第五話:戦闘……というよりは
自身に与えられたスキルを確認したダイスケ。
他の召喚者たちの位置を確認できたことで、救出へ向けて走り出した。
行程は順調。
森の中を、『土のゴーレム』を先頭にして道なき道を突き進む。
ゴーレムが腕を薙ぎ払えば、草や低木の茂み、細い立ち木、茨の蔓と、大抵の障害物は取り払われた。
太い木は避ければいいし、枝なんかもバキバキへし折って進むゴーレムは、なんとも頼もしいものだった。
また、折った枝や払った蔓などがたまに光ったかと思えば、カードになって手元に来るときがある。
『カード化』のスキルが発動しているのだろうか?
……で、なに気に、動物? 魔物? も、サクサク……というよりは、ズンズン(物理)と腕を振り下ろして秒殺していた。
角ウサギとか、森ハイエナとか、ヘビとか。
こんなカードを手に入れた時は、さすがに驚いたが。
※※※
・忍び寄る森の暗殺者 : 木2/1/1
: ☆☆☆
: モンスター
: ヘビ
: 奇襲
: 忍び寄る森の暗殺者がモンスターにダメージを与えた場合、そのモンスターに『毒1』を付与。
※※※
いきなりのレアカードゲットで、テンション上げ……ていきたいところだが、状況が状況だから喜ぶのも後回しだ。
あ、ゴブリンとか普通にいた。瞬殺だったが。
足元が不安定な森の中を走るのは、なかなか骨の折れることが分かった。
ゴーレムに着いていくだけなら、軽いジョギングくらいのスピードで全然余裕なのだが、問題は、不安定な地面。
でこぼこしていたり、葉っぱがたまって足を取られたり、木の根につまずいたり。
神経使って気をつけて走ればいいのだが、その分体力が削られて困ってしまう。
ダイス、どうせなら、体力や運動能力も増やして欲しかったぞ。
たまに地図を確認しながら、できるだけ休まず速度を落とさずで進むと、1番近い青の光点がこちらに近づいて来るのが分かった。
よし、いいぞ。そのままこっちへ。
……そんなことを考えたのがいけなかったのか。
「……誰か、助けて、誰か!」
草木や枝に阻まれて見えないが、進む先から切羽詰まった少女の声が聞こえてくるのだった。
「聞こえるか! こっちだ!」
声を張り上げて、存在をアピールする。
そんなことをすれば、敵も寄ってくるのだが……。
「こっちだ!」
少し視界が開けて、声の主と、その追跡者を確認できたが……。
「やれ」
少女と追跡者の間に割り込み、ゴーレムに命令する。
ズンズンズン。右左右。これで終わった。相手はゴブリン3体。弱すぎた。
「きみ、大丈夫かい?」
属性エネルギーを消費してしまうが、手札から『水筒』を出して……って、出てきたのは2リットルのペットボトルだった。そんな場合ではないが、驚いたわ。
「んっ、んぐっ、んっ、っげほ、けほ、は、はぁ、はぁ……」
一気に飲んでむせてしまったようだ。
背中をさすってあげると、ありがとうございますぅ……。と、泣きそうな声を上げていた。
いや、安心したせいか、本当に泣き出してしまった。
よほど怖かったのか、俺の服を掴んで、すがりついてくる。
どうしたものかと頭を抱えたい気分だったが、子供が泣いていたなら、こうするのが正解かなと、頭をなでながら背中をさすってあげた。
「よしよし。もう、大丈夫だからな」
しばし、森に、少女のすすり泣く声が響き、鳥や虫の鳴き声に掻き消されていった。
※使用したカード
・水筒 : 1
: ☆
: 秘宝
: ストック×3
: (消耗) ストックを一つ取り除く。水属性エネルギーを1生成。
※今回得たカード
・土地
・・木立×2
・・茂み×3
・モンスター
・・生い茂る草木×1
・・絡まる茨×1
・・角ウサギ×2
・・森ハイエナ×4
・・樹上のサル×1
・・迷彩ヘビ×2
・・忍び寄る森の暗殺者×1
・・ゴブリン×7
・・森ゴブリン×6
・・飛びかかるゴブリン×1
・・襲撃ゴブリン×1
・補助
・・奇声×1