ペア決め
そんなこと……、そんなのって。
「……ルドフィルは、優しすぎるわ」
「そうかな。あの日君に貰った優しさに比べたら、なんてことないよ」
ルドフィルは、そう言うけれど。私が、あの日ルドフィルに言った言葉は、大したものじゃない。ルドフィルを知っている人なら、誰しもがかけただろう言葉だ。
私がそう言うと、ルドフィルは首を振った。
「ううん。それでも、誰も言ってくれなかった。僕に伝えてくれたのは、君だ」
まっすぐに私を見つめながら、柔らかに微笑む。その笑みを見ると、胸の奥が熱くなった。
「大好きだよ、ブレンダ」
◇◇◇
学園に着いたのでルドフィルと別れ、図書室に向かった。ジルバルトに小声で挨拶をして、ジルバルトの隣の席で勉強する。勉強をしていると、ふとジルバルトが気になり、横を向いた。ジルバルトは、集中して勉強をしていた。私も負けないように頑張ろう。
しばらく問題を解いていると、予鈴がなった。急いで勉強道具を片付ける。片付け終わったとき、丁度ジルバルトも立ち上がったので、一緒に図書室を出て、教室に向かう。
――ジルバルトだったら、何を願うんだろう。
ふと疑問に思い、まだ本鈴まで余裕があったので、ジルバルトに聞いてみる。
「ジルバルト様」
「ん?」
「ジルバルト様は、星集め祭で一位になったら何をお願いしますか?」
「お願い事?」
瞬きした後、噂のことだと気づいたようで、ああ、と頷いた。
「……そうだな。前だったら、この厄介な目を普通の目にして下さい、だっただろうけど……」
今は、特にお願い事が思いつかない、とジルバルトは続けた。
「だって、今のボクが一番望んでいることは――何かに力を借りるんじゃなく、自分で叶えるべきことだから」
「ジルバルト様は、すごいですね! きっと、叶いますよ」
素直に思った感想を言うと、ジルバルトは苦笑した。
「叶うと、いいんだけどね」
午前、午後の授業は穏やかに過ぎ、放課後になったので、張り切って飾り付けをする。大小様々な星型の飾りを完成された図面通りに、飾る。飾りにもわずかに塗料が塗られているけれど、集めるプレートとは違う材質なので、勘違いして剝がされることはなさそうだ。
一つ一つ丁寧に学園中に飾ると、なかなか素敵な校舎になった。
みんなが頑張ったおかげで、日が落ちる前には終わらせることが出来た。飾りを作ったり、プレートに塗料を塗ったりするのは大変だったけれど、こうして完成した景色を見ると、関われたことを嬉しく思った。
――そして飾りつけも無事終わり、一安心かと思ったが、解散前にクライヴから説明があった。
「くじは用意したんだが、上級生と下級生の数が合わないので申し訳ないが、一年生同士で一組ペアを作ってくれないだろうか。せっかくの上級生との交流イベントなのに、すまないな」
一年生の生徒会役員は、私、ミラン、そして――アレクシス殿下だ。
本来ペアはくじで決めるので、私たちも話し合いではなく公平にくじで決めることにした。
くじは三つ。その中で七と書かれた紙を引いた人同士が一年生でペアを組み、そうでなかった人は当日にみんなと同じように、当日のくじでペアが決まる。
くじを引く順番は、ミラン、私、アレクシス殿下の順になった。
まず、ミランが引く。そして、私の番になった。ちょっとだけ、どきどきしながら、くじの箱に手を入れる。選択肢は二つ。右か、左か。どっちにしよう。
少しだけ迷った。でも、昔、母から他国では幸運は右だと言われていたらしいことを思い出し、右側のくじを選んだ。
そして、最後にアレクシス殿下が残りのくじを引き、三人で同時に折りたたまれた紙を開く。
私の選んだくじは――。
「七です」
「あら、ブレンダさん、私も七よ」
嬉しそうに微笑んだミランにつられて、私も笑顔になる。上級生の新たな知り合いが出来なかったのは残念だ。でも、ミランとあまり話せていなかったので、一緒に参加できるのは嬉しい。
「よろしくね」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」
アレクシス殿下は、何も書かれていない紙をじっと見つめていた。……どうしたんだろう。
頭に浮かんだ疑問は、クライヴの言葉で霧散する。
「よし、決まったな。では、解散しよう」




