不正ランキング操作を抑制する方法
もし仮にですが、あなたが“小説を書く実力がない”と自覚しているにもかかわらず、小説投稿サイトで、“仲間同士でポイントを入れ合う相互評価クラスタ”や、“複数アカウントでの自作品ポイントのかさ上げ”などの不正ランキング操作でプロの小説家になろうとしていて、そして、それで生計を立てようとしているのなら、
「止めておいた方が良い」
と、僕は忠告をしておきます。
ネット文化が普及してから、小説家の収入は急速に減っているそうです。それでも一部には大金を稼いでいる人達もいますが、極稀なケースに過ぎません。
ネットの動画で自分の収入を公開している小説家の人達がいたのですが、講演料などを含めても僕の年収の半分以下でした。
因みに僕の仕事はシステムエンジニアです。システム会社に所属していて、そこから客先常駐という形で他の会社で働いているのですが、自分が稼ぐかなりの割合をマージンとして所属しているシステム会社に取られてしまっているので、はっきり言ってそれほど稼いではいません。
(因みに、フリーになれば一気に収入が上がりますが、今のところやるつもりはありません。
……まぁ、色々と煩わしい作業が増えそうですからね。創作の時間が削られてしまう)
その僕の年収の半分以下です。はっきり言ってとても少ないと言わざるを得ません。しかも、それに加えて小説家ってとても不安定です。人気がなくなれば収入がゼロになる可能性だってある。
つまり、小説家のみで生きようと思ったなら、貧乏でリスクのある人生を覚悟しなくてはならないって話です。
小説を書くのが好きなだけなら、働きながらだって充分に書けます。僕なんて働きながら、発表していない分も含めたら既に1000以上は小説やエッセイを書いていますよ(ショートショート含みますが)。
不正ランキング操作なんてものに勤しんでいる暇があったら、何か就職に役立つスキルを身に付けた方がよっぽど賢い選択です。
……もっとも、既に需要のあるスキルを持っていて、安定した収入源もあり、小遣い稼ぎ程度のつもりで小説家になりたいって言うのなら話は別ですが。
ただ、その場合は、“バレたら叩かれるリスク”が生涯付き纏う事になります。仮に運良くデビューできたとしても実力がなければ百万円ほどの収入くらいにしかならないでしょう(いや、小説投稿サイトからデビューした人が平均でどれくらい稼いでいるのかは知りませんけどね)。
労力をかけて“叩かれるリスク”を背負って、百万円……
少なくないですか?
まぁ、「その程度のリスクなんかどうでもいい」って人なら別かもしれませんが、少なくとも僕はリターンの方が低いと思います。
よほど運が良くない限り、不正ランキング操作でデビューして、リターンの方が高いケースって、
「物価が安い外国に住んでいて、外国人だから、日本のサイトで悪さをやってもノーリスク」
みたいなパターンくらいなのじゃないかと僕なんかは思っちゃいますが。不正ランキング操作や盗作疑惑がある人でも、アニメ化まで行き着いた人もいますけどね。
……もしかしたら、これを読んで、「外国人に日本語の小説が書けるはずがない」って思った人もいるかもしれませんが、今の小説投稿サイトでは、上位にランクインしていて書籍化まで決まっているのに、「日本語を学んでいる外国の人が書いたのかな?」と、思わず疑ってしまうくらいに低レベルな作品が本当にあるんです。
なろう系作品のツッコミ動画を参考にいくつか例を挙げると、一人称と三人称を混在させていたり、わずか数行の間に矛盾があったり、文体が箇条書きぽかったり、くっつきの“を”を使えていなかったり、他の作品をコピーして作っていたり……
うーん、酷いですね。
(もしかしたら、既になろう系作家で外国籍の人がいるのじゃないかと疑って調べてみたらいました。しかも、不正ランキング操作疑惑有…… 飽くまで、“疑惑”ですが。あと、その作家の“日本語がおかしい”と指摘している人もいました。内容までは確認していないので、本当かどうかまでは分かりませんが。
もしかしたら、国籍を公表していないだけで、他にもいるかもしれませんね、外国籍の人。
一応、断っておきますが、“不正”が問題なのであって、外国籍が問題なのじゃありませんよ?)
実はこれを書く切っ掛けが、そういう作品を読んで、
「これは、本気で不正ランキング操作を抑制する案を出さないといけないのじゃないの?」
と、心の底から思ったからなんですがね。
「そーいう危機感を持つのは、運営の仕事だろ?」
ってツッコミを入れるのなら、「まぁ、そうなんだけどさ」と返すしかありませんが。
僕はずーっとマイペースで小説を書き続けてきました。多少は他に合わせたりもしましたが、基本的には“自分が書きたいものを書く”ってスタンスです。いえ、“スタンス”というよりは性質ですかね?
小説を読んでもらう為には、何より宣伝が重要なんだってのはよく分かっているのですが、どうしてもできないんです。手段が分からないとかじゃなくて、心理的な要因で、どうしても抵抗があるのですよ。宣伝しようと思うと嫌で嫌で仕方なくなる。
いえ、最初の頃は、チャンレジをしていたのですよ? でも、どうしても“無理している感”があって、それでいつの間にかやらなくなっていました。
あ、今でも絵をイラスト系のサイトに投稿する時なんかは、ついでに直前に動画サービスにアップした音楽を宣伝したりもしますが、ささやかなもんだし、実はそれも少し抵抗があったりします。
とにかく、そんな感じで僕はただただ小説やエッセイを書いては投稿するって事を長年し続けて来たんです。
自分が書いているのとは全く違ったタイプの作品が上位にランクインしていて、桁外れのポイントやアクセス数を叩き出しているのは知っていましたし、それらを羨ましく感じてもいましたが、「別世界だな」と、自分には関係がないと納得させていました。
ところが、そのうちにそんな上位のタイトルの作品が、アニメでやっているのを見かけるようになったのですね。
それで、
「自分が投稿しているサイトで自分より遥かに高いポイントを獲得している作品だし、何かの参考になるかもしれない。見ておくか」
と考えて、見てみたのです。
メッセージ性のほとんどない娯楽作品だろうなとは思っていたのですが、それでもクオリティは高いのだろうと思って。
――が、これが面白くないのですよ。浅いとか深いとか、メッセージ性がないとかあるとかの前にまず面白くない。
「……これ、みんな、本当に面白いと思っているの?」
と、それで疑問に思った僕は、検索をかけてみたのですが、やっぱり「面白くない」って感想をたくさん見ました。
ひょっとしたら、アニメが原作の良さをまったく活かしていないのかもしれないとも考えて、原作の感想も見てみたし、実際に少し原作を読んでもみたのですが、やっぱり低い評価にならざるを得ませんでした。
もっとも、その時は、「ま、こんな事もあるかな?」程度でした。それほどのショックは受けなかったのです。
人間って集団で生活する生き物です。だから、周囲に同調するって性質があって、「皆が評価している」って思ったら、それをたくさんの人が真似して読むようになり、低品質の作品が人気になってしまうみたいな現象が往々にしてあるのですが、これもその類だと思ったのですね。
それに僕は小説投稿サイト原作のアニメ作品を全て観ている訳じゃありません。僕が観た作品だけ、特別に質が悪かったのかもしれませんし。
それからしばらくが経ちました。
偶然に、なろう系のアニメ作品のレビューをやっている動画を見つけたので、軽く興味を覚えて見てみました。すると、「なろう系のアニメ作品は、10あったら面白いのが2つくらい」みたいな感想を述べてるじゃありませんか。
断っておきますが、少々辛口なだけで公平なレビューをしている人達です。なろう系を目の敵にしてはいません。
なので僕はこれを「妥当な感想なんじゃないのかな?」と判断しました。
「やっぱり、面白くないのじゃないの?」
と。
それで終わりだったなら、或いは僕はこんなエッセイは書かなかったかもしれません。
……ほら、動画サイトって一度観た動画と関連のある動画を“おススメ”してきたりするじゃないですか?
それで動画サイトがなろう系作品のレビューや紹介をしている動画をおススメして来るようになってしまったのですよ。そのうちの一つをラジオ感覚で別作業しながら聞いてみたのですが、これがけっこー面白くてですね。それを切っ掛けに、色々な人のそういう動画を聞いてみるようになりました(動画なのに、変な表現ですが、見てはいないので……)。
そして、いくつか聞いてみて、これの本質は「ツッコミだな」と僕は判断しました。
“消えた魔球(夏目房之介 双葉社)”ってエッセイが随分前に出ているのですが、味わいとしてはそれに似ているかもしれません。
これは「スポーツ漫画の変遷を辿って時代背景と共に考察を加えていく」みたいなエッセイで、それ自体が興味深くもあるのですが、それだけじゃなく「ツッコミ」も面白かったのですね。
昔のスポーツ漫画ってけっこー緩くて、野球のルールを知らない人が野球漫画を描いていたりもしていたらしいのですが、だからツッコミどころが満載なのです(因みに、このエッセイで、僕は“巨人の星”がパクリ作品である事を知りました)。
ただ、大きく違う点もありました。“消えた魔球”はツッコミを入れている作品に対してある種の敬意を持っていると感じられるのに対し、なろう系ツッコミ動画は、敬意どころか敵意すらも感じられるのです。
ぶっちゃけて言ってしまうと、「不正ランキング操作で出版したんだろう?」って前提で作品に対してツッコミを入れているように思えるのですね。そのツッコミの面白さの少なくとも一部には、「卑怯者に罰を与える」という要素が明らかにあります。
だからなのか、中にはコメディ作品に対してツッコミを入れているものもありました。早い話が、「ネタにマジレス」です。
ただ、動画作成者もそれを分かった上でやっているっぽいのですがね。
そう感じた僕は、そのなろう系ツッコミ動画を「一部、誇張や歪曲をしている」ものとして捉えるようにしました。適切じゃないツッコミも混ざっている可能性もあるから、それくらいの認識が正しいだろう、と。
そうして、しばらくが経って、とある“小説家になろう上位ランキング作品”へのツッコミ動画を僕は見つけてしまったのです。
前述したような事情がありましたから、初めのうちは、その時に見たその動画のツッコミも「誇張してあるのだろうな」とそう思っていたのです。
が、その動画は実際に本文もまんま一部切り取って載せてあったのですよ。かなり勇気がありますが、とにかく、少なくともその部分に関しては、誇張なしで本気で酷かったのです。
もっとも、一部分だけ切り取られているからそう感じるのかもしれません。そこで、僕はその小説を実際に読んでみたのです。結果、唖然となりました。ツッコミ動画の通りの酷い作品だったからですね。しかも、動画がアップされた後に決まったのか、“書籍化決定”って書かれているじゃありませんか。
「――こんな素人レベル以下の作品が書籍化? 出版社は正気なの?」
なんて、素で思っちゃいました。
いやだって、僕が学生の頃に書いていた小説の方がまだマシだってなレベルですよ?
どうしても高ポイントを獲得している事が信じられなかったので、読者の感想を読んでみたのですが、ほとんど批判的なものばかりでした。
「……そりゃ、そうだろう」と、僕はそれに納得をしましたよ。
一応断っておきますが、僕は小説の評価に客観性なんてないと思っています。それはどう足掻いても主観的なものに過ぎない。
でも、ですね。
いくらなんでも限度ってものがあります。子供が書いた日本語レベルで拙い、メッセージ性も何もない作品を社会的な基準で高いと評価する訳にはいかないでしょう。
僕には、その作品はそんなような作品に思えたのです。
そして、そんな作品が、自分より遥かに高いポイントを獲得していて、しかも出版までされようとしている現実を受け、僕はショックを受けました。
僕はこれまでとんでもない量の小説やエッセイを書いていて、800を超える投稿もしています。が、そのほとんどが低ポイントで閲覧数も少ないです(中には例外もありますが)。
一度、勧められて“鈴谷さん、噂話です”って作品を同人誌で出した事があったのですが、その時は注目作品としてコミティアの実行委員会の方達に取り上げてもらえて、しかも出版社の編集を名乗る人が現れたりもしました(結局、ダメだったけど)。でも、その作品の中の“人食い村の噂話”って短編を“小説家になろう”に投稿したら、たったの17ポイントしか入りませんでした。それくらいポイントを得るのは難しいのです。
でも、その信じられないくらいの低レベルの作品は、数万ポイントも獲得しているんですよ?
「どう考えても、不正をやっているでしょう、これ」
って、思ってしまうのも無理はないとどうか分かってください。
その所為で僕は虚しさを覚えました。
「こんなサイトに投稿し続けて、一体自分は何をやっているのだろう?」
と、軽い鬱状態にすらなりました。
ポイントが入っているだけなら、或いは僕はそこまでショックを受けなかったかもしれません。
“小説家になろう”の採点システムは、目立てば目立つほどポイントが入る仕組みになっていますから、“正のフィードバック”さえ起これば、とんでもないポイントになるのはそれほど不思議ではありませんから。
でも、その作品は、出版まで決まっているんです。
出版社が内容を評価して、書籍化するかどうかを決めているのなら、絶対に出版なんてしないでしょう。
仮に小説自体は売る気がなくて、コミカライズ作品に期待しているのだとしても、いくらなんでもレベルが低すぎです。
そのショックの所為で、僕は創作意欲がなくなってしまいました。
僕は、自分でも、創作意欲があるかないか分からないくらいに息を吸うように創作をしている人間です。
文章だけじゃなくて、絵も描いているし、音楽も作っているし、仕事のシステムエンジニアだって、はっきり言ってしまえば“創作”です(ユーザーから欲しい機能を聞いて、それを実現できる仕様を考えて、資料を作成して説明し、それで決まったら、今度はどんなプログラミングにするかを考える…… こう書くと明らかに創作ですね。本当に)
その僕の創作意欲がなくなったんです。大したもんですよ。
(因みに、その時期に書いていた作品は品質が悪いです。「創作意欲がなくなっても、創作はするんかーい」って感じですが)
――ただし、そのお陰で、何かふつふつと湧き上がるものを僕は感じてもいたのです。時間が経って、傷が癒え始めるとむしろ逆に元気になってきましてね。それで、
「オーケー。
ちょっと、しばらく、この問題を本格的に考えてやろーじゃないの!」
なんて気分になってきました。
僕はできる限り社会問題をテーマに作品を書きたいと思っている人間なのですが、これって既に明らかに社会問題でしょう。
日本が国際的競争力を失くしている中で、漫画やアニメはまだ確りとその存在感を世界に示しています。つまり、相対的により重要な産業になっているのですね。
しかも、これから発展途上国が、経済発展をしていく中で、更なる消費需要の拡大も見込めます。
ところが、前述したように、なろう系関連作品の評価は低いのです。その重要な産業に今のなろう系の不正ランキング操作は、悪影響を与えていると考えるべきでしょう。
それに、です。
もしかしたら、単純な娯楽という意味だけじゃなく、社会に広めるべき斬新なアイデアで描かれた貴重な作品が、不正ランキング操作の所為で埋もれてしまっているという可能性だってあるんです。
理想的なランキングは、社会により良い影響を与える作品が上位に入り、それら上位作品の影響を受けて、他のクリエイター達がそのような作品作りを目指すといったようなものでしょう。
もちろん、完全にその理想を実現するのは難しいでしょうが、それに近づける事ならばできるはずです。
では、その為には一体どうすれば良いのでしょうか?
……確か、作家同士がお互いにポイントを入れ合う相互評価クラスタが問題としてなろうユーザー達の間で大きな話題になったのは、2016年頃だったはずです。それを受けて小説家になろう運営は、規約に変更を加えて相互評価クラスタを実質的に禁止にしました。
が、これ、明らかにザルです。
真っ当に評価してポイントを入れたのか、それとも相互評価クラスタだからポイントを入れたのか、なんていちいち判断するのは困難です。
無理でしょう。
しかも、仮に相互評価クラスタだとバレたとしても、規約なんて民間企業が定めているに過ぎませんから、なんら法的な拘束力はありません。仮に罰せられるとしたなら、小説家になろう運営が、相互評価クラスタのメンバーを詐欺罪か何かで訴えて勝訴した場合くらいでしょうが、流石にユーザーに対してそこまでやるとは思えません。
裁判費用もかかりますしね。
更に言ってしまえば、例えば、相互評価クラスタじゃなくても、組織的にポイントを入れるグループの存在だってあるかもしれないし、今後発生するかもしれませんが、それらを規約で防ぐ事も困難です。
実はこれは一般的なシステムの秩序を保つ方法とも関連があります。
上層部が下層部を制御して、秩序を保つ方法を“トップダウン型”と言いますが、この発想には限界があって、数が多くなるとどうしたって無理が出てくるのですね。つまり、運営が力業で、不正を防ぐって方法には自ずから限界があるって話です(当たり前ですが)。
では、どうすれば良いのでしょう?
運営に秩序を保てないのであれば、後はユーザー達の各々の行動が自律的に秩序を創発するような方法を考え出すしかありません。因みに、それを“ボトムアップ型”と呼びます。
これは『創発 蟻・脳・都市・ソフトウェアの自己組織化ネットワーク スティーブン・ジョンソン ソフトバンク パブリッシング』って本で紹介されていた実例ですが、“スラッシュドッド”という掲示板では、ユーザーを監視役とする事で、荒らしやスパムを防ぐ事に成功したそうです。
掲示板の記事にポイントを入れられるようにして、高ポイントを獲得したユーザーにポイントを入れる権限を与える。ただし、その権限は期間と回数で消失し、次の高ポイントを獲得したユーザーに交代をする。後はポイントでフィルタリングすれば、優良な記事のみが読めるようになる、といったような仕組みです。
高いポイントを獲得したユーザーなら、真面目にポイントを付けてくれるだろうし、権限を持つ期間に制限があるから独裁的な体制にもならない、というよく考えられたシステムですね。
そしてこれはユーザー達が自発的に秩序を創り出しているという点で“ボトムアップ型”と呼べます。
もちろん、この仕組みをなろうでそのまま用いる事はできません。ただし、この発想を工夫して採点方式に取り入れ、不正ランキング操作を抑制するって事ならばできます。
では、幾つか案を出していきます。
低品質の作品が、不正ランキング操作で上位にまで至ってしまう原因は、以前にも少し述べましたが、“正のフィードバック”です。
不正でポイントを得ると、それでランキングが上がり目立ちます。すると、目立った事が原因となって更にポイントが入り、順位が上がって更に目立ちます。以降、これが繰り返される事で、ポイントが膨大に増えていき、遂には上位に入るまでに至ってしまうのです。
このように結果が原因に影響を与え、更にそれを強化する現象を“正のフィードバック”と呼ぶのですね。
つまり、「目立てば目立つほど有利になる」のです。
これを防ぐ為には、“正のフィードバック”が発生する要因を削る“負のフィードバック”が必要になるのですが、“小説家になろう”にはその為のシステムがありません。
“負のフィードバック”というのは、結果が原因に影響を与え抑制する現象を言います。
なんだか難しそうに思えますが、それほど難しい話ではありません。
小説家になろうには、マイナスポイントを入れる仕組みがありませんが、つまりはその“マイナスポイント”が、負のフィードバックになります。
不正ランキング操作で低品質の作品にポイントが入って目立ったとしましょう。ここでプラスポイントしか入れられなかったなら、「目立てば目立つほど有利になる」という事になってしまいます。が、マイナスポイントも入れられたなら、目立った事によってマイナスポイントも入り易くなるので、必ずしも「目立てば目立つほど有利になる」という事にはならなくなります。
一応断っておくと、作品の質が良かった場合は、「目立てば目立つほど有利になる」は変わりません。多くの人はプラスポイントを入れるだろうからですね。これは飽くまで、作品の質が低かった場合にのみ働く“負のフィードバック”です。
作品内容のその精神性のおぞましさから話題になり、出版にまで至ったと言われている作品がなろうにはあります(少し読みましたが、それなりにグロ耐性のある僕が、本気で吐きそうになりました)。もし仮にマイナスポイントがつけられたなら、その作品は少なくとも上位には入らなかったでしょう(その作品は不正ランキング操作はしていないと思いますが)。
そして、だから、不正ランキング操作された作品でも、品質さえ良ければ、相変わらず「目立てば目立つほど有利になる」になってしまうのですがね。ただ、これが実現すれば、少なくとも信じられないような低レベルの作品が不正ランキング操作によって上位に入るなんて事は起こり難くなるでしょう。
――ただし、この程度のことは小説家になろうの運営さんだって分かっていると思うのですよ。では、どうして“マイナスポイント”を導入して来なかったのかと言えば、絶対にサイトが荒れるからです。
嫌がらせでマイナスポイントを入れる人だっているでしょうし、逆恨みをする人だって現れるでしょう。ユーザー同士で喧嘩をし始められたら運営さんにとっては非常に厄介です。だから、導入して来なかったのだと思います。
ただ、その問題点は工夫さえすれば解決できるはずです。
まず、作品によってマイナスポイントを受け入れるかどうかを選べるようにします。
こうしておけば、「マイナスポイントを入れられるのは嫌だ」って人はそれを避ける事ができます。
ただ、それだとマイナスポイントを許可する作品が不利になってしまうので、これまでとは別にマイナスポイントを受け入れた作品のランキングを設け、マイナスポイント無のランキングとは別扱いとし、マイナスポイントを受け入れた作品でも、“マイナスポイント無ランキング”では、これまで通り、プラスポイントのみで扱われるようにします。
小説家になろうのトップ画面には、上位ランキング作品が表示される仕様になっていますが、そのランキングは時間帯によって、“マイナスポイント無ランキング”と、“マイナスポイント有ランキング”が切り替わるようにします。そして、マイナスポイント有の作品は、両方のランキングに表示されますが、マイナスポイント無の作品の方は、(当たり前ですが)“マイナスポイント無ランキング”にしか表示されません。
つまり、マイナスポイントを受け入れた作品には、リスクを負っている分だけ、“目立ち易い”というメリットを与えるのですね。
がしかし、これだけだと“嫌がらせでマイナスポイントを入れる”行為を防げません。そこでマイナスポイントにもメリットを与えてしまいましょう。
マイナスポイント有ランキング”の他にも“賛否両論ランキング”と、“マイナスポイントだけランキング”を設け、マイナスポイントを受け入れた作品にはそこにも表示されるようにするのです。
“賛否両論ランキング”は、マイナスポイントの符号を入れ替えてプラスにして加算したランキングですね。だから、マイナスポイントを入れられても順位が上がります。“マイナスポイントだけランキング”は、そのまんま、マイナスポイントだけのランキングですね。
繰り返しますが、“良い作品”にとっては「目立てば目立つほど有利になる」が成り立ちます。だから、“賛否両論ランキング”でも、“マイナスポイントだけランキング”でも、目立ちさえすれば有利になります。それで読む人が増えればプラスポイントが入り易くなり、通常のランキングの順位も上がるでしょう。
つまり、嫌がらせのつもりでマイナスポイントを入れても、良い作品にとっては嫌がらせにはならないで、むしろ協力になってしまうのですね。
因みに、僕の作品がもしも上位に入る可能性があるとするのなら、このマイナスポイントで目立って…… ってパターンしかないと思っています。
一部で嫌われてそうですしね、自分。
まとめると、
〇マイナスポイントを許可しない作品は以下のランキングに表示される。
・マイナスポイント無ランキング
〇マイナスポイントを許可する作品は以下のランキングに表示される。
・マイナスポイント無ランキング
・マイナスポイント有ランキング
・賛否両論ランキング
・マイナスポイントだけランキング
となります。
個人的には、マイナスポイントだけランキングで、どんな作品が上位に来るかに非常に興味があります。
……読んでしまうかもしれない。
一応断っておくと、仮にランクインしているのが“マイナスポイントだけランキング”のみだったとしても、アクセス数さえ稼げていれば、出版社がその作品を出版する可能性は大いにあります。
広告詐欺のゲームってあるじゃないですか? 広告されている内容と、実際のゲームの内容が全然違うっていう。「そんなゲームに金を払う奴がいるはずない」って思うかもしれませんが、実はそれなりに売れているそうです。
客数さえ集めてしまえばインチキだろうがなんだろうが、商売になるみたいなのですよ、どうやら。
人間って不思議ですね。
だから、結局、不正ランキング操作で出版に成功しちゃうかもしれないのですが、ま、マイナスポイントを導入した直後くらいしかそんなチャンスはないと思います。マイナスポイントを導入した後に投稿した品質の悪い作品は、そこまで目立つ前に消えていくでしょうからね。
ただ、これでも運営さんは嫌がるかもしれません。まだサイトが荒れる可能性は充分にありますからね。そこでもう一つ、マイルドな案を考えてみました。
作品を投稿する時に、なろう系作品、非なろう系作品の区分をラジオボタンで選ばせるという仕様にするってのはどうでしょう?
それでもちろん、なろう系作品と非なろう系作品でランキングを分けるのですね。
多分、不正ランキング操作しているのってなろう系作品に偏っていると思うのですよ。だから、それとは全く別のランキングを作る事で不正ランキング操作の所為で埋もれてしまっている作品を救済しようって発想です。
それに、こうやっておけば、なろう系以外の作品を読みたいってユーザーも助かりますしね。
分かっている人の方が多いと思いますが、メジャーな“なろう系作品”って、通常の小説とは価値観が根底から違っているものが多いです。タイプが違い過ぎるので、正直、同じ基準では評価できないと思うのです。
……と言うか、ごめんなさい。同じ基準で評価して欲しくないです。一般的な小説の基準で評価して欲しい……
まぁ、もし、非なろう系作品で出版される作品が現れたら、こっちでも不正ランキング操作はたくさん出て来るのでしょうけどね。
他には、レビュアーを介して、ポイントが入るシステムなんてものも考えてみました。
今でもレビュー機能が“小説家になろう”にはありますが、それにもう一工夫するのです。
レビュアーは、レビューと共に作品に対して評価ポイントの入力を可能にしておきます(マイナスポイントも入力可能)。そして、ユーザーはそれに同意するかどうかを選択できるようにします。
そして、“レビュアーの評価ポイント×同意者の人数”という計算式でポイントが入るレビュアーポイントとというものを新たに設け、そのレビュアーポイントのランキングも作るのですね。
このシステムの良い所は、カリスマ的…… とまではいかなくても、信頼のおけるレビュアーがそれなりにたくさん現れさえすれば、そのレビュアーの信頼によって作品の順位が決まる点にあります。
品質の悪い作品を高く評価するようなレビュアーは不正ランキング操作をしている当人かその仲間もしれませんからね。はっきり言って信頼は得られないでしょう。そして、レビューを読んだ上でその作品を読むか読まないかを判断するユーザーが現れるようになれば、その過程で品質の悪い作品は除外される可能性が大きくなります。
また、このようなシステムにしておけば、有名なレビュアーを“小説家になろう”から輩出できるかもしれません。
運営側にとっては、新たなビジネスチャンスになる…… かも。
もっとも、これだとレビュアーに評価してもらった“選ばれた作品”にしかポイントが入らないって事にもなっちゃいますし、その人達が出版社に利用されてしまうなんて事もあるかもしれませんけどね。
以上で自分の考えた案は終わりになります。
一応提案してみましたが、はっきり言って、“小説家になろう”の運営が、この案を採用してくれるとは僕は思っていません。
前述した通り、2016年頃に相互評価クラスタは問題視され、大いにも盛り上がりました。にも拘らず、規約の変更以外には、運営は何ら有効な対策は取って来ませんでしたからね(しかも、効果的とは言えない方法ですし)。
ただし、何か切っ掛けがあれば、その状況は変わるかもしれません。
そもそも上位ランキングにあまり興味のなかった僕がこの問題に興味を覚えた切っ掛けは、不正ランキング操作や盗作などの悪い噂のある作品が、コミカライズやアニメ化などによって小説投稿サイト以外でも話題になっていたからです。
つまり、不正ランキング操作問題は、徐々に小説投稿サイト以外にも知られるようになって来ているのです。
ならば、ネタに困ったテレビ番組や週刊誌などが取り上げる可能性だってあるのじゃないでしょうか?
そうなれば、世間の圧力によって、運営は採点方式に手を入れざるを得ない状況に追い込まれてしまうかもしれません。
その時にこのエッセイが、少しくらいは役に立ってくれれば良いのですがねぇ……
因みに、もしテレビ番組や週刊誌などが、不正ランキング操作問題を取り上げたなら、不正ランキング操作が疑われている人達は、今までよりも激しくバッシングを受ける事になるでしょうね。
しかも、小説投稿サイト界隈以外の人達からも。
身元だって割れやすくなるだろうし。
やっぱり、不正ランキング操作は、リスクとリターンのバランスが悪いと思うのですがねぇ……
あ、ただ、前述した通り、物価の安い外国に住んでいる人は別です。仮に不正ランキング操作で出版に成功して得られた収入が100万円だったとしても、物価が安ければ充分な収入になりますし、組織的な活動だって外国ならし易いです。
日本で「ポイントを入れてくれ。もし、出版できたら謝礼を支払う」って宣伝して不正ランキング操作をやったら直ぐにバレるでしょうが、外国ならバレにくいでしょう。
しかも、仮にバレたとしても、法律上の罪にはなり難いですし、バッシングされても外国だからあまり影響がない。
つまり、ノーリスクです。
ただでさえ、運営が訴えなければ罪に問われない上に、外国だったら、そもそも訴えが成立しない可能性すらもありますからね。
更に、バレたとしても、今のシステムのままだと防ぎようがない……
そのうち、外国の犯罪組織(?)から狙われてしまうのじゃないかぁ?
なんて僕は思っています。
と言うか、既にやられている可能性すらも疑っていますが。
どうか運営さん、もっと危機感を持って、不正ランキング操作を抑制する為の方法をもっと真剣に考えてください!