占い
――そして片づけが最後まで終わり、ミランと共に女子寮に帰って、約束通りシルビアの部屋の前までやってきた。
「私たちの方が先にでたから、シルビア様はきっとまだいないわね」
「そうですね」
それまでお話しして待っていようか、と話していると、扉が開いた。
「あら、二人ともいらっしゃい」
「え!?」
シルビアの方が後に学園をでたのに、どうして?
頭の中が疑問でいっぱいの私たちを見て、シルビアは微笑んだ。
「ふふ、二年生にもなると色んな道を知っているのよ」
「そうなんですね」
「ええ。さあ、入って頂戴」
シルビアの部屋は、様々な大きさの星形の飾りが天井から吊るされていた。カーテンも紫色なので、とても神秘的だ。
「わぁ! とってもきれいですね」
思わず歓声を上げると、シルビアは嬉しそうに微笑んだ。
「わたくしも、この部屋を気に入ってるの。だから、嬉しいわ」
そして、私とミランはソファに座るように、と言われたので、大人しく座って待っていると、シルビアが紅茶を入れてくれた。
お礼を言ってありがたく受け取ると、シルビアも向かい側のソファに座った。
「さて、どちらから占いましょうか‥‥‥の前に、二人はお互いに占い結果が聞かれても気になさらない?」
「もしかして、ご褒美というのは……」
「ええ、わたくしの占いよ」
「よろしいのですか? ほら、私たちは一位ではないのに」
ミランが私も疑問に思っていたことを、尋ねてくれた。
「もちろんよ! それで、さっきの質問の答えだけれど‥…」
「私は、ブレンダさんでしたら気にしません」
「私もです」
私たちが頷いたのを確認した後、シルビアは、ならこのまま占うわね、と言った。
占いなんて、初めてだからドキドキする。
「それで、どちらから占う?」
私とミランは、お互いに譲り合い、なかなか順番が決まらなかった。そこで、シルビアが苦笑しながら、より近い距離にいるミランから占う、と決めた。
「ミランさん、あなたは……」
シルビアは、じっとミランの瞳を見つめて、占いだした。カードや水晶は使わないのかな。そう疑問に思っていると、シルビアがそれを見透かしたように教えてくれた、
「ああ、言い忘れていたけれど、わたくしの占いは、その人の瞳を見て、占うの」
へぇ、そんな占いもあるんだ。感心しながら、ミランの占いを聞く。
「あなたは、ご実家で疎外感をずっと感じているのね」
「! ええ、そうですわ」
ミランが大きく頷く。そうなんだ。でも、思い返してみれば、ミランに家庭事情を聴いたことはあまりないかも、
「でも、それもじきに無くなると出ているわ。あなたは、この先を歩んでいくべき、パートナーがいるでしょう。その方が支えてくれるはずよ。あなたはきっと幸せになれるわ」
「わかりました。ありがとうございます」
ミランは、ほっとした顔をした。歩んでいくべき、パートナー。きっと、クライヴのことだろう。
「では次に、ブレンダさんだけど――」
私の瞳を、シルビアは見つめた。
「ブレンダさんは、中々複雑な星に生まれたのね。でも、大丈夫よ。あなたは、運命の相手ともう出会っているわ」
運命の相手、とは、誰のことかな。一瞬、アレクシス殿下の顔が頭に浮かぶけれど、その想像を追い出す。いえ、そんなはずないわ。
「これから、あなたはこの学園で様々なことを経験し、感じることも多いでしょう。でも……、あなたの未来には明るいものが待っているわ」
「ありがとうございます」
「でも……」
占いは、それでもう終わりかと思ったけれど、シルビアは表情を曇らせた。
「でも?」
「ブレンダさん、最近変なことはない?」
「変な、こと?」
以前もそんなことをどこかで聞かれたような。でも、思い返しても、特に奇妙なことが身に起こっているとは思わなかった。なので、首を横に振ると、シルビアは、それならいいの、とほっとした顔をした。
「これで占いは、おしまいよ。二人にまだ時間があれば、せっかくだから、もう少しお話ししない?」
――明日は学園がお休みなので、三人で夜が更けるまで楽しくお話しした。




