ごほうび
その後、星集めに戻った私たちは、一階では少ししかプレートを見つけられなかった。それでも、三階で頑張っていたこともあって――三位だった。
「惜しかったですね」
「そうね、でも久しぶりにブレンダさんとゆっくり話せて、とっても嬉しかったわ」
そして、ミランは拗ねた顔をした。
「だって、最近ブレンダさんはシルビア様とお話ししてばかりだったでしょう?」
「ミラン様!」
か、可愛い。私は、思わず抱きつきたい衝動が抑えられず、ぎゅっとミランに抱き着いた。でも、すぐにクライヴによって引き離されてしまった。
結果発表後、多くの生徒たちは寮に戻ったけれど、私たち生徒会役員と一位だったペアは残った。
私たちは飾りの片付けのためで、一位のペアはシルビアに占ってもらうためだ。
片づけをしていると、アレクシス殿下に話しかけられた。
「ブレンダ」
「……はい」
「先ほどは巻き込んで、すまない」
先ほど――アリーシャに突き飛ばされたことだろう。
「いいえ、怪我もなかったですし、気にしていません」
首を横に振ると、片づけを再開する。
「……気にならないのか?」
「え?」
「私とライモンド嬢が、なぜ、揉めていたのか」
全く気にならないと言えば、嘘になる。でも、私はアレクシス殿下の婚約者ではないし、恋人ですらない。
「……私は、平民ですから」
自分でも、この回答はどうかと思った。身分で、線を引く。身分制度はこの国を構成するうえで必要なものだ。でも、この学園の間は平等、という建前もある。それにアレクシス殿下が求める答えは、もっと個人的な感情を聞いているとわかっていた。
「――ブレンダ」
アレクシス殿下は一歩私に近づくと、頬に触れた。
「アレクシス殿下?」
「そんなに、泣き出しそうな顔をしないでくれ」
泣き出しそうな顔? そんな表情をしていたのかな。自分ではどんな表情をしているかわからない。
「私は、ブレンダのことが――」
「ブレンダさん」
アレクシス殿下が何かを言いかけたとき、ミランに呼ばれた。とっさにアレクシス殿下の手も離れる。
「一階の飾りの回収はほとんど終わったから、二階の片づけをしようと思うのだけれど……」
そちらのほうを手伝ってほしい、ということだろう。
「はい、二階に行きましょう」
アレクシス殿下に、失礼します、と告げて、ミランと共に二階へ上がる。
「ごめんなさい、大事なお話をなさってた?」
心配そうな顔に、いいえ、と首を振る。聞かなくてよかった。あの続きが何であれ、今の私には身に余る。
ミランと二人でお話をしながら片付けていると、シルビアが現れた。
「もう、占いは終わったんですか?」
「ええ、終わったわ。あなたたちは、三位だったのよね」
二人で頷く。ミランは、少し残念そうに笑った。
「シルビア様の占いに興味がございましたので、残念ですわ」
うんうん。どんな占いか気になるよね。
「ふふ、ありがとう。……あら、二人ともそんなにたくさん片づけてくれたのね」
飾りを入れている袋を見て、シルビアが驚いた顔をした。
「二人とも片づけが終わったら、女子寮のわたくしの部屋にいらして」
「シルビア様の部屋に?」
どうしてだろう。私とミランが顔を見合わせると、シルビアはぱちりと、片眼を閉じた。
「頑張っている二人にご褒美があるの」




