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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
二章

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81/150

無理

「……私の好きな人は」

 私の、好きな人。つまり、アレクシス殿下が私にとってどんな人かっていうことよね。

 数年間婚約者として過ごしたから、私が知ったつもりでいて、実は全く知らなかったアレクシス殿下。

 今の私から見る、アレクシス殿下は――。

 もちろん、恋をしているから、何割増しかイメージが増大している可能性は否めないけれど。

 以前、私のために地位を全て捨てると言ったときは驚いたし、そんな無責任な人だとは思わなかったとがっかりもした。

 でも、今のアレクシス殿下は、そんなことしなさそうに見える。


 ずっと努力を続けているアレクシス殿下は、けれど王太子殿下の陰に隠れていた。

 でも、最近のアレクシス殿下は、とても満ち足りているような表情をしていることが多いと思う。

「素敵な、方だと思います」

「……そっか」

「はい」

 ジルバルトは続けて尋ねた。

 「ブレンダは、今、幸せ?」


 そう尋ねられて、何故かふいに息が詰まりそうになった。


 幸せ。


 幸せじゃないはずない。ミランを始めとした優しい友人たちがいて、気にかけてくれる従兄がいて、面倒見のいい先輩がいて。

 そして――好きな人がいて。

 それなのに、何故だか即答できずに、テーブルの下で手を握りしめた。


「ブレンダ?」


 心配そうな顔で首を傾げたジルバルトに、はっとする。

「い、いえ。何でもありません。……幸せですよ」


 慌ててぶんぶんと首を振った。これではまるで、幸せじゃないみたい。

 ううん、でも私は幸せだもの。……そのはず。

「ブレンダ」


 ジルバルトは私の名前を呼んだ後。ゆっくりと言った。

「ブレンダ、『幸せであること』は義務じゃないんだ」

「義務じゃない……」


 うん、そうだよ。そう言って、ジルバルトは、目を伏せた。

「まぁ、こんな質問をしたボクが言うのもなんだけど。幸せであることは、義務じゃない。もちろん、ブレンダが幸せだったら嬉しいけどね。じゃあ、ボクが何でそんなことを聞いたのかって言うと」


 優しく微笑んでジルバルトは言う。

「ブレンダがさ、無理してないか心配になっただけ。図書室で話したこと覚えてる?」

「はい、それはもちろん――」

 だからこそ、ジルバルトに話したいと思ったんだもの。


「それはよかった。ボクはいつでもブレンダの味方だよ。それをどうか忘れないで」


◇◇◇

 超・特別メニューを食べた後は。午後の授業を受け、帰路につく。

 今日は生徒会の仕事はお休みだった。そんなとき、いつもなら喜んで図書室で放課後を過ごすのだけれど。今日はなぜか、そんな気分になれなかった。



 超・特別メニューはとても美味しかった。

 さすが、超・特別メニューと名がつくだけはあって、学園ではなかなか食べられない、フルコースだった。


 ちゃんと給仕の方もついてくれた。


 でも、心の中に一番残ったのは、無理をしなくていい、という言葉だった。


 私は、無理をしているのかな。

 ……わからない。


 自分のことなのになぜかはっきりとはわからずにもやもやする。


 そんな時だった。後ろから、誰かに呼び止められる。

「ブレンダ」

 慈しむような声に、体の温度が上がる。どくどくと心臓の音がうるさい。自分の体なのに、制御がきかない。


 だって、だって、この声は――。

「アレクシス、殿下」


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[一言] 洗脳って怖いね…
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