第十三話:戦闘開始
敵側である邪神の眷属の一柱と出会った。
ゾンビのような外見の彼は、とても理性的で話上手だった。
決戦の前、しばし穏やかな時間を過ごしつつ、デッキを調整する。
『さて、名残惜しいがそろそろ時間だ。言っておかなければならないことを言おう』
寂しげな彼の様子に、場の雰囲気も少し暗くなる。
『我ら腐敗神の眷属は、個体によって考え方が違う。主の意を汲む者、主を救おうと必死になっている者、ただ命令に従うだけの者。我は、意を汲む者のつもりだ』
つまり、彼の行動言動は、腐敗神の意を汲んだものということか。
『そして、きみたち神の代行を強制された少女たちの1人に、我が主の妨害を受け、次元の狭間に放り出された者がいる』
そこでなぜか、彼がニヤリと嗤う。
『その1人の少女は、我が主の側で確保している。つまり、人質だ』
自身は悪い魔法使いとでも言いたげに、両手を広げて威圧……文字通りの圧をかけてきた。
『助けたければ、我に討ち勝ち生き残れ。そして、この世界を守り、救うのだ』
対話はここまで。後は、闘争あるのみ。
『七柱の神の使徒と、七柱の邪神の眷属。神々の用意した舞台で、喜劇を踊れ。戦って、各々の運命を勝ち取るのだ!』
……だというのに、なんだか、思いっきり励ましてくれている気がするのは、気のせいなのだろうか?
負けるな、生き残れと。そういわれている気がする。
「ゲームスタート」
負けるわけにはいかないのは、お互い様か。
炎と水のオーラが絡み合い、赤と青の柱となる。
「オープン」
光の翼がマリを包み込み、弾ける。
「抜刀」
水のオーラが渦を巻き、波しぶきとなって消える。
『さあ、ゆくぞ。神の使徒たちよ』
作戦会議もくそもない。俺のはともかく、マリとレイのデッキは大幅に組み換えている。
試運転もできない状況では、不利なのは確かだが……。
「マリ、レイ、デッキを組み換えたから、簡単に説明。カードをよく読んで。見た目と文章どおりだから。分からなかったら聞いて。マリはさっきまでと同じように。レイ、きみが前衛の要だ。武器のカードを引いたら前に出てくれ。余ったら俺にも」
「わ、分かりました!」
声が上ずってしまうマリと、
「任されました」
戦う覚悟を決めたように見えるレイ。
さあ、ぶっつけ本番だが、戦闘開始だ。
『まずは小手調べだ』
彼が両手を広げれば、紫色の大きな魔法陣が五つ展開する。
魔法陣からは、それぞれ10体ずつゾンビが召喚された。
いきなり50体のゾンビ。しかも、相手は疲れた様子もない。つまりは、こういうのを何度もできるということ。
それは、一見絶望的な戦力差とも思えるが……。
「いくぞ、『火炎放射』」
※
・火炎放射 : 火火
: ☆☆
: 攻撃
: すべての敵モンスターに2ダメージ
※
放射状に広がる火炎が、大量のゾンビを一撃で焼き尽くした。
……森には一切延焼せずに。
こんな風に、火属性の攻撃魔法は、まとめて薙ぎ払うこともできる。
これくらいのザコなら、何百きても一撃だろう。
……カードがあるうちは、だが。
「『神父』さんと『天使の弓兵』さんを召喚です!」
※
・神父 : 光光/0/2
: ☆☆
: モンスター
: 人間
: (消耗) 光属性エネルギーを1生成。
: 土地『教会』が配置されている場合、+0/+1
※
※
・天使の弓兵 : 光1/1/1
: ☆
: モンスター
: 天使、兵士
: 飛行、射撃
※
「『水の剣』と『氷の槍』を装備」
※
・水の剣 : 水
: ☆
: 装備
: +1/+0
※
※
・氷の槍 : 水水
: ☆☆
: 装備
: +1/+0
: 先制攻撃
: 『戦闘』でモンスターにダメージを与える度、敵プレイヤーに1ダメージ。
※
「推して参ります」
・使用されたカード
・火炎放射 : 火火
: ☆☆
: 攻撃
: すべての敵モンスターに2ダメージ
・神父 : 光光/0/2
: ☆☆
: モンスター
: 人間
: (消耗) 光属性エネルギーを1生成。
: 土地『教会』が配置されている場合、+0/+1
・天使の弓兵 : 光1/1/1
: ☆
: モンスター
: 天使、兵士
: 飛行、射撃
・水の剣 : 水
: ☆
: 装備
: +1/+0
・氷の槍 : 水水
: ☆☆
: 装備
: +1/+0
: 先制攻撃
: 『戦闘』でモンスターにダメージを与える度、敵プレイヤーに1ダメージ。
・ゾンビの召喚 : 闇1X
: ☆☆
: 補助
: このカードは、モンスター魔法と同様に扱う。
: Xとして支払った闇属性エネルギーと同じ数の、1/1 ゾンビ・トークンを召喚する。Xとして支払えるのは闇属性エネルギーのみ。
※十三話時点
ダイスケ : MP34/36
マリ : MP32/36
レイ : MP33/36