騒ぎ
翌日、教室に着くと、飾りと星集め祭の話題で持ちきりだった。特に、飾りはとても好評で、生徒会役員のみんなで作ったのでとても嬉しい。
友人たちは、ペアが誰になるのかを想像して楽しんでいるようだった。実は私のペアがミランに決まっていることは、黙っておいた。
それから星集め祭当日までずっと、学園中の浮足だった空気は続いた。
さて、今日はついに星集め祭当日だ。やはり、大きなイベントなだけあって、普段よりもより入念に身だしなみを整えている生徒が多かった。
上の空で聞いていた生徒が多い授業が終わり、放課後になった。
改めて、学園中を見回すと、ぼんやりと光が浮かび上がっている星形の飾りは幻想的だ。その景色に見惚れながら、くじを引く会場であるホールに行く。
ホールに集まったのが早い順で、学年ごとに分けられたくじを生徒が引いていく。くじの結果に色んな反応を見せていて、楽しそうだ。
……全員がくじを引き終わったみたい。
みんながペアと合流しだしているので、私もミランと合流する。
「せっかくだから、一位目指して頑張りましょう」
「はい!」
一位になったペアには景品もある。今年の景品はシルビアに占ってもらえる権利だった。シルビアの占いは当たると有名なのだ。
シルビアとは、あれからも少しずつ親交を深めていたけど、まだ占ってもらったことは一度もない。なので、とても興味があった。
――そして簡単なルール説明があった後、星集め祭は始まった。
「ミラン様、どこから探しましょうか」
「そうね……」
校舎の構造を思い出しながら二人で相談し、最上階である三階から探すことにした。無難に、一階から探すペアが多いのではないかと考えた結果だ。
ホールから移動し、校舎の三階へ行く。三階は思った通り、人の気配がなかった。
「端の教室から探しましょうか」
「はい!」
二人で一番東端の教室から、探し始める。
色んなところに隠してあるとルール説明では言っていたので、一つの教室にそんなに時間をかけないことにした。
まず無難な、教卓の中を覗いてみる。
「ミラン様、一つありました!」
「流石ね。私も一つ見つけたわ」
事前に袋を用意していたので、その袋の中に二つのプレートを入れる。金色と銀色に発光するプレートを見つめて、嬉しくなった。でも、一位になるためには、もっともっとプレートを集めないといけない。
よーし、頑張るぞ!
その後も教室を変えながら、順調に見つけ続け、三階はだいたい探し終わった。
「そろそろ二階に行きませんか?」
「そうね!」
二人で話をしながら、階段を降りていると、何やら二階では人が集まっているのが見てとれた。
……どうしたんだろう?
人が集まっているなら、一階を探すべきかな。そう、ミランと話していると、二階についた。
――大きな声が聞こえた。
「どうして。どうしてなのですか!」
……どうして。その声は、女性のものだった。令嬢らしからぬその大きな声に思わず私とミランも一階に行こうとした足を止める。人込みからひそひそと漏れ聞こえる声が聞こえた。
「……で――だから、ライモンド嬢が――」
ライモンド嬢? 貴族名鑑を頭の中で浮かべる。もしかして、二年生のアリーシャ・ライモンド伯爵令嬢のことだろうか。以前、その名をどこかで聞いたような――……。
「でも――は、今は平民で一年生の――……」
平民。この学園には、何人か平民がいるけれど、一年生の平民は私だけだ。でも、この騒ぎと私に何の関係が――。
そんなことを考えて居ると、ミランに話しかけられた。
「ねぇ、ブレンダさん。もしかして……」
ミランの声は、大きくはなかったが、私の名前が聞こえた瞬間、ばっと大勢の人が振り返る。
「!」
えっ、みんなどうしたの?
そこで、人込みをかきわけて誰かが歩いてきた。茶髪に青の瞳のあのご令嬢は、たしか、アリーシャ・ライモンド伯爵令嬢だ。
アリーシャは、私の方へ詰め寄った。
「あなたのせいよ! あなたのせいで――」
その剣幕に思わず、一歩後ろへ下がる。
「話が見えないのですが、なぜ私が……」
「アレクシス殿下のことよ――あなたさえ、あなたさえいなければ」
アレクシス殿下?
疑問に答えるように、人込みの中からアレクシス殿下が出てきた。
「違う、ブレンダは関係ない! 私は……」
その言葉に、アリーシャは、そんなはずない、と強く首を振ると、私を大きく突き飛ばした。
「え――」




