表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
口は災いの元Z  作者: 桃色 満
2/2

初対面は大切にするZ

大事な事なのでもう一回言うよ!

実在する地域、言葉、伝承をリスペクトしています。

しかしながら、本小説では勝手な転用と妄想が繰り広げられています。

その事をご了承の上、お読みいただければと思います

その夜、ジェラード国の王宮の広間には多くの客人が集まり、夜にあって昼の花園の様に華やかな様子だ。国内をはじめ近隣諸国や、果ては海の向こうの国の客人が招かれ人種も衣服も様々な人々が行き交う。今後のジェラード国の貿易国としての発展を窺わせる様な盛況ぶりだ。

しかし、騒がしい空間が王の来訪と共に静まりかえった。

壇上の最も高い玉座に立つジェラード国王は笑顔で手を挙げ、客人へ感謝を示した。

「今日というめでたい日に集ってくれたこと感謝する!ここに三人の王子達の結婚を宣言する」

国王の宣言と共に会場は拍手の嵐となった。

それに満足げな王は手を挙げ諌めると、壇の前へ3組の男女を招く。

王子達は全員金髪碧眼のだったが、第一王子は品行方正でまさに夢に描く王子様、第二王子は武に優れた無骨な大男、第三王子は口が達者で軟派な優男と三者三様。彼らはそれぞれの結婚相手をエスコートし、国王の誰何と共に国王の一段下の壇上へと上がる事になっていた。

「第一王子ノアと男爵令嬢キャロ」

「「はい!」」

ノアとキャロは手を取り合い、壇上へ上がると国王へ一礼し広間を振り返る。

キャロは艶やかな桃色の髪に紫の瞳、華奢で可憐な様は御伽話のお姫様と語られる。

2人は朗らかに会場へ手を振り、彼らの恋物語に憧れる若者からは歓声が上がった。歓声に2人は微笑み合い、自分達を鼓舞するように頷き合う。

国王はこほんと咳をして歓声を止めると、残る王子達へ手を差し伸べた。

「次に第二王子ドゥーエ、第三王子トレン。彼らは遥々海の向こう、シンシューン帝国より来られたアネート姫、イモート姫と婚姻することとする!」

高らかに宣言した国王の声に、広がる世界と新たな発展に期待した拍手が湧き上がる。しかし、会場の雰囲気が最高潮に達しようとした時、割って入るような叫び声が響き渡った。

「その結婚待って下さい!アネートとイモートはこの国を奪う気ですぅ。貴女達がこの国が自分達のものになるって言ってたのを聞いた人が居るんですぅ」

キャロが可憐な顔をしかめさせ、ビシッとアネートとイモートを指差す。

ノアは眉根を寄せ、苦しげに父王を振り返っる。

「こんな事、言いたくはなかったのですが。陛下は騙されておられる!私達が結婚し国王になった後、私は内務だけで軍事はドゥーエ、外務がトレンとはどういうことですか?国王が全てを取り仕切るのが道理でしょう」

国王は小さくため息をつくと、顎鬚を撫でながら諭す様に口を開いた。

「ふむ。より強国を目指すなら政がより複雑多岐になるだろう。国王一人では目の届かないところもあろう、信頼のおける兄弟の力を借りて仲良く国を納める事のどこがおかしいのだ?」

現にこの会場には今までにないほどの数の来賓が来ている。これからジェラード国がより発展していく未来を予想して、自国もその利益にあやかろうとしているのだ。人々は成り行きを見守る事にしたのか、発言する者もなく固唾を飲んでいた。

ノアは国王の言葉にはっとしたように目を見開くが、すぐに下段の弟たちを振り返った。

「弟達に不足があるわけではありません。ですが、彼らの妻になるシンシューン帝国の姫君達は信用なりません。彼女達はこの国をシンシューン帝国の属国にしようと企んでいるのです」

ノアの話に会場がざわめきたつ。

シンシューン帝国ははるか海の向こうの国だ。近隣諸国と比べて貿易の規模もちいさく、馴染みのない国である。

なぜそんな遠くの国と縁を結ぶのかと、内情を知らない人々の間では訝しむ囁きが交わされた。

国王は手を挙げ、ざわめきを納める。そして今までと違い、威厳ある静かな声が響く。

「余からシンシューン帝国と姫君達へこの者らの不敬を謝ろう」

「父上!その必要はありません」

「そうです王様!悪いのはあの人達ですぅ」

国王は言い募るノアとキャロに視線を戻すと一つ大きくため息をついて問うた。

「第一王子ノアよこの場で言うほどの根拠があるのだろうな?」

「もちろんです!私達が正義の名の下に、彼女達の邪な心を曝け出しましょう」

「私の固有魔法なら一発ですぅ!貴女達の心の声を会場中に聞かせちゃうんだからぁ」

キャロはそう言うとアネートとイモートに右手を突き出す。

「アネート!」

「イモート!」

イモートがアネートを庇う様に前にでたが、キャロの手のひらに凝縮した魔法は目も眩むような桃色の光は波の様に曲がりくねり二人に注がれた。

固有魔法とは万人が使える魔法と違い、神から加護を得た人だけが使える魔法である。加護を得る事自体が珍しく、保有しているだけでキャロは一目置かれている。

以前、キャロは学園の卒業式でノアの婚約者であった侯爵令嬢にこの魔法をかけ、彼女の卑劣な虐めを裏付ける心の声や国母に相応しくない卑しい心を曝け出していた。

ノアやキャロと同世代はあの時の再来かと密かに胸を熱くさせ、シンシューン帝国の悪女達を見やった。

最初に動いたのはイモートだった。彼女は結えられた長い黒髪を鞭のように振るわせ、敵意を持ってノアとキャロを見上げる。小柄ながら極彩色に煌めく異国の布地で出来たドレスと彼女の堂々とした態度は一国の王族としての威厳が滲み出ている。

修羅場となった火中のイモートの言葉に会場中が耳を澄ませた。

「先程から貴賓に対して失礼な言動、突然の魔法という暴力的な振る舞いはいかがかと思いますわ」

イモートは気怠げな声音に不快感を乗せ、居丈高な態度で言い放った。

そのすぐ後、同じ声音でどこか呆れたような声が続く。

(貴賓に魔法ぶっぱとか何を考えてるZRA(ずら)

その時会場内は仲良くハモった。

「「「ZRA(ずら)!?」」」

どこの言葉かな?

分かったかな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ