第七話:移動再開
1人目の少女との合流に成功。
移動より先に、マリの能力の把握をした。
その結果、愕然とするダイスケ。
移動を再開しながら、マリに2体目のモンスターを召喚してもらう。
その、結果が……。
※※※
・志願兵 : 光1/1/1
: ☆
: モンスター
: 人間、兵士
※※※
弱い、重い、スキルないの三重苦。
最弱や最も使えないカードというわけでもない。
しかしこれで、マリのデッキ内容は予測ができる。
最初に発売された構築済みデッキ、『志願兵たち』ではなかろうか?
『Wise&Wizards』通称ウィズが発売されたのに合わせて、とにかくゲームをプレイして慣れてもらうために販売された低価格の構築済みデッキは何種かあるが、その中でも一番弱い、一番使えない、と言われ続けた構築済みデッキは、ほとんどのカードを低コスト(高効率ではない)で運用できる代わりに、とにかく弱かった。
その代わり、初心者がカードゲームに慣れるにはうってつけだったという。
そのデッキ内容は、『モンスター』を召喚して、『装備』カードで強化して、『モンスター』で『攻撃』する。
ほぼそれしかできないため、ゲームのルールを把握するにはちょうど良かったらしい。
で、それが、この状況でどう作用するかというと?
「……なんか、すみません」
申し訳なさそうにしているマリと、
「大丈夫。きみが謝ることじゃないよ」
かけた言葉とは裏腹に、頭抱えてのたうち回りたい気持ちが思いっきり顔に出ている俺がいた。
……まさか、数ある構築済みデッキの中で1番使えないのを持たされてるとは……。
……いや、初心者が高度なテクニックを持っているわけがないのだから、弱くても分かりやすく扱いやすいのがいいんだろう。
デッキの内容も予想できるし。
そういうことにした。
「今の手札に、『装備』カードはあるかい?」
「はい。『鉄のナイフ』、『鉄の盾』、『鉄の鎧』が1枚ずつあります」
吹きそうになった。しかし、なんとかこらえた。
手札が火属性の攻撃魔法ばかりの俺よりはマシなのかもしれない。
それと、試したいことをやってしまおう。
「マリ、こっちの『土のゴーレム』に、『鉄の鎧』を使ってみてくれ」
「分かりました。『鉄の鎧』を、『土のゴーレム』さんに『装備』です」
人間用と思える『鉄の鎧』などの『装備』カードは、ゲームではどんなモンスターにも装備ができた。
たとえば、妖精のように小さいものや、スライムのような不定形や、ドラゴンのような極端に大きいものまで。
『装備カードを装備できない』という能力を持っていない限り、それこそなんでも装備はできた。
それなら、今はどうだろう?
カードゲームではなく、現実の世界……異世界……では、どうなのだろう?
その結果が、今、目の前に示された。
『土のゴーレム』は、3メートルほどの巨体のサイズぴったりな『鉄の鎧』を身に纏っていた。
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・土のゴーレム : 火1/1/1+1
: ☆
: モンスター
: ゴーレム
: 防御
※※※
「次は、俺に『鉄のナイフ』を。できそうか?」
「はい、やってみます。『ダイスケ』さんに、『鉄のナイフ』を『装備』です」
マリがカードを使ったからだろうか。
白金色の光が俺に向かって飛んできて、腰周りを一周した後、革のベルトが腰に巻かれていて、そのベルトには鞘に収まったナイフが固定されていた。
※※※
・鉄のナイフ : 2
: ☆
: 装備
: +1/+0
※※※
鞘からナイフを抜いてみる。
扱えるかどうかは別問題だが、これで俺も戦えるのではないだろうか?
ウィズのルールでは、プレイヤーがモンスターと一緒に『戦闘』に参加することはできないし、モンスターから攻撃されても無抵抗でダメージを受けたが、一部の『装備』カードを装備すると、モンスターから攻撃された際にはダメージを与えることもできた。
装備カードによって『攻撃力』が増えた扱いなのか、魔法的な何かか。
まあ、いい。今はそれよりも、他の子との合流を急ぐか。
弱いとはいえ、戦力が増えた分安定するだろうから。
「マリ、走れるかい? ジョギングくらいの速さでも構わないから、足を止めた分少しでも急ごう」
「はいっ、がんばります!」
※使用したカード
・鉄の鎧 : 2
: ☆
: 装備
: +0/+1
・鉄のナイフ : 2
: ☆
: 装備
: +1/+0