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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
二章

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お願い事

 その後も、放課後は生徒会室で星集め祭の準備を行った。星集め祭の一週間前から、星集め祭をより楽しんでもらうために、学園中を飾り付ける。その飾りづくりと、どこに何を飾るかの見取図の作成に時間を費やしていた。

 そんな日々が続いた、ある日のこと。

 いつも通り友人たちと昼食を摂っていると、友人の一人である、キャシーがねぇご存じ? と話し出した。


「星集め祭で優勝したら、なんでも一つお願い事が叶うっていう、噂があるんですって」

 恋人同士になる人が多いっていうのは聞いていたけれど、そんな噂があるのは知らなかった。

 他の友人たちも聞いたことがないようで、驚いていた。

「なんでも一つ……何にしようかしら」

「私は、地位名声が欲しいわ」

「あら、願いは一つよ、それだと二つになるのでは?」

 みんなその話題で持ちきりなまま穏やかに昼休みは過ぎていった。


 放課後の生徒会室で飾りを作りながら、シルビアに話しかける。

「――……という噂があるそうなんですが、シルビア様はご存じですか?」

 姉のように慕ってほしいと言われたあの日から、シルビアとは急速に親しくなっていた。

「ええ、聞いたことがあるわ」

「そうなんですね」

 有名な噂なのかな。

「ブレンダさんなら、何を願うのかしら」


「でも私たちは主催だから、参加はしませんよね?」

 だって、プレートをどこに隠したか知っているものね。そう思って、シルビアを見ると、シルビアは首を振った。

「せっかくのイベントだから、一年生は生徒会役員でも参加することになっているの」


 その代わり、一年生はプレートを隠す作業には参加しないのだと、続けた。

……そうなのね。ペアはくじだから誰と組むかは当日に決まる。私は、誰と組むのか今から楽しみだな。

「……話を戻すけれど、ブレンダさんならどんな願い事をする?」

「そうですね……」

 何にしよう。でも、たった一つ願い事が叶うなら。その願いは決まっている。


「平穏無事にこの学園生活が終わりますように、です」

「……ふふ。欲がないのね」

 そうシルビアは笑っていたけれど、そうでもない。学園は、学ぶ場所であるのと同時に共同生活の場所でもある。誰かと一緒にいる以上、衝突することもあるだろう。それが全くない生活が欲しいなんて、強欲だ。


「シルビア様だったら、何をお願いしますか?」

 もちろん、シルビアは二年生だから、参加ができないことはわかってる。でも、この美しい人が何を願うのか気になった。

「わたくしは、もう叶ったから、何もないわ」

「もう、叶った?」

 ええ、実はね、わたくし、去年一位のペアの一人だったのよ。そう、シルビアは内緒ごとをする時のように、小声で囁いた。


「え――」

 それはすごい! じゃあ、あの噂は本当なんだ。

「ちなみに、どんなお願い事が叶ったんですか?」

「それはね、秘密よ」

 そう言って、笑う彼女はこれ以上ないほど美しかった。


 星集め祭まで、あと一週間になった。

 今日の放課後にたくさん飾りを飾る。とっても楽しみだなぁ。そんなことを思いながら。ルドフィルと登校する。

「ねぇ、ルドフィル」

「どうしたの、ブレンダ」

「ルドフィルは、去年一位だったら、何をお願いしたかった?」

 ルドフィルは暫く考えた後、微笑んだ。


「僕のしたかったお願い事は、もう叶ったよ」

「ルドフィルも?」

 去年一位だったのは、シルビアだったと思うけれど。それとも、一位以外のお願い事も叶うのかな。私が不思議に思っていると、ルドフィルは意外そうな顔をした。


「あれ、彼女――シルビア嬢から聞いていない? 去年は僕と彼女がペアでね、優勝したんだ」

 でも、上級生と下級生でペアを組むのでは? シルビアとルドフィルは同学年だ。

「去年は、上級生の数が足りなくて、何組か同学年同士のペアが出来たんだ」

「そうなんだ」

 なるほど。それなら、シルビアとルドフィルが組んだのも納得だ。それで、ルドフィルがしたお願い事ってなんだろう。

「ルドフィルのお願い事は、もう叶ったのよね?」

「うん」

 ルドフィルは、穏やかな瞳で私を見つめた。

「今も叶ってる。……叶い続けている、が正しいかな」

「ええ!?」


 星集め祭の効果が絶大すぎるわ! 私が驚いていると、ルドフィルは微笑んだ。

「……君が、ブレンダがもう感情を殺すことなく、生きられますように」

 僕は、そう願ったんだ。そう言ったルドフィルは心底嬉しそうな顔をしていた。

「え――。……私の、ことを。せっかくのお願い事なのに?」

「ブレンダがブレンダらしく生きていてくれたら。これ以上嬉しいことはないよ」

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[一言] 俺の中のルドフィル株急上昇!
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