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第六話:1人目の少女

 召喚したゴーレムの力を借りて、森を進むダイスケ。


 ゴブリンに追われる少女を無事保護できた。


「落ち着いたかな?」


 少女が泣き止み、呼吸も落ち着いてきたのを見計らって声をかける。


 少女がうなずいたのを確認してから、手を貸して立たせる。


 正直、こうしている間も他の子たちは危険に晒されているわけで、速やかに次にいきたかったが……。


 こうして、恐怖に震え泣いている子を見ると、どうしてもそのままにしておけなかった。


「現状、分からないことが多いけど、きみと同じように無理やりこの世界に連れてこられた子がまだいるんだ。移動しながら話をしようと思うけど、いいかい?」


「……は、はい」


「不安な気持ちも分かる。正直俺も不安だ。でも、こいつは強いぞ?」


 できるだけ明るく、力強く宣言して、『土のゴーレム』の足に触れる。

 言葉は話せないが、任せろとばかりに片腕を振り上げ力こぶを作るポーズを取ってみせた。

 その様子に少しは安心したのか、少女の表情も緩んでいた。




「聞きたいことがたくさんあります」


 歩きだしてすぐに、名前と年齢、職業の簡単な自己紹介を済ます。

 小野(おの) 茉莉花(まりか)という少女は、俺でも知っている有名な女子高に通う高校生なのだという。

 どうりで、セーラー服姿な訳だ。

 マリと呼んでくれというので、遠慮なく。

 肩にかかるくらいの髪や優しげなタレ目が可愛らしいが、今は不安に曇っていて痛々しさも感じるくらい。

 気がついたら森の中にいたというし、俺と違って神を名乗る存在と直接会って話したとかはないようだ。代わりに、


『ごめんなさい』


 と、謝る女性の声が聞こえただけとか。

 そんな状況なため、話していないと不安なのか、自己紹介の後すぐに話しかけてきた。


「気持ちは分かるけど、先にいいかな? 『ステータス』と念じてみて」


「あ、はい。……『ステータス』……きゃっ?」


 俺からは分からないが、ちゃんとステータスウインドウは表示されたようだ。

 小さな悲鳴が可愛らしくて、ちょっと和んでしまうが。


「視界の左側に、半透明の画像というか、なんか映ってないかい? 俺からは見えないから、読み上げてくれると助かる」


「はい。えっと……」




※※※


 ・マリ/♀/16

 ・LP20/20

 ・MP36/36

 ・スキル:

  ・・料理

  ・・カードゲーム

  ・・遊戯神の加護 (小)

 ・称号:

  ・・プレイヤー

  ・・光明神の使徒


※※※


「……ええと、こんな感じですけど」


 なんだかすまなさそうな様子のマリ。

 俺は、それどころではなかったが。


(……俺、もらったもの以外のスキルは無いの? 正直、ショックなんだけど……)


 気分はorz。しかし、立ち止まっている暇はないので、んんっと咳払いしてから、『カードゲーム』のスキルの使い方を説明する。

 すると、マリはすぐに指を動かしていた。


「……うん、……うん、なんとなく、分かるかも……はい。大丈夫です。やってみます」


 足を止めたマリは1度大きく息を吸い込んで、よしっと小さくうなずく。そして、左手を前に差し出した。


「オープン」


 マリの足元に、白金色の魔法陣が描かれる。

 魔法陣が回転し、鳥が翼を広げるように光が生まれ、マリを一瞬包み込む。

 その光がやんだ時、マリの左手には純白に装丁されたハードカバーの文庫本のようなカードデッキが握られていた。




 ……これはヤバい。むちゃくちゃカッコいいぞ。




 そんな場合ではないが、スキルのエフェクトに感動してしまった。


 ……で、俺があまりにもじろじろ見ていて恥ずかしくなったのか、少し顔を赤くしているマリを見て、素直にかわいいと思ってしまった。


「デッキを1度手放して、手で触れてごらん。そして、歩きながら、なにか適当にカードを使ってみよう」


「分かりました。……では、えっと……『一般兵』さんを使います」


 なに? と一瞬思考が止まり、待て、というより早く、白金色の魔法陣が展開され、鎖帷子(くさりかたびら)に革の帽子の男性姿の『一般兵』が召喚されてしまった。


 中肉中背の男性。

 手には抜き身の両刃剣。

 目元は不自然な影ができており、口元しか分からないが無表情。

 名前のないその他大勢といった印象だ。




 ……あまりにもあんまりな名前の、役に立たない代名詞みたいなやつが、そこにいた。




 ……いやその、俺は、初心者が一番最初に場に出すカードとしての鉄板だと思っているんだけどな。

 光属性のカードは高効率なものも多めで、光属性エネルギー1個だけでスキル持ちもいる中で、このカードはやられ役というか、最近では名前すら知らない人も増えてきたっていうか、その程度の扱いだったりする。


「あの、えっと……私なにか、間違いました?」


 気分はorz。しかし、試したいこともあったので、


「大丈夫。間違ってないよ」


 泣きそうな顔のマリを安心させようと微笑みかけた。


 その、内心は、




 ……兵隊デッキとかなら、いいなあ……。




 という、現実逃避じみたマリの持つデッキ予想だった。



 ・一般兵 : 光/1/1

   : ☆

   : モンスター

   : 人間、兵士


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― 新着の感想 ―
[一言] これは一般兵が、終盤で大活躍するフラグ( ˘ω˘ )
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