第十二話:出会う
レイのカードデッキが起動。
水のオーラとなびく髪に見惚れそうになるが、使ったカードは……うん。
あまりにシュールな光景に、しばし固まる三人。
そんな状態も、知らない誰かの咳払いする声で我に返った。
『やあ、こんにちは。はじめまして』
穏やかな声で気さくに話しかけてきたのは、魔法使いのローブを着たゾンビとしかいえないような、怪しげな存在。
とっさに身構えて、戦闘の意思を示すようにカードデッキを突きつけるように左手を前に出せば、
『我は、この世界では邪神と呼ばれている《腐敗神ネクロビュ》の眷属の一柱である。警戒はしても構わない。むしろ、我はきみたちの敵側なので、油断はしないように』
明確な敵意を向けても、穏やかな様子は変わらない。
その姿は、余裕……というよりは、彼? の性格から来るものと思えた。
『分かりやすくいうと、我はきみたちに興味がある。なので、少し話をしないか?』
油断するなといいつつ、微動だにしない彼の様子は、こちらが過度に警戒しないように配慮しているように感じられた。
しかし、理性的で穏やかな印象の言葉とは違い、そのゾンビのような姿と敵と名乗ったことから、どうしても警戒心が前に出てしまう。
これは、時間稼ぎか何かだろうか?
(だ、そうだけど、二人とも、どうする?)
さすがに判断がつかないので、相手に聞こえていること前提で、マリとレイに相談してみる。
(外見はともかく、悪い人じゃなさそうですけど……。ごめんなさい。どう判断していいか分かりません)
申し訳なさそうにするマリに対して、
(相手の様子から、時間稼ぎとかでは無いと思います。ここは、本当に会話がしたいのかもしれませんし、何か情報をもらえるかもしれません)
何かの情報を得られるチャンスと捉えて、言外に会話を促すレイ。
俺も、情報が得られたらありがたいから、
「分かった。どんな話がしたいんだ?」
相手の話に乗ることにした。
平行して、順番にカードデッキをいじろう。
他の三人のことも気になるが、今、この時間は、目の前の存在を無視することができないと感じていた。
※※※
『…………つまり、きみたちは、神と接触してこちらに来ることを選んだ者と、気がついたらこの森の中に居た者とに分かれるわけだ』
彼(男性らしい)は、会話をすることが好きなようだった。
穏やかな口調は、こちらも穏やかな気持ちになり、少しずつ会話も弾んでいった。
ゾンビのような外見は、彼の主たる腐敗神の権能の影響だとか。
ただ、臭いもしないので、『そういう人』としてこちらが受け入れるのは早かったように思う。
腐敗神側の事情も聞けた。
この世界においては、外の世界から来た侵略者という扱いらしい。
その権能は、腐敗。
それには、時間の経過や自然の循環といったものも含まれており、主のことを語る彼が誇らしげだったのが印象的だった。
こちらのことも語った。
元の世界では、どういった立場だったか。家族や友人はどんな人だったか。趣味は何か。どんな食べ物が好きか。自分やその周辺で流行っていたことは何か。
聞き上手でもある彼は、こちらの話を決して遮らず、相づちを打つタイミング一つとっても、好感が持てた。
話が途切れたタイミングで、レイが持っている『固形栄養食 (はちみつ味)』を手渡して、それがどういったものか分からない彼が、青白い死人のような手のひらに固形栄養食を乗せて戸惑っている姿は、笑いを誘った。
そして、包装を開けてシリアルバーをかじる彼が、少ししてから、
『…………ああ、これは…………美味いな…………』
と、心の底から湧き出したような言葉を漏らしたのが印象的だった。
○三人のデッキを調整した。
○神っションコンプリート
・1日生存する。
・『購入』を使用し、カードパックを購入する。
☆カードデッキを構築する。
☆カードデッキを1回リセットする。
・邪神の眷属を討伐する。
・かみんぐすーん♪