対面、そして危機
(なぜだ... バレたはずはない。
なら、なぜ呼び出される...。マルコたちとよく一緒に居たってことがバレただけか...?)
そんなことを考えながら俺はハレス先生の後についていき、学長室まで足を運んだ。
「俺はここまでだ... セオン、くれぐれも失礼のないようにな...」
ハレス先生がこんなに緊張しているのは初めて見た。
そして、その表情からは何かを隠しているような不穏な雰囲気が漂っていた。
こいつも教師のくせに俺のことを見捨てたクソ野郎だ...。
いや、今はそんなことを考えている場合じゃない...
何を聞かれる...。何をされる...。
怪しまれないように演技をして、頭を最大限に働かせて返答をする...!
俺は表情を作り、学長室の扉を開けて入った。
そこには、ストライト・ウィリアムが奥に迎える形で座っていた。
そして、イライラしているヘンリー校長 (おじさん)にこにこしているおじさん、にこにこしているおばさんが対面になってソファに座っていた。
お年寄り多いな...
率直な感想はそれだったが、奥から見てくるストライトの視線は恐怖を生むもので、焦りと不安が俺を襲った。
(!?、冷静に...、焦るな...。ストライト学長は魔力の動きを見ているはずだ...、動揺するな...!)
「はじめまして、セオン君。」
「知ってると思うけど、改めて私はストライト・ウィリアムだ......。そして、ヘンリー校長に」
にこにこしているおじさんに手を向けて
「この学院で魔法の研究をしているアレク先生」
にこにこしているおばさんに手を向けて
「癒しの部屋のロザリナ先生だ.。」
ストライトは1人ずつ丁寧に俺に紹介した。
だからなんだと言うんだ?
ストライトだけでも、俺に尋問はできるはず...
「あ、あの、俺をここに呼んだ理由は......?」
俺は何も心あたりがないフリをして聞いた。
「セオン君、マルコ君たちにいじめられてたんだってね......」
(やっぱりバレてたか......クラスの誰かが言ったな)
「それに気づくことができなかった私は学長としてとても不甲斐なさと申し訳なさでいっぱいだ......」
(やけに素直だな......)
「だが、知っての通り今、君をいじめてた内の2人が何者かに殺され、1人が行方不明の状況だ......」
(ここは冷静に、)
「は、はい、知ってます。その日俺はいつも通りそいつらに殴られ寮に引きこもっていました。」
俺は悲しそうに言うとストライトが被せるように言った。
「マルコ君はもう死んでいるんだ……。」
「え……」
(なぜ、わかったんだ……!)
「そうですよね、アレク先生?」
「ああ、2人が死んでいた付近を調べてみると、マルコ君と思われる細胞が混じった灰が今日、見つかった。」
(焼き焦げた灰から調べたっていうのか…!?)
「そうだったんですね……一体どんな魔族がやったのか…!」
ストライトは目を鋭くさせて俺の目をじっと見つめてきた。
「魔族?、いいや、これは人間の仕業だと私は思うよ。」
「な、なんでですか……?」
「うん?勘だよ?」
「あ、ああ…そう、ですか…。」
(意外と適当だな、でも良かった明確な理由がないなら俺だとバレない……)
「ほんと、大変だったよ……。亡くなった3人の親御さんに伝えに行ったら、母親の方は泣き崩れて、父親の方は、私が王子だからか怒りはしなかったけど、明らかに怒ってる顔をしていたし……」
「そ、それは大変でしたね……」
(いじめをしていたことはちゃんと伝えたのか…?)
「それと、マルコ君のお父さんがセオン君と話したいって言ってた。いつか会うことがあったら、話を聞いてあげてよ……」
「あ、はい、わかりました。」
「でも、その前に確認しておかなければならないことがある……。」
王子の声が一瞬低くなり、その瞳には鋭い光が宿っていた。
「君、何か隠してないか?」
それを聞いた俺は緊張が走った。
「え……?」
俺は咄嗟に平静を装いながらも、心臓が激しく打ち始めた。
すると、ヘンリー校長が口を開いた。
「お前がやったんだろ?!あの森は魔族なんてでない、お前がやったとしか考えられないんだよ!!!」
「寮に居たっていう証拠もないし!クラスの奴はお前が2人に連れて行かれるところを見たと言ってるんだ!!」
(校長先生…俺が思ってた印象とは随分違うな。)
(だが、言ってることはあっている。でもそれだけで俺がやったと決めつけるのは厳しいだろ……)
「まあまあ、ヘンリー校長、決めつけるのは良くないですよ。」
ロザリナ先生が言いだした。
「そうですぞ、お前さんが来た理由を思い出せ。」
アレク先生そう言うと、ヘンリーは不機嫌な顔になった。
(やっぱり何か理由があるのか...)
「はぁ...素直に認めてくれたら俺が疲れなくて済むのに......」
(なんだ、校長は一体何をするつもりだ......)
「お願いします。ヘンリーさん。」
ストライトがそう言うと、ヘンリーがセオンの前にきた。
「逃げるなよ、今から『鑑定』するから......」
(!!!??!!『鑑定』!?こいつはスキルを持っているのか……!)
スキル:鑑定。
それは1番取得する可能性の高いスキルだ。
(まずい……どうする……、俺の持っているスキル
『魔法奪取』は鑑定で見れるのか!?スキルを鑑定できるとは本に書いてなかった。)
だが、
(鑑定できないとも書いていなかった……!!)
どうする……!?
この状況はさすがにやばい……。
「じゃあ、スキル:『鑑定』!!」
ヘンリーが俺に鑑定をすると同時に、ストライトは席を立ち、剣を構えた。
(相手は4人、もしスキルを持っていることがバレたら、即座に最大限の魔力を使って
『悪魔の炎』を放つ……!!!)
それで、ストライトを殺せるかどうかは分からない
だが、バレた時の俺が生き残る方法はこれだけだ……!
「おっ、お前……!!」
ヘンリーが驚いた顔をする。
部屋にいる全員が警戒した表情になる。
(クソッ!やるしかないか……)
「お前……魔法をひとつも持ってないじゃないか!!?」
「!?」
「それは、本当かい……?」
ロザリナがヘンリーに聞いた。
「ああ、間違いない……全く、こんな出来損ないを一体誰が合格にしたんだ……」
ヘンリーがそう言うと、剣を構えていたストライトが構えるのをやめた。
「ハハッ、すまないセオン君、魔力量が多いからてっきり君なんじゃないかと疑ってしまったよ。まさか、魔法が使えないなんて驚いた!」
(助かったのか……?)
いや、最後まで気を抜くな……!
魔力の流れでバレる可能性もある。
「あ、あたりまえですよ!俺はまだ魔法を使えないんですから、あの2人を殺すことなんてできるわけないですよ!」
その言葉にストライトは笑顔でこう言った。
「その言葉に嘘は感じられないな……」
「ロザリナ先生、セオン君の体が傷ついているので
『癒し』をお願いします。」
「それからアレク先生はセオン君のお世話係を…」
「わかりましたよ…」「分かりましたわい。」
(2人を呼んだのはこれが理由か……)
いやでも、お世話係って、いらないんだが……
「『癒し』してもらったらわしの研究室に来なさい。面白いものを見せてやるぞ…!」
「は、はい……」
「はあ……はぁ……はぁ……チッ、スキルの使い損かよ!そのせいで体はクタクタだよ……!!」
「あんたがもっと使いこなせるようになったらいいんじゃないか……」
「うるせぇ!ババア!!!」
「ワシの妻になんてこと言ってるんだ!!!」
「事実だろ!ジジイ!!」
「なんだと…?昔みたいにやりあうか…!?」
でもまさか、校長がこんなクソみたいなヤツだったとは、校長が変わらない限り、この学院もより良くならないな……
でも、はじめて見た時魔力が強いと感じたが、スキル持ちだったのが理由か…..。
うん?
まてよ、なら、俺はどうなる!?
ヘンリー校長よりもスキルを使いこなせている俺の魔力は強くなっているのか?
もしかしたら、スキルを得たことで、魔法を使えるようになっているかもしれない…..!
その思いに胸が高鳴り、内心ワクワクするセオンを
ストライトは鋭い眼差しでじっと見つめていた.....