「!!!??……」 「ひぃ……!」
「もう、出ましょうよ…!」
「あ、ああ、そうだな…」
そう言って二人は訓練場から急いで出て行った。
俺はそれからも炎を出し続けた。炎の熱が手から伝わり、心の中の決意をさらに固くする。
(村のみんなが幸せになることが俺の幸せに繋がる……!自分が良くてもダメだ……!俺があの村を変えるんだ……!)
その思いを胸に焼き付けるように。
毎日、毎日、毎日……
――2週間ほど経った頃――
「今日の実技では、魔力で頑丈にされた的を魔法で狙って撃ってもらう。」
「そして、今日の実技は試験で、成績に入る……。」
憂鬱な朝、ハレス先生の声が教室に響いた。その瞬間、教室全体の空気が一変し、みんなの表情がこわばった。
「ちょっと、先生、成績に入るのは2週間後に行われるテストと魔物討伐、模擬試験じゃないんですか?」
クラスの一人の男子が驚いたように先生に尋ねた。
「ああ、俺もそう思っていた。しかし、現状を把握したいという意見が会議で出て、簡単な的撃ち試験を行うことになった。」
ハレス先生はそう言うと、教室の前に立ち、クラス全員を見渡した。
「これはお前らにとってのチャンスだ。自分の力を試す良い機会だと思って、全力で挑め。成績上位者になりたいのならば特にな……。」
教室は一瞬、静寂に包まれ、その後、緊張が走った。
(想定外だ……あれから毎日、魔法の練習と体力づくりはしている。だが、まだ魔法に関しては扱い慣れてない……)
不安が胸を締めつける。
訓練の成果を試す機会が突然訪れたことに、心の準備ができていない自分を感じた。
「それと、今日の実技試験は1年全員、同じ場所でやる……」
(なんだと?1年全員の前で……?)
クラスはそれぞれ色で分けられている。
俺たちのクラスは翠
他3クラスは紅、蒼、白、がいる。
どのクラスも平等になるようにクラス分けされているらしいが、実際のところはわからない。
緊張が押し寄せる。
だが、同時にこれが自分を試す絶好の機会だと気付いた。
「では、全員、訓練場に集合だ……」
ハレス先生の指示に従い、俺たちは教室を出て訓練場へ向かった。
訓練場には、魔力で強化された的がずらりと並んでいた。その光景に、ますます緊張が高まる。心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
「セオン君、大丈夫かい…?」
隣にいた、エリックが声をかけてきた。
「え、ああ。今の俺の実力がどれほどなのか分かるいい機会だ……」
「ふ〜ん、ここ最近のセオン君は全然自分のことを話してくれないから、どれだけ成長したのか気になって仕方ないよ。」
エリックがそう言うと、ソフィアも話してきた。
「まあ、いいんじゃないの?今日わかるんだし…!」
「そうだね、楽しみにしておくよセオン君」
(初めて君を見た時より確実に魔力が濃く強くなっている……一体何が君をここまで強くするのか……。)
「ああ、今の俺の全力を見せてやる……」
3人が話しているところを遠くからリンが見ていた。
ーーー
「では、これより試験を始めます。それぞれクラス1列になってください。」
そう言われ、俺たちは的から少し離れた場所で1列に並び、他のクラスも1列になり、横4列になった。
「1回で4人の試験を行います。点数は0〜10点です。より正確であの的にダメージを与えるほど点数は高くなります!では、始めます!」
周りの生徒達がざわめき出した。
「いよいよ始まるのか……」
「緊張するね〜……」
「とりあえず、威力重視じゃなく、コントロール重視で行くわ……」
「最初は紅、「エリアス・〜…」」
「蒼、「ソレナ・〜…」」
「翠、「エレリ・〜…」」
「白、「デリン・〜…」」
「打ってください!」
試験管が声をだし合図をだした。
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「風の囁き!」
「岩石の弾!」
「雷の矢!」
「樹木の刄!」
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4人が一斉に魔法を使い、的に放った。
的に当たった者もいれば、かすれただけの者もいた。
魔法により、煙が立っていたが、徐々に引いていき的が見える。
そして、的にはほとんどダメージが入っていなかった。
「コントロールを重視するばかりで威力がない、当然のことだね〜。」
エリックが偉そうな口ぶりで言った。
「結果は、エリアスさん4点、ソレナさん5点、エレリさん4点、デリンさん5点、になります。」
それを聞いた4人は悔しい表情をしていた。
そして、まだ試験をしていない人たちに緊張がより一層走る。
【この試験は甘くない……】と思いながら、次々生徒達が撃っていった。
「ルーシャさん6点、エイクさん4点、シーラさん6点、トビーさん5点、レイナさん6点、ハリスさん3点、サニラさん7点、ケイトさん4点、」
(今のところは7点が最高得点か……)
「次は紅、「モリー・〜…」
「蒼、「ユリア・〜…」」
「翠、「ソフィア・ムーンハート」」
「白、「リン・レステニア」」
(次はソフィアとリンか、ソフィアの魔法は1度見たことがあるが、リンは一体どんな魔法を使うんだ……)
リンは冷静でとても落ち着いていた。
(セオン、よく見ておくといいよ、ボクの魔法、いや、剣技を…!!)