第十八話:拠点
恐ろしいほど強く、どこまでも優しかった彼に、感謝と共に別れを告げた。
残されたカードデッキを見て、彼の意思とも一緒に行こうと思った。
『さて、ボクの方も時間切れになる前に用を済ませないと』
わずかな時間一緒に黙祷を捧げたあと、ダイスが俺たちに振り向いてそういった。
「用って、なんだ?」
『『セーフハウス』を起動してみてよ。それで分かるから。分かんなかったら説明する』
……いや、その、『セーフハウス』はデッキに入ってないんだが……。
まあ、やってみるか。
カードデッキは念じれば手元に現れるし、予備のカードもカードデッキに表示される。
けど、それ以外の入手したカードは、現状どこに表示されてるか分からないんだよな……。
そう思っていたら、
※
・スキル名 : カードゲーム
・・カードデッキを使用できる。
・・所持デッキ
☆・火属性/火力優先
・-
・・デッキ
・デッキを組む
・デッキを交換する
・・カード
・所持カード check!
・購入
・売却
・トレード
・・カード化
・・ヘルプ
・ルール表示
・メール
・コール
※
スキルの所持カードの欄が点滅していて、そこから入手したゴブリンとかヘビとかを確認できた。もちろん、セーフハウスも。
「『セーフハウス』起動」
表示されるカードに触れて、念じるだけで起動できた。
MPも減ってないみたいで、これは助かるとホッとしていると、大きな茶色……鉄さび色? の魔法陣が展開され、現れたのは……。
「プレハブ?」
「プレハブ小屋ですね」
「プレハブ小屋ですか……」
俺は首をかしげ、マリは呆気に取られ、レイは少し嫌そうだった。
『ほらほら、まずは中にごーごー』
3人とも、ダイスに背中を押されてプレハブ小屋に行くが……。
「入り口は引き戸か」
シャッターみたいな縦引きだとめんどくさいな、などと思いながら引き戸を開けて中に入る。すると。
「……これは、マジか……」
そこには、目を疑うような光景が広がっていた。
玄関は、4人は並べるくらいの広さで、右側がコートなどを掛けるハンガーと小さい手洗い用の洗面台。しかもハンドソープつき。
左側は靴用の収納棚になっていて、長靴やロングブーツなども収納できるようになっていた。
正面の廊下は余裕をもってすれちがえるくらいの広さで、先に進めば20畳はありそうな広いリビングがあった。
リビングに入れば、右側がダイニングキッチン、左側がトイレと風呂。正面は寝室となっていた。
「ふわぁ~、すごいですね~」
迷わずキッチンの方に行くマリと、
「お風呂があるのは助かります」
『風呂』と表札の出ていた引き戸を開けて、ホッとしているレイ。
俺はというと、寝室の方をチェックする。
……で、部屋が10くらいはあって、ちょっと困惑。
……あ、部屋の上にネームプレートがあった。
ネームプレートは、現状6人分。
あと1人分の名前が、ぐちゃぐちゃに塗り潰されたようになってる。
……個室を用意してもらったと思うことにしよう。
『どう? 気に入ってくれた?』
ニコニコとするダイスに、
「食材もたくさんあるので、何か美味しいものを作りますね♪」
キッチンの充実ぶりにはしゃぐマリ。
「お湯もすぐ出るし、着替えも用意されるみたいですし、洗濯もすぐ終わって乾燥までしてくれるみたいです」
きれい好きなのか、嬉しそうなレイ。
充実した環境はすごく助かる。でも俺は、そこまで気分が上がらない。
「なあ、ダイス。ロストしたっていう腐敗神側に保護されている1人はともかく、まだ3人は森の中なんだろ?」
俺の言葉に、マリとレイはビクッと体を震わせた。
そして、浮かれていたのを恥じるようにみるみる表情が曇っていった。
しかし、当のダイスはケロッとしたもので、
『うーん? おっかしいな~?』
リビングに備え付けられた固定電話 (プッシュホン)の受話器を取り、ボタンをポチポチ押してから、なにやらよく分からんことを言っていた。
『もしもーし。遠慮しないで入ってきなよー』
……おいおい、誰に言ってるんだ?
・使用したカード
・セーフハウス : 4
: ☆☆☆
: 秘宝
: (2) 対象のモンスター1体を『消耗』状態にする。そのモンスターは、このターンカードやスキルの対象にならず、ダメージを受けず、破壊されない。
このスキルは、『カードやスキルの対象にならない』効果を無視して発動する。
・ゲート : 水2
: ☆☆☆
: 領域
: (2) 対象のモンスター1体を『追放』する。
: (2) 対象の『追放』されたモンスター1体を、『準備』状態で場に戻す。