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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
二章

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80/150

好きな人

「……?」

 何だろう。その紙を裏返すと――。

「!!」

 思わず、がばりと顔を上げる。

「ジルバルト様、これは……!」

「うん。『超・特別メニュー』のチケットだよ。ボクとクライヴが「かくれんぼ」は一位だったからね」

 これが、幻のメニューを食べられるチケットなんだ。

「一人、二枚ずつもらえるんだ。……だから、それ、あげるよ」

 好きな人と食べておいで、そう言ってジルバルトはテラスを離れて――。

「待ってください!」

 慌ててジルバルトを引き止めようとしたとき、足を捻ってこけそうになった。

「!!」

 

あ、まずい。そう思って、ぎゅっと強く目をつぶったけれど、衝撃は一向にやってこない。それを疑問に思ってゆっくりと瞼を開けると、何とも言えない表情をしたジルバルトが私を支えてくれていた。

「ブレンダ、足、大丈夫?」

「はい、少し捻っただけなので……」

 この分だと、保健室に行かなくてもしばらく安静にしていたら、治るだろう。

「ジルバルト様、助けて下さってありがとうございます」

「無事ならいいよ。でも……、どうしたの? そんなに慌てて」

 ジルバルトに逃げられないように、ぎゅっとジルバルトの制服の裾を握る。


「ジルバルト様が勝ち取ったものを、いただくなんてできません」

「さっきもいったでしょ。お祝いだよ。気にしないで」

 でも、以前の食堂で特別メニューを逃しかけたジルバルトは大変残念そうな顔をしていた。だから、本当は食べたいんじゃないかな。


「……気にします」

「ブレンダってさ、意外と頑固なところあるよね」

 ジルバルトは、困った声でため息をついた。

「……ボクはブレンダが喜んでくれたら、別に」

「お気持ちは、とても嬉しいです。でも、これはジルバルト様が持つべきです」

「わかったよ」

 しぶしぶ受け取ったジルバルトは、ふと思いついたように、私に一枚、チケットを差し出した。

「はい、ブレンダ。これ、あげる」

「でも――」

「ボクが食べないのが気にかかるんでしょ。だったら、ボクと一緒に食べよう。それなら、お祝いにもなるし。……どう?」

 確かに。それなら、ジルバルトも超・特別メニューを食べることが出来る。

「はい!」

 私が大きく頷くと、ジルバルトはほっとした顔をした。

「じゃあ、今日のお昼休みにね」


◇◇◇


 午前の授業は、休憩時間に、超・特別メニューの味を想像していたら、あっという間に時間が過ぎた。


 そして、約束通り、食堂では――。

「ブレンダ」

 こっちおいで、とジルバルトが手招きをしてくれている方へ、人込みをかき分けて進んだ。その後ジルバルトと合流し、食堂の端へ。

「超・特別メニューはいつもと違う場所から注文するんだ」

 そんなことも知っているなんて、流石三年生ね!

 思わず尊敬の念を込めた目でジルバルトを見つめると、ジルバルトは照れたように頬をかいた。


「ほら、こっち」


 ジルバルトが、すっ、とチケットを差し出すと、優雅な仕草で、職員が受け取った。私もジルバルトを真似して、チケットを差し出す。


「超・特別メニューを承りました。こちらへどうぞ」


 職員についていくと、扉を抜けて、広間に出た。

食堂の中にこんなスペースがあったのね。


 驚きながら、引かれた椅子に座る。


 食事の提供には、少し時間がかかるらしいので、その間、ジルバルトとおしゃべりすることにした。

 他愛もない話をしていると、不意に、ジルバルトが尋ねた。

「ブレンダの好きな人ってさ、どんな人?」


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