第二十話:事情
拠点に集まり自己紹介したあと異世界での1日の疲れを癒すべく休むダイスケたち。
一方、神の側はというと……?
『神のゲーム』
長い長い刻の中で暇をもて余した上級の神々が始めたゲーム。
ある時、一柱の上級神が別の神にゲームを持ちかけたのが始まりで、その時は、その上級神が管理する世界の人間の何人かを対象にして、より長く生きた方が勝ち。より成功した方が勝ち。などと、ささやかなものだった。
しかしそれも、何度もこなすうちに飽きがきてしまい、だんだんエスカレートしていった。
また、ゲームなのだから、勝者には報酬をと賭け事になり、賭けるものもまたエスカレートしていった。
……それだけならよかった。
神といえど、ズルいものはいるもので、段々に、勝つために不正が行われるようになり、それもエスカレートしすぎて神同士の戦争にまで起きそうにもなった。
さすがにそれはまずいと、上級神たちはルールを定め、裁定神に法の管理を任せるようになった。
公正・公平な法の番人は、毎回自身の存在意義を賭けて公正公平にジャッジするため、『神のゲーム』が始まったときは必ずジャッジを任されるようになった。
その上で、『神のゲーム』の運営まで押し付けられるようになり、神々のあまりに身勝手な振るまいに、ボイコットする事態に発展した。
さすがにそれはまずいと、上級神たちは協議を重ね、企画・運営は中級神や下級神に任せることで、裁定神の職務復帰を促し『神のゲーム』を観客として楽しむことができていた。
しかしながら、任された中級神や下級神たちは、とんでもない迷惑だった。
なにせ、神々は多種多様。
拮抗した状態でのギリギリの戦闘を好むものや、一方的な蹂躙劇を好むもの、そもそも争いを好まないものと色々あり、全ての神々を満足させることは不可能といわれている。
・問 : そんな中でより多くの神を満足させるには?
・解 : 闘争あるのみ。それが大規模であればさらによし。
そんな感じになっていた。
神々は闘争が大好きだった。
闘争は嫌いと公言している神も、他のものが足掻く様を見るのは大好きだった。
そのため、舞台は上級神が用意して、プレイヤーは他から引っ張ってくることが通例となっていた。
※※※
『ご苦労』
『神のゲーム』を取り仕切る側として、主審の『裁定神ジャッジメント』は『神のゲーム』に関する領域には自由に出入りができる。
その権限を利用して、主催の『腐敗神ネクロビュ』に労いの言葉を掛けた。
神々の多くが望むのは、圧倒的な戦力による一方的な蹂躙か、力の弱い側の逆転勝利のどちらかだ。
そのため、最終的には腐敗神自身が討たれることで若き下級神たちを救う決断をしたことを、裁定神は知っていた。
彼はそういうシナリオを書き、裁定神はそれを認めた。
ある意味で同士となった中級神は、眷属を一柱失ったばかり。
自身の力を分けて生み出す眷属は、我が子のようなものとする神もいる。
そのため、裁定神は言葉を掛けずにはいられなかった。
『これは、裁定神ジャッジメント様。このようなところへご足労いただき、光栄の至りにございます』
『うむ、此度も良いゲームとなるよう励め』
『もったいなきお言葉にございます』
『ではな』
短いやり取りで、どこまで伝わったか。
『神々の観点で、比較的平穏に』ストレスを発散するために、世界を一つ構築して、侵略する側と守護する側とに分かれて潰し合う。
裁定神にとって理解ができないことでも、他の神にとってはこの上ない娯楽の一つ。
ストレス発散目的で、神々が戦争するよりはだいぶましだ。
腐敗神の元から離れてため息を1つ吐き、自身の領域に戻りながら、ふと、召喚された人間たちが元いた世界を覗いてみる。
『……さて、どちらがましなのであろうな?』
神の所業について、他ならぬ神自身が疑問を投げ掛けていた。




