変わったこと
私が振り向いて笑みを向けると、アレクシス殿下も嬉しそうな顔をした。それから、ふと、で心配そうな瞳で私を見つめる。
「ブレンダ、最近変わったことはないだろうか?」
いいえ、と首を振ろうとしてはっとする。全く変わったことがないわけじゃない。私は――アレクシス殿下に恋をしたから。でも、そんなこと、アレクシス殿下に言えるはずない。
私のこの恋は、誰にも秘密だ。
どう、言おうか。答えに悩んで考え込んでしまう。
そんな私を覗き込み、アレクシス殿下は新緑の瞳を合わせた。
「ブレンダ?」
「!」
アレクシス殿下の瞳に見つめられて息が出来ない。
好きな人に、ただ見つめられただけで、こんなにも呼吸が難しくなるなんて知らなかった。知りたくなかった。
「い、いえ。あの、その……」
声まで震えてしまっている。これではアレクシス殿下にばれてしまうわ。
「少し考え事をしていて……」
咄嗟に思いついた嘘は、自分でも呆れるくらい稚拙だった。けれど、優しいアレクシス殿下はそれを指摘することなく微笑んだ。
「そうか。それにしてもブレンダは、可愛らしいな」
可愛らしい。たったひとつの言葉にさえ、意味を探してしまう。今、何で可愛らしいっていってくれたのかな、とか。こんな私のことを、まだアレクシス殿下は好きでいて下さるのかな、とか。アレクシス殿下とどうにかなるつもりもない、私が考えていいことじゃないのに。
「ところで。先ほど尋ねたことに戻るが、何か変わったことはないだろうか? 特に体の不調など」
「? いえ、ありません」
何でそんなこと聞くんだろう。……なんて、元婚約者を気遣ってくれているだけだわ。
「そうか。それなら良かった」
アレクシス殿下が安心したように微笑む。
「――は本当なんだな。伝承通りだ」
ぼそぼそと小さな声で呟かれた言葉の途中は聞き取れなかった。それにしても、伝承って?
「え?」
私が首をかしげると、アレクシス殿下はいや、何でもない、と首を振った。
すごく気になる。でも、アレクシス殿下は王族だから、私のような平民には伝えてはならないことだったのかもしれない。それなら、気にしても仕方ないかな。
そう思いなおすことにして。
「アレクシス殿下は私の体調を心配して、わざわざ声をかけて下さったんですか?」
「それもある」
……も?
「一番は――、そうだな」
急にアレクシス殿下は、頬をかいた。これは、緊張しているときの癖だ。どうしたんだろう。
「今度の休日に、よければ共に出かけないか」




