第十話:説明と、そして……。
少女2人の、再会の抱擁。
その時、遊戯神の声で『神っション』なるものを聞く。
「とりあえず、自己紹介しないかい?」
俺の提案を2人とも受け入れて、状況とスキルについて確認を行う。
「私のことは、『レイ』と呼んでください」
マリと同じセーラー服姿の麗華はそう言って、軽く頭を下げた。
それに合わせて、背中まである艶やかな黒髪が大きく揺れた。
ツリ目がちの、やや気の強そうな子。
けれど、立ち居振る舞いから、しつけには厳しい家柄なことが予想できた。
俺も、ダイスケと気軽に呼んでくれと言えば、
「了解しました、ダイスケさま」
そんな、社員教育がしっかりしてるところの受付嬢みたいな応対をされてしまう。
……礼儀正しいのはいいけれど、堅苦しいなあ。
「麗華ちゃん、ダイスケさんは、大丈夫だと思うよ?」
マリにフォローしてもらっても、
「私もそう思う。けれどマリ、目上の人への礼儀はまた違うものよ? ……あ、ダイスケさ」
「さまはやめてくれないかな?」
「……分かりました。ダイスケさん、会ったばかりの方と急にフレンドリーに接するのは、私の方が慣れてなくて……。歩み寄ることはできます。けれど、少し時間をください」
申し訳なさそうにするレイに、あまり気にしないで、と言っておく。
少女にとって見知らぬ男性は、警戒しておいた方がいいとは思うから。
「それと、まだ色々確認しておいた方がよいことはありますが……」
困った顔で俺を見つめてくるレイ。
主導権を渡してくるのは、正直ありがたいけれど……。
さすがに、判断がつかないのだろう。
この子もまた、カードゲームとかあまりやったことがないのかもしれない。
「スキルの確認をしようか。『ステータス』と言ってみてくれるかい?」
「はい。『ステータス』」
※※※
・レイ/♀/16
・LP18/20
・MP36/36
・スキル:
・・剣術
・・体術
・・格闘
・・カードゲーム
・・遊戯神の加護 (小)
・・ゲート
・称号:
・・プレイヤー
・・氷結神の使徒
※※※
つい、吹き出してしまった。
LP減ってるじゃん!
手札になんかなかったっけ? なんもない。なら、マリだ。
「マリ、手札に『固形栄養食』とかない? レイがダメージ受けてるんだよ」
LPも時間経過で回復するものの、そんなにすぐ回復するものでもないし、可能な限り最大にしておきたい。
「ええっ!? 『固形栄養食』ありました! 麗華ちゃん、使って!」
「ありがとうマリ。……それで、その、これをどうするのですか?」
慌てるマリと、戸惑うレイ。
その、レイの手元には、個包装されたグラノーラバー(ハチミツ味とチョコ味)が1本ずつ。
「どうするって、それを食べてごらん。LPが回復すると思うから」
「全部は多いので、マリ、半分あげるわね。……あ、美味しいです」
チョコの方を開けて、マリと仲良く半分こ。
レイのLPは1回復して19になった。
半分こしたからか? 1本でLPは2回復するのか?
……そういえば、マリには『水筒』の水を飲ませたっけな。秘宝カードの『水筒』といっても、2リットルのペットボトルだったけど。
そのペットボトルは、今は2体目に召喚した『土のゴーレム』、通称ゴーレム2号が持っているが。
……うーん、なんとなくだけれど、ここら辺は適当な処理がされてそうだな……。
誰かは知らんが、この世界を構築した神、ちゃんと仕事しろよ。
……もしかして、スキル担当はダイスのやつか? だとしたら、ある意味納得だけど。
「ダイスケさん、よかったらどうぞ」
ハチミツ味の方を差し出してくるレイに、断っておく。
「レイ、正直に言うと、俺は戦い方を知らない。スキル『カードゲーム』を利用すれば戦えるが、俺自身に戦闘力はない。だから、モンスターを召喚して戦わせるのが基本になる。スキルに頼らなくても戦える手段を持つきみが、回復手段を持っているべきだと思う」
大人の男として情けない発言をしたというのに、そういうものなのですか? と首をかしげているレイ。
兵糧と思えばいいんじゃないかな? と適当なことを言ってみれば、なるほど! と納得していた。
そんなやり取りを、マリはにこにこと上機嫌で眺めていた。
木の枝をハンカチで結びつけて、血がにじんでいたレイの右手は、気がついた時には綺麗に治っていたようだった。
※使用したカード
・固形栄養食 : 1
: ☆
: 秘宝
: ストック×3
: (消耗) ストックを1つ取り除く。2LP回復。