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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
二章

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恋する瞳

 鏡の前で、おかしい所がないかいつもより念入りに確認する。

「……大丈夫」

 口ではもう大丈夫、と言っているのに、目はせわしなく動いている。


「……私らしくないわ」

 思わず苦笑して、こうなってしまった原因を思い浮かべる。

「っ!」

 途端にかぁ、と頬に血が上るのを感じた。

 想像するだけで、恥ずかしいわ。


 あんなに恋を知らなかった、知りたかった、私が、恋をするだなんて。


「アレクシス、殿下……」


 一音一音大切に発音する。私の好きな人の名前。初めて恋をした人の名前。

「……アレクシス殿下」

 もう一度名前を呼ぶと、心の中からじわりとしたものが、沸き上がってきた。

 その未知の感覚に、恥ずかしい様な、嬉しい様な、飛び跳ねたいような、不思議な気分になる。


「うう……、こんなに赤い顔ではアレクシス殿下に気づかれてしまうわ」

 私が、アレクシス殿下に恋をしていることは、誰にも秘密だ。


 いくら元婚約者とはいえ、私はただの平民で、アレクシス殿下は第二王子。身分があまりにも違いすぎる。


「でも、私、いつからアレクシス殿下を好きになったのかな……」


 ふと、口に出た疑問に首を傾げる。何となく、好きだなと思ったのはかくれんぼのときだ。でも、それも何となくで、何か劇的な変化があったわけじゃない。


 以前の私は、アレクシス殿下の好意を、迷惑だとさえ思っていた。

 それなのに、今では、私の方がこんなに恋をしてしまうなんて思いもよらなかった。


 でも、どれだけ私が好きだと思っても、この恋は叶うことはない。

 たとえ、幸運なことに、アレクシス殿下も私を好いて下さっていたとしても。

 私が貴族に戻らない限りは、結ばれるはずもないし、結ばれるつもりもない。


 ただ、毎日、いつもより念入りに身支度を整え、アレクシス殿下に出会ったときは、胸を高鳴らせるだけ。


 それでも、十分だった。

 こんな素敵な気持ちを味わわせてくれて、感謝している。


 それに、ほっとしてもいる。

 私は、父の様に暴走することはない。


 大丈夫、この感情と付き合っていけるもの。


 最後にもう一度だけ、鏡で姿を確認してから自室を出た。


◇◇◇


「おはよう、ブレンダ」

「ルドフィル様、おはようございます」


 私に気づくと、女子寮の門の前で立っていたルドフィルは、微笑んだ。

 私がアレクシス殿下に恋をしたことは誰にも、知られてはいけない。でも、ルドフィルには、好きな人が出来た、ということだけは伝えていた。


 すると、ルドフィルは、私にその人とどうにかなるつもりがないことを確認し、それなら、まだ一緒に登校しようと言った。


 その理由を尋ねると、ルドフィルは、苦笑して、「僕は案外しぶといんだよ」と言って続けた。

「ブレンダが誰かに恋をしたとしても。それでもブレンダが、いつか僕を見てくれるんじゃないかって。この一年間で、無理ならきっぱりと諦めるから」


 一年間で無理なら、諦める。その言葉に押し切られるようにして、今も一緒に登校している。


「ブレンダ」

「? はい」

 一緒に歩いていると、ルドフィルがこちらを見た。

「ブレンダはさ、最近以前にもまして可愛くなったよね」

 


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― 新着の感想 ―
[気になる点] アホクシスてめぇ… [一言] ルドフィル、気づいて!
[一言] うわ…マジか… ブレンダすっかり… ルドフィル諦めずに頑張って!
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